退職所得とは?一時金の退職金にかかる所得税と控除、2分の1課税を整理

退職金を一時金として受け取るとき、まず押さえたいのは、所得税では毎月の給与や賞与と同じ枠で計算されるとは限らない点だ。勤務先から受け取るお金であっても、退職によって一時に支払われる退職金などは、原則として「退職所得」として扱われる。

この記事では、退職金を一時金で受け取る場合の所得税上の考え方を中心に整理する。住民税や社会保険料、退職金の運用、年金形式で受け取る場合の詳細までは網羅しない。

退職金は老後資金や退職後の生活設計に直結する大きなお金だが、額面だけで手取りは判断しにくい。退職所得控除、原則2分の1課税、勤続年数、「退職所得の受給に関する申告書」の提出有無によって、課税される金額や源泉徴収の扱いが変わるためだ。

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退職金は給与とは別枠で考える所得

所得税上の退職所得とは、退職によって勤務先から受ける退職手当などの所得を指す。勤務先から支払われるため給与の延長のように見えやすいが、毎月の給与や賞与とは別の所得区分で計算するのが基本になる。

退職金には、長年の勤務に対する一時金や、退職後の生活資金という性格がある。退職した年にまとまった金額を受け取るため、給与と同じように全額をそのまま課税所得として扱うと、税負担が一時的に大きく見えやすい。

そこで退職所得では、まず勤続年数に応じた退職所得控除を差し引き、残った金額に原則として2分の1を掛けて所得金額を計算する。退職金の額面だけでなく、勤続年数と手続きの有無が手取りの見え方に関わる。

退職所得の基本式は「控除してから半分」

退職所得の基本的な計算は、次の流れで考えると分かりやすい。

“`text 退職所得の金額 = (退職金などの収入金額 – 退職所得控除額) × 1/2 “`

たとえば退職金が1,500万円でも、1,500万円すべてがそのまま課税所得になるわけではない。先に退職所得控除を差し引き、その残額を原則として半分にして退職所得の金額を出す。

さらに退職所得は、原則として給与所得や事業所得などとは分けて所得税額を計算する。これを分離課税という。退職金が一時的に大きな金額になりやすいことを踏まえ、通常の給与とは異なる計算ルートが設けられている。

なお、課税退職所得金額を計算する際には1,000円未満を切り捨てる扱いがある。実際の税額は、退職所得の金額に応じた税率や控除額、復興特別所得税も関係するため、ここではまず「退職金全額に税率を掛けるわけではない」という構造を押さえたい。

勤続20年を境に退職所得控除の増え方が変わる

退職所得控除は、退職金から差し引ける控除額だ。控除額は勤続年数によって変わり、20年以下と20年超で計算方法が異なる。

勤続年数が20年以下の場合は、原則として「40万円×勤続年数」で計算する。ただし、その計算額が80万円未満になる場合は、退職所得控除額は80万円となる。

勤続年数が20年を超える場合は、20年分として800万円を置き、20年を超える部分について「70万円×(勤続年数-20年)」を加える。

具体的には、勤続10年なら退職所得控除額は40万円×10年で400万円となる。勤続30年なら、20年分の800万円に、20年を超える10年分として70万円×10年を加え、1,500万円となる。

勤続年数に1年未満の端数がある場合は、切り捨てではなく1年に切り上げる。たとえば勤続10年2カ月なら、税計算上の勤続年数は11年として扱う。この端数処理は控除額に直接関わるため、退職金の概算をするときに見落としやすい。

申告書を出したかどうかで源泉徴収と確定申告が変わる

退職金を受け取るときに重要になるのが、「退職所得の受給に関する申告書」だ。退職する人がこの申告書を提出しているかどうかで、退職手当等に対する源泉徴収税額の計算方法が変わる。

国税庁の説明では、退職手当等の源泉徴収税額は、退職する人からこの申告書の提出を受けている場合と、受けていない場合で異なる。一般向けにいえば、支払者側で退職所得控除などを反映した源泉徴収をしてもらうための重要書類と考えると分かりやすい。

申告書を提出している場合、退職金等の支払者が所得税額と復興特別所得税額を計算し、退職手当等の支払い時に源泉徴収する。この場合、退職所得については原則として確定申告は不要とされる。

ただし、「原則不要」は「どんな場合でも申告しなくてよい」という意味ではない。医療費控除や寄附金控除の適用を受けるなど、別の理由で確定申告書を提出する場合には、退職所得の金額を確定申告書に記載する扱いが示されている。

一方、申告書を提出していない場合は、退職金等の支払金額に20.42%を掛けた所得税と復興特別所得税が源泉徴収される。その後、受給者本人が確定申告をして精算する流れになる。

ここで誤解しやすいのは、「退職金は必ず20.42%引かれる」と考えてしまうことだ。20.42%の源泉徴収は、申告書を提出していない場合の扱いであり、申告書を提出している場合は退職所得の計算に沿って源泉徴収される。

一時金か年金かで所得区分が変わることもある

この記事の中心は、退職金を一時金として受け取る場合の所得税上の扱いだ。一時金として受け取る退職金は、原則として退職所得として扱われる。

一方、退職後のお金でも、年金形式で受け取るものは公的年金等や雑所得として扱われることがある。同じ退職後の給付でも、受け取り方によって税金の計算ルートが変わる点は分けて考えたい。

確定拠出年金や企業年金、中小企業退職金共済の一時金なども、退職所得として扱われる場合がある。ただし、複数の退職金を受け取る場合、過去に退職手当等を受け取っている場合、確定拠出年金の一時金が関係する場合は、退職所得控除の計算が複雑になることがある。

該当する人は、支払者から受け取る資料、国税庁の案内、税務署や税理士などの専門窓口で個別に確認したい。退職金の税金は、金額だけでなく「いつ、どの制度から、どの形で受け取るか」によって整理の仕方が変わる。

短期の退職金や役員退職金には例外がある

退職所得では、退職所得控除を差し引いた後の金額に原則として2分の1を掛ける。ただし、すべての退職金に同じ計算がそのまま当てはまるわけではない。

国税庁の資料では、役員等としての勤続年数が5年以下の場合に関係する特定役員退職手当等や、勤続年数5年以下の短期退職手当等について、通常の2分の1課税とは異なる計算が示されている。

この部分は、一般的な長期勤続後の退職金とは別に確認する論点だ。短期の勤務で退職金を受け取る人、役員退職金を受け取る人、同じ年に複数の退職手当等がある人は、基本式だけで税額を判断しない方がよい。

額面だけでなく、勤続年数と書類で手取りの見え方が変わる

退職金の税金を考えるとき、最初に分けたいのは次の点だ。

  • 退職金を一時金で受け取るのか、年金形式で受け取るのか
  • 所得税上、退職所得として扱われるものか
  • 勤続年数は何年として計算されるのか
  • 勤続20年以下か、20年超か
  • 「退職所得の受給に関する申告書」を提出しているか
  • 複数の退職金、過去の退職手当等、短期退職手当等や役員退職金に当たらないか

退職金は、退職後の生活資金に関わる大きなお金だ。額面が同じでも、勤続年数や控除額、申告書の提出有無によって、源泉徴収や確定申告の扱いは変わる。

退職金税制については、長期勤続者ほど控除額が大きくなりやすい仕組みと、転職が増える働き方の変化との関係が議論されてきた。ただし、個人が退職前後にまず確認したいのは、制度変更の見通しよりも、現在の基本構造だ。

退職所得控除、原則2分の1課税、申告書の3点を押さえると、退職金の手取りや手続きの全体像をつかみやすくなる。次に退職金の資料を見るときは、支給額だけでなく、勤続年数、所得区分、提出書類、例外に当たる条件を分けて確認することが、誤解を減らす近道になる。

出典・参考

主な参照資料

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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