上場株式の譲渡損失は配当と損益通算できる? 申告分離課税と繰越控除を整理

上場株式等を課税口座で売却して損失が出たとき、その損失を配当や翌年以降の利益とどう扱えるのかは、確定申告前に迷いやすい論点だ。ここでいう上場株式等には、上場株式、ETF、REIT、公募株式投資信託、特定公社債など、税法上の上場株式等に該当するものが含まれる。

ただし、「株で損をしたら税金で取り戻せる」と単純には考えにくい。損益通算は、投資で出た損失を何にでも使える仕組みではなく、税法上認められた所得区分の中でだけ認められる扱いだからだ。

この話は売買判断を促すものではない。すでに発生した損益を、申告上どう整理するかという制度確認の話である。配当を受け取っている人、特定口座とNISA口座を併用している人、複数の証券会社に口座を持つ人ほど、口座区分と課税方式を分けて見ることが重要になる。

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株で損をしても、給与所得と自由に相殺できるわけではない

国税庁のタックスアンサーでは、上場株式等に係る譲渡損失について、一定の範囲で損益通算や繰越控除が認められると整理されている。まず基本になるのは、同じ上場株式等の譲渡益との通算だ。

一方で、上場株式等の譲渡損失を、給与所得や事業所得など他の各種所得から自由に差し引けるわけではない。株式等の譲渡所得は、給与や事業の所得とは別の枠で扱われるためだ。

また、上場株式等と一般株式等も同じ区分ではない。未上場株式など別の区分に当たるものは扱いが異なるため、「株式の損失」と一括りにしない方がよい。

配当と通算できるかは「申告分離課税」が分かれ目になる

上場株式等の譲渡損失は、確定申告により、申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得等と損益通算できるとされている。ここでいう配当所得等には、一定の利子所得も含まれる。

分かれ目は、配当を受け取っているかどうかだけではない。上場株式等の配当等には、総合課税を選ぶ場合と、申告分離課税を選ぶ場合がある。損益通算の対象になるのは、申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得等だ。

総合課税は、給与所得などと合算して税額を計算する方式で、配当控除が関係する場合がある。申告分離課税は、給与所得などと分けて税額を計算する方式で、国税庁 No.1331では税率20.315%とされている。ただし、申告分離課税を選ぶと配当控除は適用されない。

どちらが有利かは、所得水準、配当額、譲渡損失の金額、住民税や他制度への影響などで変わる。個別の有利不利を一律に判断できるものではなく、金額が大きい場合や制度が複数重なる場合は、税務の専門家に相談する余地がある。

申告前に分けて見たい点は、次のように整理できる。

  • 上場株式等の売却で損失が出た場合、まず同じ上場株式等の譲渡益との通算が論点になる。
  • 配当所得等がある場合、課税方式によって譲渡損失と通算できるかが変わる。
  • 申告分離課税を選んだ上場株式等の配当所得等は、一定要件のもとで通算対象になる。
  • 総合課税を選んだ配当所得は、配当控除が関係する場合があるが、譲渡損失との通算とは別の扱いになる。
  • 給与所得や事業所得から、上場株式等の譲渡損失を自由に差し引けるわけではない。

損失が残ったら、翌年以後3年間に持ち越せるかを確認する

その年の譲渡益や、申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得等と通算しても、なお控除しきれない譲渡損失が残ることがある。この場合、一定の要件のもとで、翌年以後3年間にわたり繰越控除できるとされている。

繰越控除は、損失が出た年だけで完結する制度ではない。国税庁 No.1474では、損失が生じた年分の確定申告書に加え、「所得税及び復興特別所得税の確定申告書付表」と「株式等に係る譲渡所得等の金額の計算明細書」を添付する扱いが示されている。

さらに、繰越控除を受ける年も、必要な申告を続けることが前提になる。損失が出た年に申告しない場合、翌年以降の上場株式等の譲渡益や対象となる配当所得等との関係で、繰越控除に影響することがある。

家計面で見ると、これは売買損そのものを補填する制度ではない。将来、課税対象となる上場株式等の譲渡益などが出たときに、過去の損失を申告上どう扱えるかという仕組みである。

NISAの損失は、課税口座の利益や配当と混ぜられない

NISAは、一定の投資から生じる利益が非課税になる制度だ。一方で、NISA口座内で発生した売買損失は、税務上ないものとして扱われる。

このため、NISA口座で出た損失を、特定口座や一般口座の利益、または配当所得等と損益通算することはできない。損失の繰越控除の対象にもならない。

課税口座とNISA口座を併用している場合、同じ銘柄で損失が出たとしても、どの口座で保有していたかによって税務上の扱いは変わる。申告前には、銘柄名や損益額だけでなく、特定口座、一般口座、NISA口座のどこで発生した損益なのかを分けて整理したい。

特定口座でも、複数口座や配当受取方式は別確認になる

特定口座は、証券会社が年間取引報告書を作成する口座で、申告時の損益把握に役立つ。源泉徴収ありの特定口座を利用し、配当等をその特定口座に受け入れている場合などには、同じ証券会社の口座内で一定の通算が行われることがある。

ただし、扱いは証券会社や口座設定によって変わる。複数の証券会社に口座がある場合、一般口座で取引している場合、配当の受取方式が異なる場合などは、口座内の処理だけで完結しないことがある。

確認順としては、口座区分、年間取引報告書、配当所得等の課税方式、繰越控除の有無を分けると整理しやすい。住民税、国民健康保険、扶養判定などへの影響が関係する場合もあるため、個別判断に踏み込む場面では専門家に確認するのが現実的だ。

「配当があるか」ではなく、課税方式と口座区分で分けて見る

上場株式等の譲渡損失を配当と損益通算できるかどうかは、単に配当を受け取っているかでは決まらない。申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得等なのか、総合課税を選ぶ配当所得なのか、そもそもNISA口座内の損失なのかで扱いが変わる。

制度を読むうえでの要点は、損失を「何にでも使える赤字」と見ないことだ。課税口座の上場株式等、配当所得等の課税方式、繰越控除の期間、確定申告の継続要件を分けると、申告前に確認したい論点が見えやすくなる。

税制は売買判断そのものではなく、発生した損益を申告上どう扱うかのルールとして理解したい。損失が出た年ほど、申告しない場合に何が残り、翌年以降にどの控除が使えなくなるのかを確認することが、次の申告期の見落としを減らす手がかりになる。

出典・参考

主な参照資料

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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