年金は同時にもらえる? 併給調整の基本をやさしく整理

「原則1人1年金」という言葉を見たことがある人は多いはずだ。年金制度では、支給事由の異なる複数の年金を自由に重ねて受け取れるわけではない。一方で、老齢基礎年金と老齢厚生年金のように一緒に受けられる組み合わせもあり、65歳以後には例外的に併給できるケースもある。

さらに、年金と雇用保険、労災保険、健康保険の傷病手当金が重なる場面では、同時受給の可否や支給停止のルールがそれぞれ異なる。この記事では、年金同士の併給と、年金と他制度の調整を分けながら、併給調整の基本を整理する。

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併給調整とは何か

併給調整とは、公的年金や関連する給付が重なったときに、支給の可否や金額を調整するルールのことだ。

日本年金機構は、公的年金では支給事由が異なる2つ以上の年金を受けられるようになったとき、原則としていずれか1つを選択すると案内している。これが「1人1年金」と呼ばれる基本ルールだ。

ただし、国民年金と厚生年金は2階建ての仕組みなので、同じ支給事由であれば基礎年金と厚生年金をあわせて受けられる場合がある。さらに、65歳以後は支給事由が異なる年金でも、特例的に受けられる組み合わせがある。

原則は「1人1年金」

支給事由が異なる年金が複数あるときは、原則としてどれか1つを選ぶことになる。

たとえば、日本年金機構は、遺族厚生年金を受けていた人が63歳で特別支給の老齢厚生年金を受けられるようになった場合、遺族給付と老齢給付をあわせて受けることはできず、いずれかを選択すると説明している。

一方で、老齢基礎年金と老齢厚生年金のように、同じ支給事由の基礎部分と上乗せ部分は、1つの年金としてあわせて受けることができる。まずこの原則を押さえておくと、どこが例外なのかが見えやすくなる。

65歳以後は例外的に一緒に受けられる場合がある

65歳以後は、支給事由が異なる年金でも、特例的に受けられる場合がある。

代表例が、老齢基礎年金と遺族厚生年金の組み合わせだ。日本年金機構は、65歳以上で老齢基礎年金を受けている人が遺族厚生年金を受けられるようになったときは、あわせて受けることができるとしている。

ただし、65歳を過ぎれば何でも自由に重ねられるわけではない。組み合わせごとに扱いが違うため、個別のルールを確認する必要がある。

老齢基礎年金と老齢厚生年金は一緒に受けられる

最も基本的な組み合わせが、老齢基礎年金と老齢厚生年金だ。この2つは原則として一緒に受け取ることができる。

老齢基礎年金は、国民年金を土台とする1階部分の給付だ。老齢厚生年金は、会社員や公務員などが加入してきた厚生年金による2階部分の給付にあたる。同じ老齢給付のなかで基礎部分と上乗せ部分の関係にあるため、一般的にはあわせて受ける形になる。

「1人1年金」と聞くと、老齢基礎年金と老齢厚生年金もどちらか一方しか受けられないように感じるかもしれないが、この組み合わせは別だと理解しておきたい。

65歳以後の遺族厚生年金と老齢年金

65歳以後に特に分かりにくいのが、遺族厚生年金と老齢年金の組み合わせだ。

まず、老齢基礎年金と遺族厚生年金は併給できる。これは日本年金機構が明示している65歳以後の代表的な特例だ。

一方、老齢厚生年金と遺族厚生年金は、両方をそのまま満額受けられるわけではない。日本年金機構は、65歳以上で両方の権利がある場合、自身の老齢厚生年金が支給され、遺族厚生年金は老齢厚生年金より年金額が高い場合にその差額を受けられるとしている。老齢厚生年金の方が高ければ、遺族厚生年金は全額支給停止になる。

実際の遺族厚生年金額には別の計算ルールがあるが、基本的な理解としては「老齢厚生年金を受けながら、遺族厚生年金がそれを上回る場合に差額が出る」と整理すると分かりやすい。

雇用保険との調整

年金と他制度の調整で代表的なのが、雇用保険との関係だ。

日本年金機構によると、特別支給の老齢厚生年金など、65歳になるまでの老齢年金と雇用保険の失業給付は同時には受けられない。ハローワークで求職の申込みをした月の翌月から、失業給付の受給期間が終わる月まで、年金は全額支給停止になる。

また、厚生年金保険の被保険者が高年齢雇用継続給付を受けるときは、在職による年金の支給停止に加えて、年金の一部が支給停止される。雇用保険との関係では、「受け取れるかどうか」だけでなく、「どの年金がいつ止まるか」を確認することが大切だ。

労災保険との調整

労災保険との調整は、同一の事由で厚生年金等と労災保険の年金給付が重なる場合に問題になる。

厚生労働省は、同一の事由により障害厚生年金と障害補償年金を受ける場合、厚生年金は全額受け取れる一方で、労災年金は調整率に応じて減額されると説明している。遺族厚生年金と遺族補償年金が重なる場合も、考え方は同じだ。

雇用保険との調整では年金側が止まる場面があるが、労災保険との調整では、基本的に公的年金側はそのまま支給され、労災側で調整がかかる。この違いは混同しやすいので、分けて覚えておきたい。

健康保険の傷病手当金との調整

健康保険の傷病手当金と年金が重なる場合も、条件によって調整が入る。

協会けんぽは、同一または関連する傷病について障害厚生年金等を受ける場合、傷病手当金が過払いになることがあると案内している。一般的には、傷病手当金は原則不支給となり、日額比較で差額のみ支給される形になる。

また、退職後に引き続き傷病手当金を受けられる人が老齢年金を受ける場合も、傷病手当金が過払いになることがある。ここでも調整されるのは年金側ではなく傷病手当金側だ。

ただし、異なる傷病や障害基礎年金単独など、同じ扱いにならないケースもある。傷病手当金との調整は条件の違いが結果に直結しやすいため、「年金と重なれば一律で不支給」とは考えない方がよい。

「どれとどれが一緒にもらえるか」を整理するときの見方

年金や関連給付が重なったときは、次の順番で見ると整理しやすい。

まず、「年金同士の組み合わせ」なのか、「年金と他制度の組み合わせ」なのかを分ける。年金同士なら、老齢・障害・遺族のどれに当たるか、基礎年金と厚生年金の関係はどうかを確認する。

次に、65歳前か65歳以後かを見る。65歳以後には特例的に受けられる組み合わせがあるため、この年齢が大きな分岐点になる。

さらに、年金と他制度の組み合わせなら、雇用保険、労災保険、傷病手当金のどれかを確認する。同じ「併給調整」といっても、止まる側は制度ごとに違う。

押さえておきたいポイントのまとめ

公的年金の併給調整を整理すると、基本は次のとおりだ。

  • 原則は「1人1年金」で、支給事由が異なる年金は選択が基本
  • 老齢基礎年金と老齢厚生年金は一緒に受けられる
  • 65歳以後は、老齢基礎年金と遺族厚生年金のように特例的に併給できる組み合わせがある
  • 65歳以後の老齢厚生年金と遺族厚生年金は、基本的な理解として差額調整になる
  • 特別支給の老齢厚生年金など65歳までの老齢年金と失業給付は同時に受けられない
  • 労災保険との調整では、同一事由で重なる場合、基本的に公的年金側はそのまま支給される
  • 傷病手当金との調整では、条件に応じて傷病手当金側が不支給または差額支給になる

制度の細かな計算式まで暗記しなくても、「どの組み合わせか」「65歳前後のどちらか」「どちらの制度側で調整がかかるか」を押さえておくと、全体像をつかみやすい。

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(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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