個人事業主の損害保険料は経費にできる? 事業用と私用の分け方を整理

個人事業主の損害保険料で迷いやすいのは、「火災保険だから」「自動車保険だから」と保険名だけで判断できない点だ。同じ保険料でも、守っている対象が店舗なのか、自宅なのか、事業用車両なのか、本人の生活保障なのかで税務上の扱いは変わる。

国税庁の必要経費の考え方では、事業の収入を得るために直接要した費用や、業務上の費用が必要経費の対象になる。一方で、家事上の費用は必要経費にならない。事業用と私用が混ざる支出は、業務に直接必要な部分を記録などに基づいて明確に区分できる場合、その区分できる金額に限って必要経費として整理できる。

つまり、個人事業主の損害保険料は「全額経費」か「全額不可」かで単純に分ける話ではない。事業に直接関係する部分だけが必要経費になり得る、という出発点で確認したい。

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店舗や事業用車両の保険料は、何を守る契約かで整理する

店舗、事務所、作業場、倉庫、事業用車両など、事業用資産を対象とする損害保険料は、事業用部分について必要経費として整理できる場合がある。

国税庁の収支内訳書の説明では、損害保険料の例として火災保険料や自動車の損害保険料が示されている。ここで大切なのは、勘定科目名だけではなく、契約対象と利用実態を確認することだ。

火災保険は、建物と家財を分けて契約する仕組みがあり、火災だけでなく落雷、破裂・爆発、風災などが補償対象に含まれる場合もある。ただし、税務上の判断では補償メニューそのものよりも、その保険が事業用資産を守るものかどうかが軸になる。

たとえば店舗で使う建物、設備、商品、什器などに関係する保険料でも、契約対象や保険期間、事業利用の実態によって確認点は変わる。契約書や保険証券で「何にかけている保険か」を先に見ることが、経費処理の第一歩になる。

自宅兼事務所や兼用車は、家事按分の説明ができるかが分かれ目になる

個人事業主やフリーランスで特に多いのが、自宅兼事務所、店舗兼住宅、兼用車のように、事業と生活が同じ支出に混ざるケースだ。

店舗兼住宅の火災保険料では、住宅部分に対応する金額は必要経費にならない。事業用部分を区分する場合は、使用面積や保険金額など、説明できる基準で按分する考え方になる。

自宅兼事務所でも同じだ。住宅全体の火災保険料をそのまま全額経費にするのではなく、仕事部屋や事業専用スペースの有無、床面積、利用実態などから、事業用部分を合理的に区分できるかを確認する。

兼用車の自動車保険料も、事業で使う部分と私用部分を分けて考える。走行距離、使用日数、使用時間などは実務上の按分基準の候補になる。重要なのは、感覚ではなく、記録に基づいて説明できる形にしておくことだ。

| 対象 | 整理の方向 | | — | — | | 事業用店舗の火災保険料 | 事業用資産に対応する部分は必要経費になり得る | | 自宅兼事務所の火災保険料 | 事業用部分を合理的に按分する | | 店舗兼住宅の火災保険料 | 店舗部分と住宅部分を分けて確認する | | 兼用車の自動車保険料 | 事業使用割合に応じて按分する | | 住宅部分の火災保険料 | 原則として必要経費にはならない |

家事按分は、節税テクニックというより、事業と生活の境界を帳簿上で説明する作業だ。面積、距離、日数、時間など、第三者にも伝わる基準を残しておくことが、確定申告前の確認材料になる。

所得補償保険と地震保険料控除は、必要経費とは別に分ける

保険料のなかでも、所得補償保険は直感と税務上の扱いがずれやすい。

所得補償保険は、病気やけがで働けない期間の収入を補う保険だ。個人事業主にとっては事業継続に関係するように見えるが、国税庁資料では、事業主が自己を被保険者とする所得補償保険料は必要経費に算入できないと整理されている。

本人を対象とする傷害保険料についても、本人の生活保障に近い性質を持つものは、必要経費として扱えるか個別確認が必要になる。所得補償保険料と同じ強さで一律に断定するより、契約内容と税務上の位置づけを分けて確認したい。

地震保険料も、必要経費とは別の制度として整理する必要がある。地震保険は火災保険に付帯する形で契約し、対象は原則として居住用建物や家財だ。財務省の説明では、工場や事務所専用建物などは対象外とされている。

居住用部分の地震保険料は、必要経費ではなく地震保険料控除の確認対象になる。国税庁資料では、所得税の地震保険料控除について、支払保険料が5万円以下なら全額、5万円を超える場合は一律5万円が控除額とされている。必要経費は事業所得を計算するための費用、所得控除は税額計算の前段階で所得から差し引く制度であり、同じ「保険料」でも入口が違う。

保険金や損害賠償金を受け取ったときは、支払時とは別に確認する

損害保険料は、支払ったときの処理だけで終わらない。事業用資産に損害が発生し、損害賠償金や保険金を受け取った場合には、その受取額の性質を別途確認する論点が出てくる。

国税庁資料では、事業所得の必要経費を補てんするための損害賠償金は、事業所得の総収入金額に算入されると説明されている。たとえば、事業用設備の修理費を必要経費にしており、その費用を補てんする性質の損害賠償金を受け取った場合には、収入側の処理も確認材料になる。

ただし、保険金や損害賠償金は種類や対象、損害の内容によって扱いが変わる。保険金全般が同じ扱いになるわけではない。この記事で押さえたいのは、保険料の支払時と、損害発生後の受取時は別の論点として分けることだ。

確定申告前に確認したいのは、保険名ではなく契約対象と利用実態

個人事業主の損害保険料を整理するとき、最初に確認したいのは保険名ではない。店舗を守る保険なのか、住宅を守る保険なのか。事業用車両を守る保険なのか、私用車を守る保険なのか。本人の生活保障なのか、事業用資産の損害に備えるものなのか。

自宅兼事務所や兼用車のように事業と生活が混ざる支出では、事業用部分を説明できる基準で分ける。一方で、事業に直接関係する部分を確認する視点も残したい。

確定申告前には、契約内容、保険証券、保険の対象、利用実態、帳簿記録を並べて確認すると、必要経費、私用部分、所得控除、受取時の確認事項を分けやすくなる。損害保険料は、支払った金額だけではなく「何を守る保険か」をたどることで、税務上の整理が見えやすくなる。

出典・参考

主な参照資料

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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