バイオディーゼル燃料、長距離物流で実証へ 価格差と運用コストを読み解く

物流トラックで、植物油や廃食油などを使う低炭素燃料を試す動きが出ている。2026年7月8日の報道では、いすゞ自動車や自動運転トラック開発のT2などが、神奈川県と兵庫県の間の長距離輸送で、こうした燃料を使った実証を2026年夏にも始めるとされる。

このニュースの読みどころは、「環境に良い燃料を使う」という一点には収まらない。日本の物流は、人手不足、燃料費の変動、荷主企業の脱炭素対応を同時に抱えている。長距離トラックでは、積載量、航続距離、充電時間、充電インフラが運行計画に直結するため、乗用車のように一気にEVへ置き換えにくい領域が残る。

そこで浮かび上がるのが、既存のディーゼル車や給油の仕組みを生かしながら、CO2排出を減らす燃料転換だ。実証段階の話であり、普及が決まったわけではない。むしろ確認したいのは、低炭素燃料が日々の物流コストと運用に組み込めるかどうかにある。

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長距離トラックで「軽油を置き換える燃料」が試される意味

バイオディーゼル燃料は、植物油や廃食油などを使うディーゼル向け燃料の総称として使われることが多い。ただし、従来型のバイオディーゼル燃料と、軽油に近い性状を持つリニューアブルディーゼルは同じものではない。今回の実証で使う具体的な燃料名や混合条件は、確認できる公式資料が限られるため、ここでは再生可能資源由来の軽油代替燃料という位置づけで整理する。

長距離輸送では、車両を止める時間そのものがコストになる。充電や給油にかかる時間、拠点の場所、積載効率の変化は、運送会社の配車や利益率に影響する。そのため、既存車両を大きく変えずに使える燃料であれば、電動化だけでは対応しにくい区間の選択肢になり得る。

一方で、走れることと、事業として使い続けられることは別の話だ。燃料の価格、供給量、給油拠点、車両保証、整備体制がそろわなければ、実証から日常運用へは進みにくい。

脱炭素効果だけでなく、燃費と耐久性が問われる

報道では、今回の実証で軽油と比べた燃費や、車両の耐久性への影響が検証対象になるとされる。これは物流会社にとって重要な確認点だ。長距離トラックは走行距離が長く、わずかな燃費差でも年間の燃料費に響く。

車両への影響も見逃せない。燃料の性質が軽油とどこまで近いのか、エンジンや燃料系統に負荷が出ないのか、トラブル時にメーカー保証や整備対応がどう扱われるのか。こうした条件が曖昧なままでは、運送会社は大規模な導入を判断しにくい。

出光興産は、自社ページで「出光リニューアブルディーゼル」を、廃食油や植物油などの再生可能資源からつくられる軽油代替燃料として説明している。同社は既存車両や設備を活用できる点も利点として示しているが、これは同社製品の説明であり、すべての車両やすべての運用条件に無条件で当てはまる話ではない。

「バイオ燃料ならCO2ゼロ」と単純には言えない

低炭素燃料の環境効果を見るときは、燃焼時の排出と、原料調達から製造、輸送、使用までを含めた排出を分ける必要がある。後者はライフサイクルアセスメントと呼ばれ、燃料がどこから来て、どのように運ばれ、どの条件で使われるかまで含めて環境負荷を見る考え方だ。

出光興産は自社説明で、出光リニューアブルディーゼルについて、ライフサイクルアセスメント上のCO2削減率を80%以上、軽油の燃焼に伴うCO2削減率を100%としている。ただし、算定範囲や前提条件、第三者検証の有無によって受け止め方は変わる。記事側で独自に削減効果を確認したものではなく、同社の説明として読むのが適切だ。

経済面でも、原料の集め方が重要になる。廃食油などを安定して回収し、燃料に加工し、トラックが必要とする場所へ届けるには供給網がいる。原料回収、精製、配送、給油拠点のどこかが詰まれば、燃料価格は下がりにくく、使える車両や地域も限られる。

普及の壁は、燃料価格の差を誰が負担するか

元記事が示す大きな課題は、軽油より価格が高いことだ。利用が広がれば価格が下がると単純には言えない。量産効果、原料の調達力、補助制度、燃料税制、荷主との契約条件が重なって、最終的な負担が決まる。

価格差が残る場合、物流会社が負担すれば利益率を圧迫する。荷主が負担するなら、配送費や調達コストに反映される。食品や日用品の配送では、その一部が小売価格に及ぶ経路も考えられる。

荷主企業にとっては、配送に伴うCO2排出を説明する材料にもなる。自社でトラックを持っていなくても、原材料や商品の輸送で出る排出量は、サプライチェーン全体の環境対応として問われる場面が増えている。低炭素燃料を使った配送は、株価材料としてではなく、取引先や消費者に対する脱炭素対応の説明材料になる可能性がある。

長距離輸送ではEV、水素、低炭素燃料の使い分けが焦点に

MONOistやカーゴニュースは、今回の動きをEV一辺倒ではないトラック脱炭素、あるいは物流分野での次世代燃料普及という文脈で報じている。短距離配送ではEVが使いやすい場面がある。拠点に戻るルート配送なら、夜間充電や固定ルートとの相性も比較的よい。

長距離輸送では条件が変わる。充電時間が長くなれば運行計画に影響し、バッテリー重量は積載効率に関わる。大型トラックでは、EV、水素、低炭素燃料などを用途ごとに使い分ける考え方が現実的な論点になる。

国際エネルギー機関(IEA)も、輸送部門の再生可能エネルギー利用の一部としてバイオ燃料を扱っている。ただし、技術があることと、事業者が採算を合わせて日常運用できることは分けて考えたい。物流現場では、燃料そのものよりも、給油できる場所、整備できる体制、費用を誰が負担するかが導入判断に近い。

日本の物流網を考えるうえでも、この点は大きい。自動運転トラック、低炭素燃料を供給する石油元売り、配送網を持つ小売企業、車両をつくるトラックメーカーが、それぞれ別の課題を抱えながら同じ輸送ルート上でつながる。燃料の話に見えて、実際には給油網、車両、荷主の費用負担を含む物流運用の設計に関わる。

本格導入を見るうえで必要なのは、価格・給油・制度の3点

今後の確認点は、実証車両が走るかどうかだけではない。燃費、耐久性、CO2削減効果に加えて、燃料をどこで、どれだけ、いくらで供給できるのかが問われる。

給油拠点の整備は、とくに長距離輸送で重要になる。トラックは運行ルート、休憩地点、配送拠点に合わせて燃料を入れる。限られた場所でしか給油できなければ、使える車両や路線も限られる。

制度面では、燃料品質、税制、規格、メーカー保証、補助制度の扱いが普及速度を左右する。軽油に近い燃料として説明されても、運送会社が導入するには、車両トラブル時の責任範囲や整備対応が明確でなければならない。

今回の実証は、低炭素燃料が長距離物流の選択肢になれるかを見極める材料になりそうだ。次に確認したいのは、CO2削減効果の大きさだけではない。軽油との差額、供給網、車両への影響、制度上の扱いまで含めて、日々の物流コストに組み込める燃料になるかどうかだ。

出典・参考

主な参照資料

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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