4月から電気・ガス代が値上がり──補助終了と原油高、二つの波が家計に来る

ガソリンは先週より安くなったのに、4月使用分以降の電気代・ガス代の請求は上がる──そんな逆方向の動きが同時に起きる。イラン情勢の緊迫化で原油価格が高騰するなか、エネルギー別に価格が家計へ届くタイミングが異なるためだ。まず「なぜ今、電気・ガスが上がるのか」、そして「原油高はいつ請求に来るのか」を順番に整理する。


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4月の値上がりは「補助終了」が主因

2026年4月に使用する分の電気料金は、全国の電力大手10社すべてで値上がりする。平均的な家庭の月額でみると、東京電力は3月比458円増の8777円、大阪を管轄する関西電力は442円増の7843円など、幅はあるが概ね400〜460円台の引き上げとなる。都市ガスも東京ガス・大阪ガス・東邦ガス・西部ガスの大手4社がそろって値上がりし、東京ガスで193円増の5747円などとなる。

ただしここで重要なのは、この4月の値上がりがイランを巡る原油高とは直接関係していない点だ。今回の値上がりの主因は、2026年1月から3月まで国が実施してきた電気・ガス料金の補助が3月末で終了することにある。国が電力各社に毎月の使用量に応じた補助金を出すことで、家庭の請求額を実質的に割り引いていたが、その支援が3月使用分で打ち切られる。つまり4月は、もともとの料金水準に戻るだけで、そこにイラン情勢の影響はまだ上乗せされていない。


ガソリンはすぐ動くが、電気・ガスは「数か月後に来る」

なぜガソリンと電気・ガスでこれほど動くタイミングが異なるのか。それぞれの価格調整の仕組みに違いがあるからだ。

ガソリンは石油会社が仕入れた原油を精製してほぼ直接販売するため、原油価格の変動は数週間単位で店頭価格に反映されやすい。3月中旬にレギュラーガソリンの全国平均が1リットル190.8円と過去最高になったと報じられたが、政府が石油元売りへの補助金(激変緩和措置)を3月19日から再稼働させたことで、1週間程度で13円近い値下がりが確認されている。急騰を抑える防衛ラインとして「170円程度」を目安に掲げており、速やかに効果が出ている。

一方、電気料金には「燃料費調整制度」と呼ばれる仕組みがある。発電に使うLNG(液化天然ガス)・石炭・原油の価格について、過去3か月分の平均をもとに算定し、さらにそこから約2か月後の使用分に反映させる構造だ。4月使用分の料金に織り込まれているのは、昨年12月から今年2月の平均燃料価格であり、イラン情勢が緊迫し始めた3月後半の急騰はまだ計算に入っていない。

その急騰が最初に家庭向け電気料金に出てくるのは、早ければ6月使用分からとみられる。2月から4月の平均燃料価格を算定し、そこから2か月後の使用分に反映されるからだ。

ガスはさらに時間差が大きい。多くの都市ガス事業者はLNGを原油価格に連動する長期契約で調達しており、3か月の平均原料価格をもとに調整した料金が、算定期間の数か月後の検針分に適用される。日本ガス協会によれば、原油高が続いた場合に家庭向けガス料金に跳ね返るのは5か月から6か月後を目安に、夏場以降へ影響が及ぶ可能性があるとされる。


「補助終了」と「燃料高の転嫁」──二つの波は別物

このことから、今後の値上がりには二段階の性格があると整理できる。

第一波(4月):補助終了の反動
すでに確定した値上がり。イラン情勢とは関係がなく、支援措置がなくなることで生じる。政府が再び支援策を打てば抑制できる性格のものだ。

第二波(6月以降):燃料高の転嫁
原油・LNG価格の上昇が続いた場合、燃料費調整制度を通じて電気・ガス料金に遅れて乗ってくる波。どれほど上がるかはこれからの燃料市況次第だが、補助終了による値上がりに上乗せされる可能性がある。

同じ「エネルギー価格の上昇」という言葉でも、ガソリンは「今日の原油高が来週の請求に出る」ものであり、電気・ガスは「今日の原油高が数か月後にじわりと来る」仕組みになっている。家計の感覚でニュースの原油高と請求書の増加がずれて見えるのは、この構造的な違いがある。


政府の対応は「ガソリン優先、電気・ガスは様子見」

政府の政策対応にも非対称性がある。ガソリンについては高市首相が3月中旬に「170円程度」を急騰抑制の防衛ラインとして明言し、即座に激変緩和措置を再稼働させた。一方、電気・ガスについては現時点で具体的な追加支援策が示されていない。

背景には、前述した時間差の問題がある。電気・ガス料金はしばらく燃料高の影響が表面化しないため、政策判断を先延ばしできる。高市首相は「継続的に国民生活を支えることができるよう、支援のあり方を柔軟に検討していく」と述べるにとどまっており、具体策は今後の燃料動向を見ながら判断する構えだ。

ガソリンなど燃料油対策については、政府は2800億円規模の基金残高に加え、今年度予算の予備費からおよそ8000億円を活用する枠組みをすでに動かしている。ただし電気・ガスへの追加支援が同規模で出るかは別問題で、原油高が長期にわたれば財政負担はさらに膨らむ。制度的には補助が可能でも、その財源に持続性があるかどうかは問われ続ける。


Summary

4月の電気・ガス値上がりは「補助が終わったから」であり、イラン危機の影響はまだ来ていない。原油高が続けば電気は早ければ6月使用分から、ガスは5〜6か月後を目安に夏場以降にかけて追加の値上がりリスクが高まる。3月19日の措置再開後、1週間程度でガソリンの値下がり効果が確認されており、電気・ガスは4月使用分から上がる──同じ原油高の話でも、価格に届くルートとタイミングが異なることを踏まえてニュースを読むと、家計への影響を見通しやすくなる。

(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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