公的年金とは? 国民年金・厚生年金の違いをやさしく全体解説

「年金」と聞くと、老後のためのお金というイメージを持つ人が多いかもしれない。しかし、公的年金はそれだけではない。病気やけがで障害を負ったとき、あるいは家族が亡くなって残された家族が困らないようにするためにも機能する、生活保障全体を支える制度だ。日本に住む多くの人が何らかの形で関わっており、自営業の人も、会社員も、専業主婦(夫)も無関係ではない。まず「国民年金が土台で、厚生年金が上乗せ」という全体像を押さえると、制度の見取り図がつかみやすくなる。

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公的年金とは何か

公的年金は、国が関与する社会保障制度の一つだ。社会保障とは、国民が生活上のリスクに備えるために、国や社会全体で仕組みをつくる制度を指す。

公的年金には、老後・障害・死亡という三つのリスクへの備えが組み込まれている。老齢年金は老後の生活を支え、障害年金は病気やけがで障害を抱えることになった人を支え、遺族年金は加入者が亡くなった後の家族を支える。

また、公的年金は「自分でお金を積み立てる貯金」とはしくみが異なる。現役世代の保険料を中心に、国庫負担や積立金も組み合わせながら、社会全体で支え合う設計になっている。純粋な個人の積立貯金ではなく、保険の性格を持つ制度だと理解すると分かりやすい。

公的年金と私的年金の違い

年金には「公的年金」と「私的年金」がある。この二つは役割が違うので、混同しないようにしたい。

公的年金は、法律にもとづいて多くの人が加入する、生活の土台となる仕組みだ。国民年金と厚生年金がこれにあたる。

私的年金は、公的年金に上乗せする形で準備する、個人や企業が任意で加入するものだ。iDeCo(個人型確定拠出年金)、企業年金、個人年金保険などが代表例として挙げられる。

制度の土台が公的年金で、その上に自分で備えを足していくのが私的年金だと整理すると理解しやすい。

日本の公的年金が「2階建て」といわれる理由

日本の公的年金を理解するうえで最も重要なのが、「2階建て」というイメージだ。

1階部分にあたるのが国民年金(基礎年金)で、日本に住む20歳以上60歳未満の人が原則として加入する共通の土台になる。

2階部分にあたるのが厚生年金で、会社員や公務員など、勤務先や働き方の条件によって加入する上乗せ部分だ。厚生年金に加入している人は、同時に国民年金にも加入していることになる。

つまり、1階は全国民共通の土台で、2階は会社員や公務員などに上乗せされる報酬比例の部分だ。自営業の人や学生は1階のみ、会社員や公務員は1階と2階の両方という形で理解すると分かりやすい。

注意したいのは、「厚生年金に入っているから国民年金には関係ない」ということではない点だ。厚生年金の加入者も国民年金の加入者であり、2階建ての1階部分も受け取る。

国民年金と厚生年金の違いをざっくり押さえる

国民年金厚生年金
役割土台(1階)上乗せ(2階)
主な対象20〜60歳の国内居住者全般会社員・公務員など(条件に応じて加入)
保険料のしくみ定額給与・賞与に応じた額

国民年金の保険料は定額で、2025年度(令和7年度)は月額1万7,510円だ。厚生年金の保険料は給与や賞与の金額によって変わり、勤務先と本人が折半して負担する。

どちらか一方だけを自由に選べるわけではない。会社員や公務員など、厚生年金の加入要件に当てはまる人は、国民年金と厚生年金の両方に加入するしくみになっている。

第1号・第2号・第3号被保険者とは?

「被保険者」とは、年金制度に加入している立場の人のことをいう。公的年金では、加入者を立場によって3種類に分けており、自分がどれに当てはまるかを知ると制度が理解しやすくなる。

第1号被保険者は、自営業者、フリーランス、学生、無職の人など、厚生年金に加入していない20〜59歳の人だ。保険料は自分で納める。

第2号被保険者は、会社員や公務員など、勤務先を通じて厚生年金に加入している人だ。保険料は給与から天引きされ、勤務先と折半して負担する。

第3号被保険者は、第2号被保険者に扶養されている20歳以上60歳未満の配偶者で、原則として年収130万円未満の人が対象になる。年収130万円未満でも、勤務先で厚生年金の加入要件に当てはまる場合は、第3号被保険者にはならない。本人が個別に保険料を納める必要はないが、誰でも自動的に第3号になるわけではない点は押さえておきたい。

例えば、結婚して配偶者の扶養に入ったときや、パート収入が増えて勤務先の社会保険に入るときは、立場が変わる可能性がある。詳しい要件や切り替えの手続きは、別記事で確認したい。

年金でもらえるのは老齢年金だけではない

公的年金から受け取れる給付は、老後のものだけではない。大きく三種類に分かれている。

老齢年金は、一定の年齢になった後に生活を支えるための給付だ。多くの人がイメージする「老後の年金」はこれにあたる。

障害年金は、病気やけがによって障害を抱える状態になったときに受け取れる給付だ。現役世代でも対象になりうるため、老後だけでなく働き盛りの年代にも深く関わる。

遺族年金は、加入者や受給者が亡くなったとき、残された家族を支えるための給付だ。ただし、遺族基礎年金と遺族厚生年金では対象者や要件が異なり、亡くなった人の加入状況や遺族の条件によって受け取れるかどうかが変わる。

公的年金は「老後のお金」という側面が強調されがちだが、障害や家族の死亡という場面でも機能する生活保障の制度でもある。

保険料・手続き・税金の基本も押さえておきたい

公的年金にまつわる保険料・手続き・税金についても、ごく基本的な点を整理しておく。

保険料については、国民年金は定額、厚生年金は収入に応じた金額という違いがある。第3号被保険者には本人の直接負担がない仕組みがある。自分で保険料を支払った場合は、確定申告や年末調整で社会保険料控除の対象になる。

手続きについては、年金は原則として自動的に振り込まれるものではない。老齢年金、障害年金、遺族年金の各給付はいずれも原則として請求手続きが必要になる。受け取れる時期や状況になったら、手続きを忘れずに行うことが大切だ。

税金については、老齢年金は原則として課税対象になる。ただし、公的年金等控除の仕組みがあるため、受け取った金額すべてにそのまま税がかかるわけではない。一方、障害年金と遺族年金は原則として非課税だ。

詳しい保険料の計算方法、手続きの流れ、税金の扱いについては、それぞれの個別記事で詳しく確認したい。

公的年金を理解するときに、まず押さえたい3つのポイント

ここまでの内容を、三つのポイントで整理する。

1. 公的年金は、多くの人に関わる生活保障の制度だ。
老後だけでなく、障害や家族の死亡にも対応する。単なる積立貯金ではなく、社会全体で支え合う仕組みとして設計されている。

2. 国民年金が土台、厚生年金が上乗せという「2階建て」の構造がある。
自営業は1階のみ、会社員や公務員などは1階と2階の両方という関係で理解すると分かりやすい。

3. 自分がどの被保険者(第1号・第2号・第3号)に当てはまるかを知ると、制度が身近になる。
働き方や家族の状況によって立場は変わるので、自分の位置を確認することが出発点になる。

公的年金は、一見すると専門用語が多くて難しく見える。しかし、「国民年金が土台で、厚生年金が上乗せされる2階建て」「自分がどの被保険者に当てはまるか」「老後だけでなく障害や遺族の保障もある」という三点を押さえると、制度の地図がつかみやすくなる。まずは全体像をつかみ、自分に関係する部分から確認していきたい。

(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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