去年は呼び、今年は呼ばない——自民と連合の距離は1年でなぜ変わったのか

自民党が今年(2026年)4月12日の党大会に、連合(日本労働組合総連合会)の芳野友子会長を招待しないことが明らかになった。鈴木俊一幹事長は3月30日の記者会見で「来賓はゼロベースで検討しており、特別な理由はない」と説明したが、前年との比較でみると、この説明だけでは背景を十分に説明しきれていない。

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2025年の「20年ぶり」はどう読まれていたのか

2025年3月9日、自民党第92回党大会には、芳野会長が連合トップとして20年ぶりに出席し、あいさつをした。当時の自民党公式の説明は、賃上げや春闘をめぐる接点を前向きに示す文脈で受け止められた。

一方、連合は出席の意義を「政策・制度要求の実現に向けて主要政党に直接訴える機会」と位置づけていた。その場で芳野会長が訴えたのは、中小企業・地方の賃上げ環境整備、選択的夫婦別氏制度の早期実現、第3号被保険者制度(会社員らに扶養される配偶者などの年金上の扱いを定める仕組み)の見直し、労働者保護法制の強化など、自民党内に反対意見が根強いテーマが並んでいた。

つまり2025年の出席は、自民と連合の「関係改善」というよりも、賃上げという共通利益が接点として前面に出た局面で、連合が自民全議員の前で政策要求を直接ぶつける機会を得た、という構図に近い。自民が「来てもらった」のと同様に、連合も「使わせてもらった」のだ。

「ゼロベースで検討」の前後に何が起きたのか

それが1年で見送りに転じた。

共同通信系の報道では、選択的夫婦別姓をめぐる芳野氏と高市政権の隔たりが、背景事情の一つとして報じられている。選択的夫婦別姓は、希望する夫婦が別々の姓を名乗ることを認める制度で、連合は賛成の立場を明確にしているのに対し、自民党内には保守系議員を中心に根強い反対論がある。高市早苗首相はその保守層を支持基盤の一つとしており、制度導入に慎重な姿勢を保っている。

自民側は「特別な理由はない」と繰り返すが、前年に明確な政治シグナルとして招いた相手を翌年外せば、外部には「距離の再調整」と読まれる。どちらの解釈が正確かを外から断定することはできないが、少なくとも「ゼロベースで検討した結果」という説明は、前年との落差の説明にはなっていない。

来賓人選という「無音のメッセージ」

自民党大会は年に1度の大きな意思確認の場で、党運動方針の確認や総裁演説、来賓あいさつが行われる。来賓に誰を呼ぶかは、純粋な儀礼というより、その年の政治的な布陣を映す鏡に近い。

2025年に連合トップを呼んだことが「賃上げ局面での共闘サイン」のように受け止められたとするなら、2026年に呼ばないことは「その局面が変わった」と読む向きが出るのは自然だ。

自民と連合は、経済政策(賃上げ)では利害が重なる部分があっても、価値・制度論(夫婦別姓、社会保険制度)では引き続き距離がある。2025年は前者が前面に出やすい賃上げの季節だったが、2026年は後者が目立ちやすい状況になっている、とも読める。

もっとも、これを「自民が連合を切り捨てた」と単純化するのも正確ではない。双方の関係は政策ごとに濃淡があり、来賓人選の一点で全体を語ることには限界がある。今年の見送りが何を意味するかは、今後の政策議論の中でより明確になっていくだろう。


(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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