投資で損が出たときに知っておきたい損益通算の基本

株式や投資信託で損失が出たとき、「税金が戻るかもしれない」と考える人は少なくない。だが、投資の損失は、すべての利益と自由に相殺できるわけではない。損益通算を考える前に確認したいのは、損失の金額そのものよりも、どの口座で、どの商品区分で、どの所得に関係する損失なのかという点だ。

特に誤解しやすいのが、NISA口座と課税口座の違いである。NISAは利益が非課税になる制度として知られる一方、NISA口座内で出た損失は、課税口座の利益と通算できない。複数の証券会社や金融機関を使っている人も、口座ごとの損益が自動的に一つにまとまるとは限らない。

つまり、投資で損をしたあとに確認したいのは、「損したかどうか」だけではない。損益通算の対象になる損失なのか、繰り越せる損失なのか、そもそも税務上使えない損失なのかを分けて見ることが、家計管理の出発点になる。

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「損をしたら税金が戻る」とは限らない

損益通算とは、利益と損失を制度上認められた範囲で相殺する考え方だ。投資で損失が出た場合でも、条件を満たせば、同じ年の一定の利益と通算できる場合がある。

ただし、これはすべての投資損失を救済する制度ではない。給与所得や事業所得などと自由に合算する仕組みではなく、株式等の税制上の区分に沿って扱われる。

国税庁の説明では、株式等の譲渡所得等は大きく「上場株式等」と「一般株式等」に分けられる。この区分は、普段の感覚でいう「投資商品」とは必ずしも一致しない。同じように売買しているつもりでも、税制上は別の箱に入ることがある。

最初に確認したいのは「口座」「商品区分」「所得区分」

投資損失を整理するときは、まず次の3点を分けて確認したい。

  • 損失が出た口座は、特定口座、一般口座、NISA口座のどれか
  • 対象の商品は、上場株式等か、一般株式等か
  • 相殺しようとしている利益は、譲渡益、配当所得、分配金などのどれか

上場株式等には、上場株式のほか、ETF、J-REIT、公募投資信託、一定の公社債などが含まれる場合がある。ただし、商品名だけで一律に判断できるとは限らない。個別の商品がどの区分に入るかは、証券会社の資料や国税庁の説明などで確認するのが現実的だ。

一般株式等には、非上場株式などが含まれる場合がある。国税庁の資料では、上場株式等と一般株式等は別の区分として扱われ、両者の損益は原則として相互に控除できないと整理されている。

上場株式等の損失は、配当などと通算できる場合がある

課税口座で上場株式等の売却損が出た場合、一定の要件のもとで、他の上場株式等の譲渡益と損益通算できる場合がある。さらに、申告分離課税を選択した上場株式等の配当所得等とも通算できるとされる。

ここで大切なのは、「上場株式等に関係する一定の所得の範囲で扱う」という点だ。投資で損をしたからといって、あらゆる所得と相殺できるわけではない。

複数の金融機関を使っている場合も注意したい。ある証券会社の課税口座では利益が出て、別の証券会社の課税口座では損失が出ている場合、金融機関をまたいで自動的に通算されるとは限らない。証券会社系の解説でも、複数口座の損益を反映するには確定申告が関係する場合があると説明されている。

損失が残ったら、3年間の繰越控除を確認する

損益通算をしても上場株式等の譲渡損失が残る場合、要件を満たせば、確定申告により翌年以後3年間にわたって繰り越せる場合がある。これは、損失が出た年だけでなく、翌年以降の上場株式等の譲渡益や一定の配当所得等と対応させる余地を残す仕組みだ。

ただし、繰越控除は自動的に続くものではない。国税庁の説明では、所定の申告書や明細書などの提出、翌年以後の連続した確定申告が関係する。損失が出た年に申告していない、またはその後の申告が途切れると、要件を満たせない場合がある。

取引がない年でも、繰越控除を続けるために申告が関係することがある。損失を税務上どう扱えるかは、売買の結果だけでなく、申告の手続きと結びついている。

NISAの損失は課税口座と同じ扱いにならない

NISAは、一定の条件を満たす配当・分配金や譲渡益が非課税になる制度だ。上場株式の配当金やETF、REITの分配金などは、受取方式によって非課税扱いにならない場合があるため、細部の確認は欠かせない。

一方で、NISA口座内で売却損が出た場合、その損失は課税口座の利益や配当金等と損益通算できない。翌年以後の繰越控除にも使えない。国税庁や日本証券業協会の説明でも、NISA口座内の損失は税務上ないものとして扱われると整理されている。

これはNISAの不利な点としてだけでなく、制度の性格として理解したい。利益を非課税にする一方で、損失も課税計算には反映しない。NISAを使う人ほど、非課税メリットと損失時の制約をセットで押さえておく意味がある。

複数口座を使う人ほど、年間損益の全体像を分けて見る

特定口座を使っていると、証券会社が年間取引報告書を作成するため、損益の把握はしやすい。ただし、複数の金融機関に口座を持っている場合、それぞれの損益が自動的に一つに集計されるわけではない。

課税口座、NISA口座、一般口座を併用している人は、口座ごとの年間取引報告書や取引履歴を分けて確認したい。NISA口座の損失は使えない一方、課税口座の上場株式等の損失は、要件を満たせば損益通算や繰越控除の対象になる場合がある。

一方で、確定申告をすれば必ず有利になるとは限らない。所得金額の扱いによって、扶養控除、配偶者控除、住民税、国民健康保険料などに影響する場合がある。個別事情による差が大きいため、判断に迷う場合は国税庁、税務署、税理士などで確認するのが確実だ。

損失が出たときに確認したい順番

投資の損益通算は、短期売買を促す話ではない。投資後の税務と家計管理として、損失をどう整理するかという話である。

損失が出たときは、まず口座を確認する。NISA口座なら、課税口座の利益との損益通算や繰越控除には使えない。課税口座なら、次に上場株式等か一般株式等かを確認する。そのうえで、どの利益と通算できる可能性があるのか、損失が残る場合に繰越控除の要件を満たせるのかを見ていく。

「損したから税金が戻る」と単純に考えるより、どの箱の損失なのかを順に確認する方が、制度の見え方ははっきりする。次に年間取引報告書や確定申告の案内を見るときは、利益と損失の合計額だけでなく、口座区分、商品区分、所得区分、申告手続きの4点を分けて読むことが理解の手がかりになる。

出典・参考

主な参照資料

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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