米中首脳会談で市場心理改善、AI相場と円安・金利上昇が焦点
米中首脳会談では、台湾問題をめぐる警告と友好ムードの演出が同時に示され、貿易・エネルギー面での協力が市場の関心を集めた。14日の米国株式市場は主要3指数がそろって上昇し、ナスダックとS&P500は最高値を更新した。一方、原油高を背景に米輸入物価が大きく上昇し、インフレと金利上昇への警戒も残る。日本市場では長期金利上昇とAI関連株の急落が重しとなり、日経平均は大幅反落した。
米中首脳会談を受けて米国株は主要3指数が上昇し、ナスダックとS&P500は最高値を更新した。AI半導体相場、原油高によるインフレ、ドル円158円台、日本の長期金利上昇と国内企業決算を整理する。
台湾問題では中国が警告する一方、農産物や航空機、原油購入をめぐる協力が焦点となった。
ダウは50,063ドル、ナスダックは26,635、S&P500は7,501となり、ハイテク株が相場を支えた。
日経平均は62,654円で取引を終え、日本の10年債利回りは2.630%に上昇した。
米中首脳会談・地政学
台湾問題では中国が警告、米側の具体的対応は不明
アメリカのトランプ大統領と中国の習近平国家主席が北京で会談した。会談は2時間以上に及び、中国側は台湾問題について、適切に処理すれば二国間関係の安定を維持できる一方、処理を誤れば衝突や紛争に発展し、中米関係を危険な境地に追い込む可能性があると警告した。
一方で、会談では「ウィンウィン」の関係構築も呼びかけられ、対立と協調の両面がにじんだ。ホワイトハウスの会談後声明では台湾への言及はなく、台湾独立を支持しない立場や武器売却をめぐる譲歩の有無は明らかになっていない。会談に同席したアメリカ側高官は、台湾政策は変わっておらず、武器売却も主要議題にはならなかったとしている。
農産物、ボーイング機、原油購入が米中協力の焦点に
今回の訪中には、NVIDIA、アップル、テスラなど米大手企業の経営トップが同行した。アメリカ側は中国市場での事業拡大を重視し、中国側もアメリカ企業が中国の改革開放に深く関わっているとして、協力姿勢を示した。
貿易面では、中国による農産物の輸入増加が焦点になった。トランプ大統領は、中国がボーイングの小型機737 MAXを200機購入することも協議したと明らかにしている。大豆や牛肉の輸入拡大は農業州へのアピールとなり、航空機購入は製造業や雇用への波及が見込まれるため、中国側にはアメリカとの関係安定を狙う計算があるとみられる。
イラン・ホルムズ海峡をめぐり一定の共通認識
中東情勢について、中国側の発表は重大な国際・地域問題について意見交換したとの言及にとどまった。これに対し、トランプ大統領は、習主席からホルムズ海峡の開放で協力できることがあれば力になりたいとの申し出があったと説明している。
また、習主席がイランに軍装備品を供与しないことで同意したと主張し、海峡の軍事化や通行料徴収に反対する姿勢を示したほか、中東産原油への依存度を下げるためアメリカ産原油の購入を増やすことに関心を示したとしている。イラン情勢をめぐり、米中間で一定の共通認識ができている可能性がある。
米国市場・金利・商品
NY株は3指数上昇、ナスダックとS&P500が最高値
14日のニューヨーク株式市場は、主要3指数がそろって上昇した。ダウ平均は370ドル高の50,063ドルと反発し、およそ3カ月ぶりに5万ドル台を回復した。ナスダック総合指数は232ポイント高の26,635、S&P500は56ポイント高の7,501となり、いずれも最高値を更新した。
370ドル高
232ポイント高
56ポイント高
米中首脳会談で大きな波乱がなかったことに加え、ハイテク企業を中心に業績への楽観的な見方が株価を押し上げた。セクター別では情報技術やエネルギーが上昇し、素材や不動産は下落した。
シスコ急伸、NVIDIAには中国向け販売許可報道
ネットワーク機器大手シスコシステムズは、強気な業績見通しを受けて株価が一時17%上昇した。金融株ではゴールドマン・サックスやトラベラーズも上昇した。
ナスダックを押し上げた銘柄としてはNVIDIAが目立った。NVIDIA製半導体をめぐり、アメリカ政府が一部中国企業への販売を許可したと報じられ、買い材料となった。中国向けAI半導体H200の販売承認が伝わったことも、テクノロジー株の支援材料になった。
米債利回り上昇、原油は反発・金は反落
米国債市場では、10年債利回りが4.48%台、2年債利回りが4.01%から4.02%程度に上昇した。商品市場ではニューヨーク原油先物が反発し、金先物は反落した。欧州市場はそろって続伸し、イギリスの1月から3月期GDP速報値が市場予想を上回ったことで、景気減速懸念が和らいだ。
金反落
為替・円相場
ドル円は158円台、介入警戒が上値を抑える構図
ドル円は158円台前半から40銭台で推移した。主要通貨では、ユーロ円が184円台後半、豪ドル円が114円台前半から半ば、英ポンド円が211円台、ブラジルレアル円が31円台後半、トルコリラ円が3円48銭台近辺となった。
ドル円の予想レンジは157円ちょうどから159円50銭とされた。日本の通貨当局による為替介入への警戒から円が一時急騰する場面があったものの、米小売売上高など経済指標の底堅さを受けてドルが買い戻された。158円半ばの水準では、当局者の発言が再び注目されるとの見方がある。
介入は短期的な円高要因、原油高は円売り圧力に
4月末からの為替介入により、ドル円は160円台から一時155円近辺まで修正された。過去の介入実績を踏まえると、一定期間は介入効果が残るとの見方がある。
一方、今後の追加介入には慎重さも必要になる可能性がある。IMFの為替制度分類では、6カ月以内3回までの介入であれば自由変動相場制に分類されるとされ、これを超える介入には市場が敏感に反応する可能性があるためだ。短期的には介入警戒で円が強含む一方、中期的には中東情勢が落ち着くまで、原油高や貿易赤字拡大を背景とした円売り圧力が残り、ドル円が再び160円を目指す展開も想定されている。
米国経済指標・FRB
米小売売上高は3カ月連続プラス
アメリカ商務省が発表した4月の小売売上高は、前月比0.5%増となり、3カ月連続でプラスとなった。ガソリンスタンドなど9項目が伸びた一方、自動車など3項目は減少した。
市場では、中東情勢を受けてもなお消費は底堅いとの見方がある。一方、原油高によるインフレが支出額を押し上げたに過ぎないとの指摘もあり、消費の実勢を見極める必要がある。
輸入物価は前年比4.2%上昇、インフレ警戒が続く
14日に公表されたアメリカの4月の輸入物価指数は、前年比4.2%上昇した。燃料価格の高騰を背景に、2022年10月以来の高い上昇率となった。前月比では市場予想を上回る1.9%上昇だった。
カンザスシティ連銀のシュミット総裁は、アメリカ経済にとってインフレが最大の脅威だとの認識を示した。インフレ率はピークから大きく緩和したものの、依然として高すぎるとの見方が示されている。
FRB新体制では市場との対話が焦点
FRBではパウエル議長が15日に議長任期の満了を迎え、ウォーシュ次期議長の政策運営が注目される。インフレ管理の枠組みや量的緩和の見直しが論点になる可能性があり、市場との対話を通じて大きな変動を避けながら政策変更を進められるかが焦点となる。
AI関連・米国企業
セレブラスがナスダック上場、時価総額は753億ドル
アメリカの新興半導体企業セレブラスシステムズは14日、ナスダック市場に上場した。初値は公開価格のおよそ2倍にあたる350ドルで、時価総額は753億ドル、およそ12兆円に達した。その後、311ドル7セントで14日の取引を終えた。
およそ12兆円
セレブラスは、半導体ウエハー基板を細かく裁断せず、巨大な一つのチップとして製造する独自技術で知られる。NVIDIAが圧倒的なシェアを占めるAI半導体市場で、競合としての存在感を高めている。
AI相場は利益成長と設備投資が支える
AI半導体を中心とした相場は、4月以降に世界的に加速している。アメリカではS&P500の時価総額が8兆ドル増加する中、その8割がAI関連だったとされる。日本でもTOPIXの時価総額が142兆円増える中で、およそ6割がAI半導体関連だった。
AI相場の背景には、AI企業の利益成長や設備投資増という実勢の裏付けがあるとの見方がある。S&P500企業の2026年純利益予想が前年比2割増であるのに対し、半導体セクターでは9割増益が見込まれている。アメリカのビッグテックによるAI投資も、先月の決算で6割から7割増の0.7兆ドル超へ引き上げられた。
OpenAIとAnthropicをめぐる投資規律にも注目
OpenAIをめぐっては、2030年までのAI計算インフラ計画投資が1.4兆ドルから6,000億ドル、94兆円に大幅削減されたとされる。削減率は57%に達し、過剰投資への警戒やIPO時期をめぐる社内の温度差が背景にある可能性が指摘されている。
一方、Anthropicの売上ランレートは2025年末の90億ドルから4月末には300億ドルへ拡大し、4カ月で3倍以上になったとされる。OpenAIの売上ランレートは240億ドルとされ、生成AI企業の評価では、ブランド力だけでなく売上規模、設備投資の規律、将来の利益成長を見極める必要がある。
宇宙ビジネスではSpaceX関連に関心
SpaceXは、新型ロケット「スターシップ」の飛行テストを早ければ19日に行うと発表した。スターシップは史上最大の再利用型ロケットで、搭載量は現行のファルコン9の4倍以上とされる。成功すれば衛星を一気に投入できるようになり、衛星通信サービス「スターリンク」の拡大につながる可能性がある。
関連銘柄としては、宇宙向け電子製品や低軌道衛星向け部品を手掛ける企業に恩恵が及ぶ可能性がある。低軌道衛星向けの売上拡大を見込むSTマイクロエレクトロニクスや、コネクター大手のアンフェノールが注目されている。テスラについても、人型ロボットや蓄電池システムを通じてSpaceXの事業拡大から恩恵を受ける可能性がある。
日本株・国内市場
日経平均は618円安、AI関連株の失望売りが波及
14日の日本市場では、AI関連銘柄として知られる藤倉の株価がストップ安水準まで下落した。来年3月までの1年間の利益見通しが市場予想を大幅に下回り、失望売りが広がった。
藤倉は、今期の純利益が前年に比べ0.7%減少する見通しを発表した。光ケーブルの急激な増産により、水素など原材料の調達が追いつかなくなる懸念があるとしている。終値は前日比19%安の6,355円となり、他のAI・半導体関連銘柄にも売りが波及した。日経平均株価は前日比618円安の62,654円で取引を終えた。
6,355円
618円安
日本の長期金利は2.630%、株価の重しに
日本の10年債利回りは2.630%に上昇し、29年ぶりの高値水準となった。金利上昇が株式市場の重しとなり、市場では3%を意識する動きも出ているとみられる。原油高による金利上昇に加え、政府による補正予算検討がきっかけになったとの見方がある。
今日の日本株は、友好的な米中首脳会談を受けて基本的には上昇基調が意識される一方、長期金利が急上昇すれば上値を抑える可能性がある。日経平均の予想レンジは62,500円から63,500円。大阪取引所の夜間取引では日経平均先物が63,100円、シカゴ日経平均先物は63,045円だった。
日本経済・日銀関連
日銀審議委員、早期利上げが望ましいとの考え
日銀の審議委員は講演で、景気下振れの兆しがはっきりとした数字で現れないのであれば、できる限り早い段階での利上げが望ましいと述べた。その上で、適時適切な利上げによって基調的な物価上昇率が2%を超えないように抑えることが重要だと強調した。
原油高で物価上昇が加速することへの警戒感も示されており、日本の金利上昇と日銀の政策姿勢は、株式市場と為替市場の双方に影響を与える材料になっている。
国内企業・サービス
ホンダは上場以来初の最終赤字
ホンダは、今年3月までの1年間の最終損益が4,239億円の赤字だったと発表した。1957年に上場して以来、最終赤字は初めてとなる。売上高は前年比0.5%増の21兆7,966億円だった。
EV需要の減少を受けた戦略見直しに伴う関連損失1兆5,778億円が響いた。一方、来年3月までの1年間の最終損益は2,600億円の黒字に転換すると見込んでいる。
GOが東証グロース上場へ、カカクコム買収提案は対抗色
タクシー配車アプリを手掛けるGOは、東京証券取引所から新規上場の承認を得たと発表した。来月16日に東証グロース市場へ上場する。想定売り出し価格は2,350円で、時価総額はおよそ1,800億円になる見通し。今年承認されたIPOでは最大の時価総額となる見込みで、調達資金は配車事業の拡大や自動運転サービスの事業化などに充てる。
LINEヤフーは、飲食店情報サイト「食べログ」などを運営するカカクコムに対し、アメリカの投資ファンド、ベインキャピタルと共同で改めて買収提案をした。カカクコムはスウェーデンに本社を置く投資ファンドEQTによる買収提案に賛同しているが、LINEヤフー側のTOB想定価格は1株あたり3,232円と、EQTの3,000円をおよそ8%上回る。今後、敵対的買収に発展する可能性がある。
ユナイテッド航空、新千歳・サンフランシスコ直行便を冬季限定で開設
アメリカの航空大手ユナイテッド航空は14日、新千歳空港とサンフランシスコを結ぶ直行便を冬季限定で開設すると発表した。12月から3月にかけて週3便を運航し、スキー需要の取り込みを図る。アメリカ本土と札幌の間の直行便は初めてとされる。ユナイテッド航空はこのほか、10月から成田とシカゴを結ぶ定期運航を1日1往復で始める。
今日の主な予定
国内は企業物価指数、米国はNY連銀製造業景気指数
国内では4月の企業物価指数が発表される。企業決算ではキオクシアホールディングスやメガバンクなどが予定されている。
アメリカでは5月のニューヨーク連銀製造業景気指数が発表される。米国ではインフレ指標とFRB新体制への見方、日本では長期金利と企業決算が、引き続き市場の焦点となりそうだ。

