JDI、12年連続赤字でも赤字幅は縮小 工場売却と車載シフトで再建なるか

ジャパンディスプレイ(JDI、東証プライム・6740)の再建は、まだ「回復」と呼ぶには早い段階にある。2026年3月期の決算は、親会社株主に帰属する当期純損益が198億円の赤字となり、最終赤字は12年連続となった。一方で、前年度の約782億円の赤字からは赤字幅が大きく縮小している。

今回の決算で見えるのは、業績が一気に戻ったというより、事業を小さくしながら損失を減らす構造改革が進んでいるという姿である。

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売上は3割近く減少、最終赤字は198億円

JDIが発表した2026年3月期の売上高は、前年度比29.6%減の1323億円だった。最終損益は198億円の赤字で、12年連続の最終赤字となった。

JDIの開示によると、売上減少の主な要因は、液晶スマートフォン向けディスプレーの戦略的縮小に加え、鳥取工場と千葉県茂原市の茂原工場で生産を終了したことに伴う受注減である。JDIはこれまで、車載向けやスマートウォッチ向けのディスプレーなどを手がけてきたが、量産型の液晶パネル事業は厳しい競争環境に置かれてきた。

売上が大きく減った一方で、赤字幅は縮小した。希望退職者の募集などによる人員削減や、工場の生産終了に伴う経費削減が進んだためである。会社側の説明でも、EBITDAと営業利益の損失額が前期実績に比べて縮小したことが示されている。

ただし、これは売上を伸ばして利益を回復したというより、固定費を下げて赤字を小さくした段階とみるのが自然である。

赤字幅縮小だけでは再建完了とは言えない

赤字幅が前年度から大きく縮小したことは、JDIにとって前向きな材料である。前年度の最終赤字は約782億円だったため、損失の規模はかなり圧縮された。

しかし、同時に売上高も3割近く減っている。これは、事業規模そのものが縮小していることを意味する。赤字を減らせたとしても、縮小後の事業で持続的に利益を出せるかは、まだ確認されていない。

さらに、財務面では債務超過が続いている。JDIの資料では、2026年3月期末の純資産合計はマイナス74億円となっており、財務体質の改善は急務である。会社は資産売却や財務施策によって、2026年度中の債務超過解消を目指す方針を示している。

つまり今回の決算は、赤字幅縮小という改善を示す一方で、売上減少と債務超過という重い課題も残した決算だった。

鳥取工場は譲渡契約、茂原工場は売却交渉中

工場をめぐる動きは、JDIの財務改善を見るうえで重要な焦点となる。

鳥取工場については、JDIが2026年3月31日に八幡東栄エステート株式会社との間で譲渡の最終契約を締結した。物件引渡日は2026年9月30日の予定である。一方、茂原工場については、生産終了後の売却に向けて複数の候補先と交渉している。

この2つは状況が異なる。鳥取工場はすでに譲渡契約まで進んでいるが、茂原工場は売却交渉の途上にある。茂原工場の売却が進めば、債務超過解消に向けた財務改善策の一つになり得る。

一方で、工場売却は単なる資産整理ではない。JDIが従来型の量産液晶パネル事業への依存を下げ、事業規模に見合った体制へ移る動きでもある。かつて日本の液晶パネル産業は強い競争力を持っていたが、韓国、台湾、中国勢との価格競争や、スマートフォン向けでの有機EL移行などによって、液晶を主力としてきた企業は厳しい環境に置かれてきた。

JDIの課題は、赤字を減らすことだけではない。縮小した後に、どの事業で稼ぐ会社になるのかを示すことにある。

車載ディスプレーと新規分野に移れるか

JDIは今後、収益力の高い車載向けディスプレーの強化を目指すとしている。車載分野は、スマートフォン向けと比べて製品の採用期間が長く、品質や信頼性も重視されやすい。JDIはこの領域を収益性改善の柱にしたい考えだ。

また、同社は「BEYOND DISPLAY」戦略のもと、ディスプレーに加えてセンサー、半導体パッケージングなどの分野も掲げている。従来の量産液晶パネル事業への依存を下げ、ディスプレー以外の収益源も育てようとする動きである。

ただし、新規分野が本当に収益の柱になるには時間がかかる。車載向けの強化も、受注を増やし、利益につなげるところまで進まなければ、再建の道筋は見えにくい。

問われるのは「小さくなった後」の稼ぐ力

JDIの2026年3月期決算は、赤字幅の縮小という改善と、12年連続赤字という厳しさが同時に表れた内容だった。工場の生産終了や人員削減によって損失は圧縮されたが、売上減少と債務超過は依然として重い。

今後の注目点は、茂原工場の売却が進むか、債務超過を解消できるか、そして車載ディスプレーやセンサー、半導体パッケージングなどの分野で収益を伸ばせるかである。

12年連続赤字という数字だけを見ると、厳しい印象が先に立つ。ただ、JDIにとって本当に問われているのは、過去の量産型液晶パネル事業をどこまで整理できるかではなく、整理した後に利益を出せる会社へ変われるかどうかである。

(本稿は各種公開情報をもとに作成した。一部数値は記事掲載時点の情報である)

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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