中国車、国内販売減でも輸出拡大 EV競争は海外へ向かう

中国の自動車市場で、国内販売の減速と輸出拡大が同時に進んでいる。

中国自動車工業協会の発表では、2026年4月の中国国内の新車販売台数は162万5000台となり、前年同月比で21.6%減少した。国内販売の前年割れは、同協会ベースで6か月連続とされる。一方で、輸出台数は前年同月比で74.4%増えた。

この対照的な数字は、単に「中国で車が売れなくなった」という話ではない。国内市場の勢いが鈍る一方、中国メーカーが海外市場に成長余地を求める動きが強まっていることを示している。とくにEVやプラグインハイブリッド車などを含む新エネルギー車の輸出拡大は、中国の自動車産業が国内中心の成長から、海外市場での競争をより重視する局面に入りつつあることをうかがわせる。

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国内販売減は政策支援だけでは説明しきれない

中国は世界最大級の自動車市場であり、これまで国内需要の大きさが中国メーカーの成長を支えてきた。政府による購入支援や税制面の優遇も、新エネルギー車の普及を後押ししてきた。

ただし、4月の販売減を税制優遇の縮小だけで説明するのはやや単純だ。支援策の見直しは大きな要因の一つとみられるが、燃油車販売の落ち込み、買い替え需要の一巡、景気見通しの弱さ、メーカー間の値下げ競争も重なっている。

国内市場では、メーカー同士の価格競争が激しくなっている。値下げは販売台数を支える効果がある一方で、メーカーや販売店の利益を圧迫しやすい。販売台数が伸びにくくなり、価格競争も続けば、国内市場だけで成長を維持しにくくなる。

その結果として、輸出を重視する誘因が強まっている。

輸出拡大は成長余地を海外に求める動き

4月の輸出台数が前年同月比で74.4%増えたことは、中国メーカーの海外展開が一段と強まっていることを示す。関連報道では、乗用車輸出や新エネルギー車輸出の伸びも目立つ。

中国メーカーにとって、海外市場は国内の販売鈍化を補う場所であると同時に、自社ブランドを世界市場に広げる場所でもある。東南アジア、中南米、中東、欧州の一部では、価格競争力のある中国車への需要がある。EVだけでなく、プラグインハイブリッド車も含めた商品展開によって、国や地域ごとの需要に合わせやすい面もある。

ただし、輸出拡大は単純な成長物語ではない。海外市場では関税、安全基準、販売網、アフターサービス、現地生産の有無などが問われる。中国メーカーが海外で販売を伸ばすほど、各国の政策対応や既存メーカーとの競争も強まる可能性がある。

EVブームは国内から海外競争へ広がる

今回の販売減少だけを見ると、中国のEVブームが失速したようにも見える。しかし、実際には国内市場の伸びが鈍る一方で、輸出や海外生産を含む競争の場が広がっていると見るほうが自然だ。

中国でいう新エネルギー車は、主にEV、プラグインハイブリッド車、燃料電池車などを含む。日本で一般的に使われる「EV」よりも広い概念である。中国政府は長年、この分野を政策的に後押ししてきた。その結果、BYD(002594.SZ/1211.HK)、吉利汽車(0175.HK)、上海汽車集団(600104.SS)、蔚来(NIO)、小鵬汽車(XPEV)、理想汽車(LI)などの中国メーカーが存在感を高めた。

ただ、国内市場が成熟してくると、単に台数を伸ばすだけでは成長を維持しにくくなる。価格を下げれば販売は支えられるが、利益率は下がる。販売店の経営も苦しくなる。メーカーにとっては、生産能力を維持しながら収益を確保するため、海外販売を重視する理由が増えている。

つまり、中国EVブームは終わったというより、国内市場中心の成長から、世界市場での競争へと広がる局面にある。

日本メーカーへの影響も避けられない

中国メーカーの輸出拡大は、日本の自動車メーカーにとっても大きな意味を持つ。とくに新興国や一部地域では、価格の安い中国EVやプラグインハイブリッド車が増えれば、日本車のシェアが圧迫される可能性がある。

トヨタ自動車(7203)、ホンダ(7267)、日産自動車(7201)などの日本メーカーは、中国市場そのものでも競争に直面してきた。今後は中国国内だけでなく、東南アジアや中南米など、これまで日本車が強かった市場でも中国メーカーとの競争が強まる可能性がある。

一方で、日本メーカーにはハイブリッド車、品質、耐久性、販売網、アフターサービスといった強みがある。EVだけで勝負するのではなく、ハイブリッド車やプラグインハイブリッド車も含めた選択肢を持つことは、地域ごとの需要に対応するうえで重要になる。

読者にとって今回のニュースで見るべき点は、中国国内の販売減少そのものだけではない。国内需要が鈍るほど、中国メーカーが海外に出ていく圧力は強くなる。その結果、世界の自動車市場で中国車と既存メーカーの競争がより直接的になる可能性がある。

国内不振が海外攻勢を強める

中国の4月の国内新車販売は、前年同月比で21.6%減った。一方で、輸出は74.4%増えた。この対照的な動きは、中国自動車産業の現在地をよく表している。

国内市場では、政策支援の見直し、買い替え需要の一巡、価格競争の激化が重なっている。海外市場では、中国メーカーが価格競争力と電動化技術を武器に販売を伸ばそうとしている。

中国の車が国内で売れにくくなったことは、中国メーカーの勢いが止まったことを意味しない。むしろ、国内市場の鈍化が海外展開をさらに加速させる可能性がある。

日本の読者にとっては、中国国内の販売統計を「中国経済の弱さ」として見るだけでは足りない。そこから先に、世界市場で中国車の存在感がどう変わるのか、日本メーカーの競争環境がどう変わるのかを見ていく必要がある。

中国EVブームの次の焦点は、国内でどれだけ売れるかだけではない。海外市場でどこまで受け入れられ、各国の政策や既存メーカーとの競争をどう乗り越えるかに移り始めている。

(本稿は各種公開情報をもとに作成した。一部数値は記事掲載時点の情報である)

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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