老後のお金について調べていると、「企業年金があるからiDeCoは不要」という話と、「iDeCoは自分でも入れる」という話が混在していて、どちらをどう考えればよいのか迷いやすい。どちらも公的年金に上乗せする私的年金だが、制度の主体も、掛金を出す人も、運用の考え方も同じではない。
企業年金は会社が従業員のために設ける制度で、確定給付企業年金(DB)や企業型確定拠出年金(企業型DC)などがある。一方、iDeCoは個人型確定拠出年金で、現行では原則65歳未満の国民年金被保険者が加入対象となる個人の制度だ。この記事では、企業年金とiDeCoの違いを、仕組み、掛金、運用、税制、併用の考え方という順に整理する。
企業年金とiDeCoの基本的な違い
企業年金とiDeCoは、どちらも公的年金の上乗せにあたる私的年金だ。ただし、制度を用意する主体が違う。企業年金は勤務先が導入する制度で、会社に制度がなければ利用できない。これに対してiDeCoは、加入条件を満たす人が自分で申し込み、掛金を拠出して使う制度だ。
この違いを一言でいえば、企業年金は「会社の制度」、iDeCoは「個人の制度」だ。老後資金づくりという目的は似ていても、最初に確認する相手は異なる。会社員なら、まず勤務先にどの制度があるかを確かめ、そのうえでiDeCoを追加で考える流れになる。
会社の制度か、自分が選ぶ制度か
企業年金は、勤務先が制度を導入しているかどうかが出発点になる。制度がなければ使えないし、制度があっても中身は会社ごとに違う。企業年金があるかどうかだけでなく、それがDBなのか企業型DCなのかを確認することが重要だ。
iDeCoは加入が任意で、申し込み、掛金の拠出、運用商品の選択を自分で行う。もっとも、「誰でも入れる」と考えるのは正確ではない。現在は原則として国民年金被保険者が対象で、年齢や受給状況による条件もあるため、自分が加入対象かを先に確認する必要がある。
掛金を誰が出すのか
掛金の出し手は、両者の違いが最も分かりやすい部分だ。企業型DCでは、掛金は原則として会社が拠出する。規約によっては加入者が上乗せで拠出できるマッチング拠出もあるが、基本は会社拠出と考えると整理しやすい。
iDeCoは、本人が自分で掛金を出す制度だ。会社に制度がなくても使える一方で、自分で申し込み、自分で積み立てないと始まらない。企業型DCが「会社が土台を用意する制度」だとすれば、iDeCoは「個人が自分で積み立てる制度」といえる。
運用の主体は誰か
運用の考え方も一律ではない。企業年金の中でも、DBは給付内容があらかじめ定められている制度で、加入者が自分で運用商品を選ぶ仕組みではない。年金資産の運用は制度側で行われ、運用リスクは事業主側が負う。
これに対して、企業型DCとiDeCoはどちらも確定拠出型なので、加入者が運用商品を選び、その結果によって将来の受取額が変わる。つまり、「企業年金があるから安心」と一括りに考えるのではなく、企業年金の中でもDBなのか企業型DCなのかで意味が変わる。
受け取り方と税制の基本はどう違うのか
税制面では、どちらにも優遇がある。ただし、見え方は同じではない。iDeCoは本人が拠出した掛金の全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となり、運用益も非課税だ。受け取り時には、年金形式なら公的年金等控除、一時金形式なら退職所得控除の対象になる。
企業型DCも、拠出時、運用時、受給時に税制上の配慮がある。一方で、企業年金にはDBも含まれるため、税制の見え方は制度ごとに異なる。iDeCoは「自分で掛金を出して、その分の所得控除を受ける」という構造が見えやすく、企業年金は制度の種類に応じて整理する必要がある。
併用できる場合はどう考えるか
企業年金があっても、iDeCoを追加で使える場合はある。特に会社員が気になるのは、企業型DCがある場合にiDeCoを併用できるかどうかだ。ここは「企業年金があるから一律に使えない」とも、「会社の制度があっても自由に積み増せる」とも言い切れない。
現行では、企業年金に加入している人のiDeCo掛金は月額2万円が上限で、企業型DCの事業主掛金額やDBなど他制度の掛金相当額によって、実際の上限は下がる場合がある。また、企業年金加入者のiDeCoは月単位拠出のみで、企業型DCでマッチング拠出をしている場合はiDeCoに同時加入できない。併用を考えるときは、勤務先制度の内容と拠出枠をセットで確認する必要がある。
会社員はまず何を確認すればよいのか
会社員が最初に確認したいのは、「勤務先にどの企業年金があるか」だ。企業年金があるかどうかだけでなく、それがDBなのか企業型DCなのかを把握しないと、掛金の出し手も、運用の主体も、iDeCoとの関係も見えてこない。
企業型DCがある場合は、会社がいくら拠出しているか、マッチング拠出があるか、iDeCoとの併用余地があるかを順番に確認すると整理しやすい。iDeCoを考える際は、節税効果だけで判断するのではなく、勤務先制度でどこまで備えられているかを先に点検したほうが判断がぶれにくい。
企業年金とiDeCoは、どちらも老後資金づくりに使う私的年金だが、制度の主体も、掛金の出し手も、運用の考え方も異なる。「会社の制度」と「個人の制度」という軸を持つと、何を先に確認すべきかが見えやすくなる。制度の違いを比べるだけでなく、まず自分の勤務先にどんな制度があるのかを確かめることが出発点になる。
(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

