保険金に所得税はかかる?身体の傷害・資産の損害で受け取る保険金を整理

病気やけが、火災、自動車事故などで保険金を受け取ったとき、最初に迷いやすいのが「これは所得税の申告が必要なのか」という点だ。国税庁のタックスアンサーでは、身体の傷害や資産の損害を補う性格の保険金について、所得税では非課税とされる例が示されている。

ただし、保険金という名前が付いていれば一律に非課税、という話ではない。税務上の入口は、金額の大きさよりも「何のために支払われたお金か」と「誰が契約し、誰が保険料を負担し、誰が受け取ったか」にある。

この記事では、個人が国内の一般的な保険金を受け取る場面を想定し、所得税の扱いを中心に整理する。法人契約、海外保険、外貨建て保険は対象外とする。また、所得税で非課税とされる場合でも、医療費控除、相続税、贈与税、事業所得の計算に関係することがある。

table of contents

保険金は「名前」より、何を補うお金かで分ける

保険金の税務で混同しやすいのは、入院給付金、火災保険金、死亡保険金、満期保険金を同じ「保険金」として見てしまうことだ。

判断の入口は、大きく分けると次のようになる。

  • 病気、けが、入院、手術、通院、就業不能など、身体の傷害や疾病に関係する支払いか
  • 火災、事故、盗難、水害など、建物、家財、車などの資産損害を補う支払いか
  • 死亡、満期、解約など、保険契約上の理由で受け取る支払いか
  • 生活用の資産に関するものか、事業用資産や在庫、必要経費に関するものか
  • 契約者、被保険者、受取人、保険料負担者が誰か

ここでいう契約者は保険会社と契約する人、被保険者は保険の対象になる人、受取人は保険金を受け取る人を指す。保険料負担者は、実際に保険料を払っていた人で、契約者と同じとは限らない。

この関係を整理すると、所得税で非課税とされるもの、相続税や贈与税の確認が必要なもの、事業所得の計算に入るものを分けやすくなる。

病気やけがの給付金は、所得税で非課税とされる例が多い

国税庁の「No.1760 所得補償保険の保険金を受け取ったとき」では、所得補償保険について、病気やけがで勤務や業務に従事できない期間の給与・収益を補てんする損害保険契約と説明している。その保険金は、身体の傷害に基因して支払われる保険金として、所得税では非課税と整理されている。

ここでいう所得補償保険は、病気やけがで働けない間の収入減を補う保険だ。けがだけでなく、病気による就業不能も含めて説明されている点が重要になる。

生命保険文化センターの一般向け説明でも、入院給付金、手術給付金、通院給付金、がん診断給付金などは、病気やけがに関係する給付金の例として挙げられている。ただし、給付金の名称や支払条件は契約によって異なるため、商品名だけで税務上の扱いを確定するのは避けたい。

実際に確認するなら、保険会社から届く支払通知書で、支払理由が入院、手術、通院、診断、就業不能など身体に関係するものかを確認する。所得税で非課税とされる給付金でも、後述する医療費控除の計算には関係することがある。

医療費控除では、補てんされた医療費から差し引く

入院給付金や手術給付金に所得税がかからないとしても、「税金や申告にまったく関係しない」とは限らない。代表例が医療費控除だ。

医療費控除は、一定の医療費を支払った場合に所得控除を受ける制度だが、保険金などで補てんされた金額は、原則としてその給付の対象となる医療費から差し引いて計算する。

たとえば、入院に対して入院給付金を受け取った場合、その給付が補てんする入院費用との関係を確認する。給付金そのものは所得税で非課税とされる場合でも、医療費控除で同じ医療費をそのまま全額使えるとは限らない。

この点は、保険金を受け取った年の確定申告で見落としやすい。支払った医療費、受け取った給付金、給付の対象になった治療や入院を分けて記録しておくと整理しやすい。

火災・事故の保険金は、生活用資産か事業用資産かも確認する

身体だけでなく、資産への損害を補う保険金も、所得税では非課税所得として扱われる場合がある。火災で住宅や家財に損害が出た場合、自動車事故で車両が壊れた場合、盗難や水害で生活用資産に損害が出た場合などが典型例になる。

背景にあるのは、保険金が新たな利益ではなく、失われたものを埋め合わせる性格を持つという考え方だ。火災で壊れた住宅を修理するための保険金や、事故で壊れた生活用の車を修理するための保険金は、給与や事業収入とは性質が異なる。

一方で、生活用資産と事業用資産は同じように整理できない。店舗、事業用車両、販売するための商品や在庫である棚卸資産に損害が出た場合、受け取った保険金が事業所得の計算に関係することがある。

国税庁の損害賠償金に関する説明では、必要経費を補てんする部分や、棚卸資産の損害に関するものが収入金額になる場合が示されている。保険金でも、店舗修理費を補うのか、在庫商品の損失を補うのか、生活用の家財を補うのかで確認点が変わる。

死亡・満期・解約は、契約関係で税目が変わる

病気やけがの給付金と混同したくないのが、死亡保険金、満期保険金、解約返戻金だ。これらは、身体の傷害や資産の損害を補う保険金とは別枠で確認する。

死亡保険金は、被保険者が死亡したことをきっかけに支払われる。国税庁の「No.1750 死亡保険金を受け取ったとき」では、被保険者、保険料負担者、受取人の関係によって、所得税、相続税、贈与税のいずれが関係するかが変わると説明されている。

相続税の対象になる死亡保険金については、条件を満たす場合に「500万円 × 法定相続人の数」という非課税限度額が設けられている。ただし、これは死亡保険金なら常に同じ扱いになるという意味ではなく、相続税の課税対象になる死亡保険金についての制度だ。

満期保険金や解約返戻金も、損害の穴埋めというより、保険契約に基づいて積み立てた資金や運用益を受け取る性格を持つことがある。国税庁の「No.1755 生命保険契約に係る満期保険金等を受け取ったとき」では、保険料負担者と受取人の関係によって、所得税または贈与税が関係すると整理されている。

つまり、死亡・満期・解約は「保険金だから非課税」とは判断しない。契約者、被保険者、受取人、保険料負担者を確認し、どの税目で見る話なのかを先に分けることが確認点になる。

個人事業者は、家庭向けの説明をそのまま当てはめない

会社員や家庭の保険では、病気やけが、火災、事故による保険金について、所得税で非課税とされるかが主な関心になりやすい。一方、個人事業者やフリーランスでは、事業との関係をもう一段分ける必要がある。

たとえば、病気で働けなくなったときの所得補償保険金は、国税庁資料で身体の傷害に基因する支払いとして非課税と整理されている。一方で、事業主が自己を被保険者として支払った所得補償保険の保険料については、国税庁資料で家事費として必要経費に算入できないと説明されている。

また、事業用車両の事故、店舗の火災、在庫商品の損害では、受け取ったお金が何を補っているかを確認する。車両そのものの損害を補う部分なのか、修理費など必要経費を補てんする部分なのか、売上に代わる性格を持つ棚卸資産の損害なのかで、事業所得への反映が変わる。

「事業用ならすべて課税」「家庭用ならすべて申告不要」と単純化すると誤りやすい。支払通知書、帳簿、修理費や損害の内容を並べて、所得計算に含める部分がないか確認したい。

支払通知書で確認したい6つの項目

保険金を受け取ったときは、保険商品の名前だけで判断せず、手元の書類で次の項目を確認すると整理しやすい。

  • 支払理由 病気、けが、入院、手術、事故、火災、死亡、満期、解約のどれに近いか。
  • 契約者 保険会社と契約している人は誰か。
  • 被保険者 保険の対象になっている人は誰か。
  • 受取人 保険金を受け取った人は本人か、家族か、別の人か。
  • 保険料負担者 実際に保険料を払っていた人は誰か。
  • 資産の用途 損害を受けた資産が生活用か、事業用か。事業用なら、棚卸資産や必要経費に関係するか。

この確認は、保険金を受け取った直後の家計整理にも役立つ。入院や事故の直後は書類が分散しやすいため、保険会社の支払通知書、医療費の領収書、修理費の請求書、保険契約の内容を同じ場所にまとめておくと、確定申告や相談の際に説明しやすい。

「非課税」で終わらせず、控除や相続まで一歩だけ確認する

身体の傷害や資産の損害を補う保険金は、所得税では非課税とされる例がある。これは、保険金が利益ではなく、病気、けが、火災、事故などで生じた損害を埋める性格を持つためだ。

ただし、そこだけで判断を終えると、医療費控除、相続税、贈与税、事業所得の計算を見落とすことがある。入院給付金は医療費控除で補てん対象の医療費から差し引くことがあり、死亡保険金は契約関係によって税目が変わる。店舗や在庫に関する保険金は、事業所得の計算に関係する場合がある。

保険金を受け取ったときの入口は、「損害を補うお金か」「契約上の受け取りか」「生活用か事業用か」の3点だ。そのうえで、契約者、被保険者、受取人、保険料負担者を確認する。判断に迷う場合は、支払通知書と契約内容を手元に置き、税務署や税理士に確認するのが現実的な対応になる。

出典・参考

主な参照資料

Please share it if you like!

Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

table of contents