百貨店売上5.2%増の内側 春物衣料・高額品・免税売上と地域差を整理

2026年4月の全国百貨店売上は、全体では前年を上回った。ただ、この数字を「百貨店が一様に回復した」と読むと、少し粗い。

日本百貨店協会の発表によると、4月の全国百貨店売上高は4,421億円余り。店舗数調整後の前年同月比は5.2%増で、4か月連続のプラスとなった。国内顧客売上は3.7%増、免税売上は18.3%増。国内売上も伸び、免税売上も全体を押し上げた形だ。

一方で、内訳を見ると景色は単純ではない。春物衣料や高額品は動いた。免税売上も伸びた。しかし、免税の購買客数は減っている。さらに、日本百貨店協会の地区区分でいう10都市は増加した一方、10都市以外は減少した。百貨店売上5.2%増の読みどころは、まさにこの「同時に起きている違い」にある。

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高温だった4月、春物衣料の動きに追い風か

4月の売上増を支えた要素の一つが、春物衣料の動きだ。日本百貨店協会は、全国的に気温が高めに推移し、春物衣料品や雑貨が好調だったと説明している。

気象庁の資料でも、2026年4月は全国的に気温がかなり高かった。日本の月平均気温の基準値からの偏差はプラス1.89度で、4月としては統計上3位の高温だった。季節の進み方が早い月は、薄手の衣料や初夏向け商品の需要と結びつきやすい。

ただし、気温だけで百貨店売上全体の増加を説明することはできない。衣料品の売上は2.9%増、雑貨は10.3%増だった。気温は春物衣料や雑貨の動きと整合する背景だが、売上全体には高額品、免税、催事、地域差など複数の要因が重なっている。

免税売上は増えたが、購買客数は減っている

免税売上は、今回の統計で目立つ数字の一つだ。4月の免税売上は520億円、前年同月比18.3%増。2か月連続のプラスで、全国百貨店売上に占めるシェアは11.8%だった。

ただし、免税売上の増加は「買い物をした訪日客が大きく増えた」という話ではない。免税購買客数は49.1万人で、前年同月比6.0%減だった。売上は増えたが、購買客数は減った。ここから見えるのは、客数よりも購買単価の上昇が売上を押し上げた構図だ。

JNTOの推計でも、2026年4月の訪日外客数は369万2,200人で、前年同月比5.5%減だった。訪日客全体が前年を下回るなかで、百貨店の免税売上は増えている。これは、インバウンド消費を単純な人数の増減だけで語れないことを示している。

円安基調は、訪日客にとって日本での買い物を相対的に割安に感じさせる要因になりうる。もっとも、為替がどの程度購買行動を押し上げたかを定量的に切り分けるには、別の確認材料がいる。今回の統計から言えるのは、免税売上の増加と購買客数の減少が同時に起き、百貨店側は「購買単価の上昇」を売上増の背景として説明しているという点だ。

中国だけでは見えないインバウンド消費の変化

免税売上の中身では、国・地域ごとの違いも重要になる。日本百貨店協会によると、中国の購買客数は約3割減り、売上高も約2%減だった。一方で、台湾、韓国、東南アジアなどの売上は伸びたとされる。

このため、4月の免税売上増を「中国客の回復」とだけ見るのは適切ではない。中国からの購買客数が減っても、他の国・地域からの売上が伸び、高額品や化粧品などの購入単価が上がれば、免税売上全体は増える。

百貨店にとっては、訪日客の人数だけでなく、どの国・地域から来ているのか、何を買っているのか、どれくらいの単価で購入しているのかが重要になる。多言語対応、決済手段、免税手続き、ブランド構成といった売り場側の対応も、都市部の大型店ほど売上に影響しやすい。

10都市は増加、10都市以外は減少した

全国売上は5.2%増だったが、地域別では差が出た。日本百貨店協会の地区区分では、10都市の売上は6.9%増、10都市以外は0.8%減だった。

ここでいう10都市は、札幌、仙台、東京23区、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、福岡を指す。大都市圏の百貨店は、訪日客、広域からの来店、富裕層向け需要、高額品販売の影響を受けやすい。一方、10都市以外の百貨店は、都市部ほど免税や高額品需要の追い風を受けにくい場合がある。

この差を落とすと、百貨店売上の見え方はかなり変わる。全国平均が増えていても、地域によって売上環境は異なる。百貨店統計は、都市部の大型店が強い月には全体が押し上げられやすい。だからこそ、全国の伸び率と地域別の動きは分けて確認したい材料になる。

高額品の伸びは、消費全体の回復とは同じではない

商品別では、高額品の動きも目立つ。日本百貨店協会の発表では、美術・宝飾・貴金属は19.6%増だった。宝飾品や時計などの高額商材は、客単価を押し上げやすく、外商やインバウンド需要とも結びつきやすい。

一方で、高額品の伸びをそのまま幅広い家計の消費回復と重ねるのは慎重でありたい。百貨店売上は、消費全体をそのまま映す統計ではない。都市部、高所得層、訪日客、高額品、催事などの影響を受けやすい。

国内顧客売上が3.7%増えたことは、免税だけでなく国内需要もプラスだったことを示す。ただ、日常消費の実感を知るには、スーパー、専門店、EC、家計調査、物価動向など別の指標も必要になる。百貨店売上は小売の温度感を知る有力な材料だが、それだけで家計全体の強さを判断するには限界がある。

売上増が続く条件は、客数・単価・地域差に表れる

4月の百貨店売上は、春物衣料、高額品、免税売上が重なって全体を押し上げた。国内売上も増え、免税売上も伸びた。その一方で、免税購買客数は減り、10都市以外の売上は前年を下回った。

今後の注目点は、こうした売上増が単月の条件に支えられたものなのか、それとも国内客と訪日客の双方に広がる動きなのかだ。高温による季節商品の動きは月ごとに変わる。訪日客の国・地域構成も固定ではない。為替や物流、資材価格などの外部環境も、小売企業の業績を読む材料の一つになる。

百貨店売上を見るときは、総額の伸びだけでは足りない。国内売上と免税売上、客数と単価、10都市と10都市以外、衣料品と高額品を分けることで、消費のどこが強く、どこに差が残っているのかが見えやすくなる。4月の5.2%増は、百貨店の復調を示す数字であると同時に、消費の偏りや地域差を確認する入口でもある。

出典・参考

主な参照資料

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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