非上場株式や一般公社債の損失は通算できる? 上場株式との違いを整理

非上場株式や一般公社債等で損失が出たとき、その損失を上場株式等の利益や配当とどこまで相殺できるのか。確定申告で迷いやすいこの論点は、投資商品の名前ではなく、所得税上の区分で考える必要がある。

同じ「株式」でも、上場株式等と一般株式等では計算する枠が違う。同じ「債券」に見えても、特定公社債等か一般公社債等かで扱いが分かれる。損失額そのものより先に、その商品がどの税制区分に入るのかを確認することが、申告時の認識違いを避ける出発点になる。

特に、上場株式等の譲渡損失には一定要件で損益通算や翌年以後3年間の繰越控除が認められるため、「株式の損失ならすべて同じように使える」と誤解しやすい。しかし、この制度は非上場株式等や一般公社債等へそのまま広がるものではない。

table of contents

株式の損失は、上場か非上場かで計算する枠が変わる

国税庁のタックスアンサーでは、株式等の譲渡所得等は「上場株式等」と「一般株式等」に区分して扱われる。申告分離課税とは、給与所得などと合算せず、別の枠で税額を計算する方式を指すが、その申告分離課税の中でも、上場株式等と一般株式等は別々に計算される。

上場株式等には、金融商品取引所に上場されている株式のほか、一定の投資信託や特定公社債等が含まれる。一方、一般株式等は、上場株式等に該当しない株式等で、非上場株式が代表例になる。

整理すると、見るべき入口は次のようになる。

  • 上場株式等:上場株式、一定の投資信託、特定公社債等など
  • 一般株式等:非上場株式など、上場株式等に該当しない株式等
  • 特定公社債等:国債、地方債、一定の公募公社債など
  • 一般公社債等:特定公社債等に該当しない公社債等

ここで重要なのは、「株式だから同じ」「債券だから同じ」とはならない点だ。税制上どの枠に入るかによって、損益通算できる相手や繰越控除の可否が変わる。

非上場株式の損失は、上場株式の利益と原則通算できない

損益通算とは、利益から損失を差し引いて課税対象を計算する考え方だ。ただし、どの利益とどの損失でも自由に相殺できるわけではない。

国税庁資料では、上場株式等に係る譲渡損失を一般株式等に係る譲渡所得等から控除できず、一般株式等に係る譲渡損失も原則として上場株式等に係る譲渡所得等から控除できないと整理されている。

たとえば、同じ年に上場株式を売って利益が出た一方、非上場株式を売って損失が出た場合でも、その損失を上場株式の利益から当然に差し引けるわけではない。逆に、上場株式等の譲渡損失を繰り越している人が、翌年以後に非上場株式の売却益を得た場合も、その繰越損失を一般株式等の譲渡所得等から控除することはできない。

この違いは、確定申告で控除できると思っていた損失が使えず、申告結果や納税額の見込みに影響する場面につながる。非上場会社の株式は、同族会社、親族経営会社、事業承継、スタートアップ投資などを通じて個人が保有することもあるため、上場株式と同じ感覚で扱わないことが大切になる。

なお、一般株式等の譲渡損失には、特定中小会社の発行株式に関する例外制度がある。この記事では詳述しないが、「原則として通算できない」と理解したうえで、該当しそうな場合は個別に確認したい。

上場株式等の3年繰越は、使える範囲が限られる

上場株式等の譲渡損失については、一定の場合に上場株式等の配当所得等と損益通算できる。さらに、その年に控除しきれなかった損失は、一定要件のもとで翌年以後3年間、上場株式等に係る譲渡所得等や配当所得等から繰越控除できる。

繰越控除とは、その年に使い切れなかった損失を翌年以後に持ち越す制度だ。ただし、この3年繰越は上場株式等の枠の中で使う制度であり、一般株式等の譲渡所得等に持ち込むことはできない。

また、上場株式等であっても、すべての取引が自動的に損益通算・繰越控除の対象になるわけではない。国税庁資料では、金融商品取引業者等を通じた譲渡など要件が示されている。NISA口座内で生じた損失も、損益通算や繰越控除の対象にならない。

上場株式等の制度を使えるかどうかは、銘柄名だけでなく、口座の種類、取引形態、申告の方法によっても変わる。年間取引報告書や取引報告書を確認し、どの損失がどの枠で扱われるのかを分けて整理したい。

債券も特定公社債等か一般公社債等かで扱いが変わる

今回の論点は株式だけではない。公社債についても、税制上は特定公社債等と一般公社債等で扱いが分かれる。

国税庁資料では、特定公社債等は上場株式等の区分に含まれる。一方、一般公社債等は上場株式等とは別の扱いになる。つまり、債券関係の商品でも、上場株式等の損益通算や繰越控除の枠に入るものと、そうでないものがある。

国債、地方債、一定の公募公社債などは特定公社債等の例として挙げられるが、個別の商品がどの区分に当たるかは商品ごとの資料確認が欠かせない。外貨建て債券、公社債投資信託、私募債などは、見た目や名称が似ていても税務上の扱いが異なることがある。

確定申告では、取引報告書、年間取引報告書、支払通知書、商品説明書などが判断材料になる。債券だから一律に上場株式等と同じ枠で扱える、と考えるのは避けたい。

配当も、非上場株式では上場株式と同じ選択肢にならない

非上場株式を考えるときは、売却損益だけでなく配当の扱いも混同しやすい。上場株式等の配当等では、一定の場合に申告分離課税を選び、上場株式等の譲渡損失と損益通算できる仕組みがある。

一方、非上場株式等の配当等は、原則として総合課税の対象になる。総合課税とは、給与所得など他の所得と合算して税額を計算する方式だ。非上場株式等の配当等については、上場株式等の配当と同じように申告分離課税を選べるものではない。

少額配当については、申告不要を選べる場合がある。ただし、対象範囲や所得税以外への影響は別に確認したい。判定式や具体的な適用条件まで踏み込む場合は、国税庁資料や税理士等への確認が判断材料になる。

ここでも分けて考えたいのは、配当なのか譲渡損益なのか、上場株式等なのか非上場株式等なのか、という点だ。名前は同じ「株式の収入」でも、選べる課税方式は同じではない。

申告前は商品名より、税制上の区分を確認する

非上場株式等や一般公社債等の損失をめぐる誤解は、「金融商品の損失ならまとめて相殺できる」という感覚から生まれやすい。しかし、所得税では、損益通算できる相手や繰越控除の可否が区分ごとに決まっている。

申告前に確認したいのは、主に次の点だ。

  • その商品は上場株式等か、一般株式等か
  • 公社債の場合、特定公社債等か、一般公社債等か
  • 収入や損失は譲渡によるものか、配当・利子によるものか
  • 特定口座、NISA口座、一般口座のどれで取引したものか
  • 年間取引報告書、支払通知書、商品説明書にどの区分で記載されているか
  • 例外制度や個別事情に当たる可能性がないか

税制上の区分は、投資商品の有利不利を単純に決めるものではない。むしろ、損失が出たときにどの所得と相殺できるのか、翌年以後に持ち越せるのかを見誤らないための基本情報になる。

非上場株式、同族会社株式、スタートアップ投資、一般公社債等を持つ人にとっては、売却時だけでなく保有中から資料を残しておく意味がある。申告が必要になる場合は、利益や損失の金額だけでなく、その金融商品が税制上どの枠に入るのかを最初に確認することが、制度を読み違えないための実務的な一歩になる。

出典・参考

主な参照資料

Please share it if you like!

Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

table of contents