投資の「リスク」は損だけではない:収益率とばらつきの見方

投資信託や株式、NISAを通じた資産形成に関心を持つ人にとって、「リスク」という言葉は避けて通れない。だが、この言葉を「損をする危険」とだけ受け止めると、金融商品の説明で本当に確認したい部分を見落としやすい。

投資の世界でいうリスクは、損失だけを指す言葉ではない。日本取引所グループ(JPX)や金融広報中央委員会の金融教育資料では、リスクはリターンの不確実性や振れ幅として説明されている。つまり、下にぶれる可能性だけでなく、上にぶれる可能性も含めた「結果のばらつき」として考える。

この記事は個別商品の推奨ではない。平均利回りや過去実績、期待収益率といった数字を見たときに、それが何を示し、何を示していないのかを整理するための基礎解説だ。

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収益率は成果、期待収益率は平均的な見込みを表す

投資収益率は、投じた金額に対してどれくらいの成果が出たかを見る割合だ。利益が出た場合だけでなく、損失が出た場合も投資の結果として扱う。一般には、投資収益を投資額で割り、割合として確認する。

一方、期待収益率は将来の結果を約束する数字ではない。複数のシナリオを置き、それぞれの起きやすさを反映してならした平均的な見込みだ。

教材上の仮定例として、次のようなケースを考える。

  • 好況の場合:収益率9%、確率20%
  • 普通の場合:収益率3%、確率50%
  • 不況の場合:収益率マイナス5%、確率30%

この場合、期待収益率は「9%×0.20+3%×0.50−5%×0.30」で1.8%になる。

ただし、この1.8%は「毎回1.8%になる」という意味ではない。実際には9%になる場合も、3%になる場合も、マイナス5%になる場合もある。平均的な見込みと、実際の結果のばらつきは別物だ。

同じ平均でも、ぶれ方が違えば家計への意味は変わる

期待収益率が同じでも、毎年の結果が比較的安定している投資と、大きく上下する投資では、家計への意味が変わる。ここで手がかりになるのが、分散や標準偏差という考え方だ。

分散は、収益率が平均からどれくらい散らばっているかを見る指標であり、標準偏差はそのばらつきを収益率と同じ感覚で捉えやすくしたものだ。細かな数式よりも、まずは「平均からどれくらい外れやすいかを見る数字」と考えると分かりやすい。

標準偏差が大きいということは、結果の振れ幅が大きいという意味になる。ただし、それは悪い方向だけを指すわけではない。上振れも下振れも含むため、「標準偏差が大きい=悪い商品」と単純には言えない。

ただ、使う時期が近い資金を大きな振れ幅にさらすと、必要な時点で値下がりしていることがある。生活費、教育資金、住宅資金、老後資金では、使う時期も性格も違う。投資のリスクは商品だけで決まるのではなく、そのお金をいつ何に使うかとも結びついている。

「高リターン」の説明では、下振れも確認したい

金融商品の説明では、過去の平均リターンや期待できる収益性が前面に出ることがある。だが、一般に高いリターンを期待する投資ほど、大きな価格変動を伴う傾向があると説明される。

米国の投資家教育機関であるFINRAは、投資には程度の差はあっても不確実性があり、分散投資や資産配分はリスク管理に役立つ一方で、リスクをなくすものではないと説明している。これは米国向けの投資家教育資料だが、「分散すれば損をしない」という誤解を避けるうえで参考になる。

金融広報中央委員会の資料も、リスクとリターンの関係を踏まえた冷静な見方を促している。「低リスクで高リターン」「絶対に有利」といった説明に触れたときは、どのような条件で、どの程度ぶれる可能性があるのかを確認したい。

投資のリスクには、価格変動だけでなく、信用リスク、為替変動リスク、カントリーリスク、流動性リスクなどもある。外貨建て資産なら為替の影響を受ける。債券でも発行体の信用力が問題になる。換金しにくい商品では、必要な時に売却しづらい場合もある。

リスクを「損をするかどうか」だけで捉えると、こうした違いが見えにくくなる。どの種類の不確実性を引き受けているのかを分けて考えることが、商品説明を読む際の一つの基本になる。

平均とぶれを分けると、判断材料を整理しやすい

投資で使われる数字には、それぞれ役割がある。

  • 投資収益率:投じた金額に対して、どれくらい成果が出たか
  • 期待収益率:複数シナリオを確率でならした平均的な見込み
  • 分散:結果が平均からどれくらい散らばるか
  • 標準偏差:ばらつきを収益率と同じ感覚で見やすくしたもの
  • リスク:結果の不確実性やリターンの振れ幅

この整理ができると、「平均リターンが高いから安心」とも、「リスクがあるから避ける」とも単純には考えにくくなる。確認したいのは、その商品が良いか悪いかだけではない。資金の使い道、運用期間、値下がりした時の影響に対して、その振れ幅を受け止められるかという点だ。

過去の成績は参考材料になるが、将来の成果を保証するものではない。標準偏差や過去の大きな下落局面、為替や信用リスク、換金のしやすさなどを合わせて見ることで、平均値だけでは分からない姿が見えやすくなる。

確認したいのは「いくら増えるか」だけではない

投資のリスクは、避けるか取るかだけでなく、内容を理解して考える対象でもある。収益性を求めるなら、一定の不確実性を引き受けることになる。そのため、平均的な見込みと振れ幅を分けて読む習慣が手がかりになる。

生活費に近いお金と、長期で運用できる余裕資金を同じ目線で扱えるか。高いリターンの説明の裏側に、どのような下振れや換金上の制約があるのか。分散投資で抑えられるリスクと、それでも残るリスクは何か。

「どれくらい増える可能性があるか」だけでなく、「思った方向と違った時にどれくらい困るか」。この問いを持つことが、投資のリスクを現実の家計に引き寄せて考える手がかりになる。

出典・参考

主な参照資料

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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