日清オイリオが一斗缶へ切り替え、ナフサ不安が食品包装に波及

中身の油ではなく、容器が変わる。日清オイリオグループ(2602)は、業務用食用油の一部について、ナフサ由来の容器から従来型の一斗缶へ切り替える方針だと報じられている。

一見すると地味な包装変更に見えるが、背景にあるのは中東情勢による包装資材の調達不安だ。食用油の価格や供給は、植物油の相場だけでなく、原油、ナフサ、プラスチック容器、段ボール、物流資材にも左右される局面に入っている。

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何が変わるのか

対象となるのは、飲食店やコンビニエンスストアなどで揚げ物を作る際に使われる業務用食用油の一部だ。報道によると、これまで一部の商品では、ナフサ由来の容器に油を入れ、段ボールに格納して出荷していた。

しかし、中東情勢の影響で容器の調達が不安定になっているとして、同社は2026年7月から当面の間、従来から使われてきた一斗缶で代替する方針だ。一斗缶は主に業務用食品、油脂、塗料、溶剤などで使われる金属製の缶で、容量はおおむね18リットル前後。業務用食用油では以前からなじみのある容器でもある。

ここで重要なのは、食用油そのものが足りないという話ではない点だ。油があっても、容器が安定して調達できなければ商品として出荷しにくくなる。今回の対応は、その供給リスクを避けるために、既存の容器形態へ戻す動きといえる。

なぜナフサが食品の容器に関係するのか

ナフサは、原油を精製する過程で得られる石油製品の一つだ。ガソリンに近い軽い留分で、石油化学製品の基礎原料として使われる。

ナフサからは、エチレンやプロピレンといった化学原料が作られる。そこからポリエチレン、ポリプロピレン、PET樹脂、フィルム、容器、包装材、接着剤、インク原料などが生まれる。つまりナフサは、給油所のガソリンだけでなく、食品トレー、プラスチック容器、袋、ラベル、印刷インクにもつながっている。

食用油メーカーにとっても、容器は単なる脇役ではない。商品を店や飲食店に届けるには、容器、キャップ、ラベル、段ボール、物流資材が必要になる。特に業務用油は、一度にまとまった量を安定して届けることが求められる。中身の油が確保できていても、包装資材が揺らげば供給の現場に影響が出る。

値上げと容器変更は別々の話ではない

日清オイリオグループは、2026年4月20日付のニュースリリースで、2026年6月1日納入分から家庭用、業務用および加工用食用油の価格改定を実施すると発表している。改定幅は、家庭用食用油が11〜15%、業務用食用油・加工用食用油バルクが17〜21%だ。

同社は理由として、世界的な人口増加やバイオ燃料需要の高まりに伴う油脂需要の増加に加え、原油価格の高騰に伴うエネルギー費、物流費、包装資材費の上昇などを挙げている。今回の一斗缶への切り替えも、こうしたコスト上昇と供給不安の大きな流れの中で見る必要がある。

つまり、今回のニュースは「油が高くなる」という一言では片づけにくい。原料高が製造コストを押し上げ、原油やナフサの不安定さが包装資材に影響し、容器の変更や商品の集約につながる。食品価格の上昇は、食材そのものだけでなく、商品を包み、運び、店頭や厨房まで届ける仕組み全体から起きている。

これは一社だけの動きなのか

日清オイリオグループは東証プライム上場の食料品メーカーで、証券コードは2602だ。今回の対応は同社固有の事情を含むが、包装資材をめぐっては、複数の食品関連企業で包装・容器を見直す動きが出ている。

海外メディアでは、カルビーが一部商品のパッケージを白黒に切り替える動きも報じられている。背景には、ナフサ由来のインク供給が不安定になったことがあるとされる。商品の中身や量を維持しながら、包装を簡素化して供給を続ける対応だ。

また、ナフサはプラスチック、接着剤、医療用品、包装インクなど幅広い製品に使われる基礎原料である。日本は原油輸入の中東依存度が高く、中東情勢が緊張すれば、原油の調達だけでなく石油化学製品の供給への影響も意識されやすい。食用油の容器変更は、その大きな構図が生活に近い場所へ表れた例とみることができる。

消費者にはどこまで影響するのか

一斗缶への切り替えは、主に業務用食用油の一部が対象だ。そのため、家庭の台所で直ちに容器変更を実感するとは限らない。

ただし、業務用油は飲食店、コンビニエンスストア、食品工場などで使われる。揚げ物や加工食品のコストに関わるため、間接的には外食価格や惣菜価格にも関係しうる。もちろん、個別の商品価格がどの程度変わるかは、各社の調達、在庫、販売戦略によって異なるため、ここで一律に言い切ることはできない。

それでも、今回の動きが示しているのは明確だ。食卓に届く価格は、農産物や油脂原料だけで決まっているわけではない。容器が足りない、インクが不安定になる、物流費が上がる。そうした見えにくい部分も、最終的な価格や供給の安定性に影響する。

食品価格を見る目は少し変わる

日清オイリオグループの久野貴久社長は、2026年5月19日の決算関連の記者会見で、消費者の節約志向の高まりを強く実感していると述べた。そのうえで、買い控えが起きる中でも中東情勢を見極めながら、価格改定の背景などを丁寧に説明していく考えを示した。

消費者にとって値上げは負担であり、企業にとっても簡単な判断ではない。需要が弱くなれば、値上げだけでなく、需要の低い商品の集約も選択肢になる。価格改定、容器変更、商品集約は別々の対応に見えて、実際には同じコスト上昇と供給不安の中でつながっている。

今回の一斗缶への切り替えは、包装の小さな変更に見える。しかし、その先には中東情勢、原油、ナフサ、包装資材、食品流通、外食価格まで続く長い線がある。食品価格を見るとき、これからは「原材料が高いかどうか」だけでなく、「包んで運ぶ仕組みがどれだけ安定しているか」も見落とせない論点になる。

(本稿は各種公開情報をもとに作成した。一部数値は記事掲載時点の情報である)

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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