米国企業決算から読む消費とデジタル投資の現在地──Disney、Uber、CVS、AppLovinなど2026年5月6日発表決算
2026年5月6日に発表された米国企業の四半期決算では、エンターテインメント、配車・デリバリー、ヘルスケア、サイバーセキュリティ、ホテル、食品、広告テクノロジーなど、幅広い業種の業績が並んだ。
対象となるのは、Walt Disney(DIS)、Uber Technologies(UBER)、CVS Health(CVS)、AppLovin(APP)、DoorDash(DASH)、Fortinet(FTNT)、Kraft Heinz(KHC)、Marriott International(MAR)、Warner Bros. Discovery(WBD)、Apollo Global Management(APO)である。
今回の決算から見える大きなテーマは、米国消費の底堅さと、AIを含むデジタル投資の収益化である。DoorDashやUberでは注文数やグロスブッキングが伸び、MarriottではRevPARの増加が確認された。一方で、Kraft Heinzでは値上げ効果がある一方、数量・ミックスの弱さも残った。
DisneyやWBDでは、ストリーミングと広告、テーマパークやコンテンツ投資のバランスが焦点となり、FortinetやAppLovinでは、AI時代のセキュリティ需要や広告配信の収益性が注目された。
主要企業の決算概要
AppLovin(APP)──広告プラットフォームの収益性が焦点
AppLovin(APP)は、アプリ開発者や広告主向けに広告・マーケティングプラットフォームを提供する企業である。今回の決算では、売上高18.42億ドル、純利益12.06億ドル、希薄化後EPS 3.56ドル、調整後EBITDA 15.57億ドルを開示した。営業キャッシュフローとフリーキャッシュフローがいずれも13億ドルだった点も、収益性とキャッシュ創出力を示す材料である。
Barron’sは、売上高や調整後EBITDAの伸び、85%という高い調整後EBITDAマージンを評価している。一方で、同社株は年初来で下落しており、SEC調査や空売り筋のレポートによるボラティリティも指摘されている。つまり市場は、短期の業績そのものは強いと見ながらも、広告配信モデルの持続性や規制・調査リスクを同時に見ている。
Uber Technologies(UBER)──モビリティとデリバリーの両輪が続く
Uber Technologies(UBER)は、配車、デリバリー、フレイトを展開するモビリティ・プラットフォーム企業である。今回の決算では、Tripsが36億回、グロスブッキングが537億ドル、売上高が132億ドルとなり、調整後EBITDAは25億ドル、フリーキャッシュフローは23億ドルだった。会員プログラムであるUber Oneが5000万人に達し、モビリティとデリバリーのグロスブッキングの半分を会員が生み出している点も注目される。
Reutersは、Uberが中東情勢などの逆風を抱えながらも、第2四半期のグロスブッキング見通しを市場予想を上回る水準で示したことを評価している。評価されたのは、価格の安定、利益率の高いサービスへのシフト、国際展開、会員基盤の拡大である。一方で、第1四半期の売上高は市場予想を下回ったとされ、燃料費、天候、地政学リスクが引き続き確認点として残る。
DoorDash(DASH)──利便性消費の強さが続く
DoorDash(DASH)は、レストラン、食料品、小売などをつなぐローカルコマースのプラットフォーム企業である。総注文数は9.33億件、Marketplace GOVは316億ドル、売上高は40億ドルとなり、調整後EBITDAは7.54億ドルだった。同社は消費需要について「healthy consumer demand trends」と説明している。
Reutersは、DoorDashが第2四半期のMarketplace GOVについて市場予想を上回る見通しを示したことを評価している。食品デリバリーだけでなく、グローサリー、小売、国際事業の拡大が成長を支えている。一方で、売上高は市場予想をやや下回ったとされ、投資負担や消費環境の変化には注意が必要である。Barron’sも、利益面の上振れとGOVの強さを評価しつつ、株価が2026年に下落していたことを背景に、今回の決算は見直し材料になったと整理している。
CVS Health(CVS)──ヘルスケア事業の収益回復が評価材料
CVS Health(CVS)は、薬局、ヘルスケアサービス、医療保険を展開する米国のヘルスケア企業である。総収益は1004億ドル、GAAP希薄化後EPSは2.30ドル、調整後EPSは2.57ドルだった。2026年通期のGAAP希薄化後EPS見通しは6.24ドルから6.44ドルへ、調整後EPS見通しは7.30ドルから7.50ドルへ引き上げられた。
Reutersは、Aetnaを中心とする医療保険事業で医療費管理が改善したことを評価している。医療費率の改善は、ヘルスケア企業にとって収益性の重要な確認点である。一方で、薬局事業では規制変更や季節性疾患の減少による営業利益への圧力も指摘されており、PBM規制やMedicare Advantageの収益性は今後も確認が必要になる。Bloombergも、利益と売上高が市場予想を上回り、通期見通しが引き上げられた点を前向きに取り上げている。
Walt Disney(DIS)──配信、映画、テーマパークの総合力
Walt Disney(DIS)は、エンターテインメント、スポーツ、テーマパーク、ストリーミングを展開する企業である。今回の決算では、売上高251.68億ドル、セグメント営業利益46.03億ドル、調整後EPS 1.57ドルを開示した。セグメント営業利益は、Entertainmentが13.36億ドル、Sportsが6.52億ドル、Experiencesが26.15億ドルだった。
Reutersは、Disneyの決算について、映画、テーマパーク、ストリーミングが利益を押し上げたと評価している。市場が評価したのは、調整後EPSが市場予想を上回ったこと、ストリーミング収入の存在感が高まっていること、テーマパークとクルーズへの投資が続いていることである。一方で、国内パークの入場者数には一部弱さがあり、海外からの来場者減少や競合施設の影響、ガソリン価格上昇の影響も確認点として挙げられている。
Fortinet(FTNT)──AI時代のサイバーセキュリティ需要
Fortinet(FTNT)は、ネットワークとセキュリティを統合するサイバーセキュリティ企業である。売上高は18.5億ドル、製品売上高は6.45億ドル、ビリングは20.9億ドルだった。GAAP営業利益率は31%、non-GAAP営業利益率は36%、GAAP EPSは0.72ドル、non-GAAP EPSは0.82ドルだった。
Investor’s Business Dailyは、Fortinetの決算について、EPS、売上高、ビリングが市場予想を大きく上回ったことを評価している。特に、AIによって脅威環境が複雑化するなかで、SASEやネットワークセキュリティへの需要が強い点が注目された。一方で、サイバーセキュリティ分野は競争が激しく、成長期待が高い分、ビリングやガイダンスの変化に株価が敏感に反応しやすい。
Kraft Heinz(KHC)──値上げ効果と数量減の綱引き
Kraft Heinz(KHC)は、食品・調味料などの消費財ブランドを展開する企業である。純売上高は60.47億ドルで前年同期比0.8%増だったが、オーガニック売上高は0.4%減だった。価格は0.8ポイント増となった一方、数量・ミックスは1.2ポイント減となっており、値上げが売上を支えながらも、販売数量には弱さが残る内容だった。
Reutersは、新CEOの下での立て直し策に一定の進展が見られたと評価している。売上高とEPSが市場予想を上回り、会社分割計画の停止によるコスト削減やマーケティング投資が注目された。一方で、広告費やインフレ圧力による調整後営業利益の減少、今後の原材料・エネルギーコスト上昇リスクは懸念材料である。WSJも、売上高は伸びたものの、オーガニック売上高の減少や数量・ミックスの弱さを指摘しており、消費財企業としての本格的な成長回復にはなお確認が必要だと読める。
Marriott International(MAR)──旅行需要はなお底堅い
Marriott International(MAR)は、ホテル、リゾート、住宅、タイムシェアなどを世界で展開するホテル企業である。報告ベース総収益は66.54億ドル、報告ベース希薄化後EPSは2.43ドル、調整後EPSは2.72ドルだった。世界RevPARは前年同期比4.2%増で、米国・カナダが4.0%増、海外市場が4.6%増だった。
Reutersは、Marriottが年間のRevPAR成長見通しを引き上げたことを評価している。消費者がモノより旅行や体験を優先する傾向、米国旅行需要の回復、富裕層向け高級ホテルの堅調さが支えとなった。一方で、中東情勢に伴う地域別需要の弱さも指摘されており、旅行需要全体は強くても、地域ごとのリスクは分けて見る必要がある。
Warner Bros. Discovery(WBD)──ストリーミング成長と構造調整の重さ
Warner Bros. Discovery(WBD)は、HBO Maxなどのストリーミング、映画・テレビ制作、リニアネットワークを展開するメディア企業である。総収益は88.93億ドル、WBDに帰属する純損失は29.16億ドル、希薄化後EPSはマイナス1.17ドルだった。Streaming部門では売上高28.87億ドル、調整後EBITDA 4.38億ドルを開示し、グローバルストリーミング加入者数は1億4000万人超のガイダンスを上回ったとされている。
Reutersは、HBO Maxの国際展開によってストリーミング収入が伸びた点を評価している。一方で、広告収入の減少、リニアテレビ視聴の縮小、純損失の拡大が懸念点である。市場の見方としては、ストリーミングの規模拡大は前向きだが、従来型テレビ事業の縮小とコンテンツ・再編関連コストをどこまで吸収できるかが焦点になる。
Apollo Global Management(APO)──AUM 1兆ドル到達とプライベート市場の透明性
Apollo Global Management(APO)は、オルタナティブ資産運用と退職サービスを展開する企業である。今回確認できる数値として、2026年3月31日時点のAUMが約1.03兆ドルだったこと、普通株配当が1株あたり0.5625ドルだったことが挙げられる。一方で、売上高、純利益、EPSなどの詳細数値は、対象資料内では確認できないため、本文では補わずに扱う。
Reutersは、ApolloのAUMが1兆ドルを超えたことと、プライベートクレジットファンドで日次価格提示を導入する方針を報じている。評価された点は、資産運用規模の拡大、手数料関連収益の伸び、プライベート市場における透明性向上の姿勢である。一方で、未実現損失を含む未調整ベースの損失や、保険・投資ポートフォリオの評価変動は懸念点として残る。
テーマ別に見る今回の決算
今回の決算で最も目立ったのは、AIそのものを販売する企業ではなく、AIを活用する周辺企業の収益性である。FortinetではAIによって複雑化するサイバー攻撃への対応が需要を支え、AppLovinではAIを活用した広告配信モデルの収益性が評価された。UberもAIを成長と生産性向上に使う方針を示しており、AI投資は半導体やクラウドだけでなく、広告、セキュリティ、モビリティにも広がっている。
クラウドや配信に近い領域では、DisneyとWBDの対比が分かりやすい。Disneyはストリーミング、映画、テーマパークの複合的な収益力が評価された。一方、WBDはHBO Maxの国際展開が進む一方で、リニアネットワークの縮小と広告収入の弱さが残った。メディア企業にとって、加入者数の増加だけでなく、広告、コンテンツ投資、既存テレビ事業の減速を含めた全体の採算が重要になっている。
消費関連では、DoorDash、Uber、Marriottが米国消費の底堅さを示した。DoorDashの注文数、UberのTrips、MarriottのRevPARはいずれも需要の強さを示す指標である。一方で、Kraft Heinzでは価格上昇が売上を支えたものの、数量・ミックスは減少した。消費者が旅行や利便性には支出を続ける一方、日用品・食品では価格上昇に対して慎重になっている様子も読み取れる。
キャッシュフローも重要な確認点である。AppLovin、Uber、Fortinet、Kraft Heinzはまとまったフリーキャッシュフローを開示した。一方で、WBDはフリーキャッシュフローがマイナスで、コンテンツ投資や取引関連費用の影響が確認された。利益だけではなく、キャッシュ創出力を合わせて見ることで、成長投資がどの程度実際の資金回収につながっているかが見えやすくなる。
Summary
2026年5月6日に発表された米国企業決算は、米国経済の複数の側面を映していた。デリバリー、配車、旅行では需要の底堅さが見られ、ヘルスケアでは医療費管理の改善が評価された。広告、サイバーセキュリティ、ストリーミングでは、AIやデジタル投資が収益性にどう結びつくかが焦点となった。一方で、食品では数量減、メディアではリニアテレビの縮小、Apolloのような資産運用会社ではプライベート市場の評価透明性といった課題も残る。
今回の決算は、単に個別企業の好不調を見るものではなく、米国消費、広告市場、AI関連投資、ヘルスケアコスト、旅行需要、コンテンツ投資の方向性を確認する材料といえる。今後は、各社の次四半期見通しが実際の需要や利益率にどこまで反映されるか、また地政学リスクやインフレ、金利環境が消費と企業投資にどのような影響を与えるかが注目点になる。
本記事は、企業決算と市場テーマの整理を目的としたものであり、個別銘柄の購入・売却を推奨するものではありません。調整後EPS、non-GAAP EPS、調整後EBITDAなどは各社が一定の項目を調整して示す指標であり、GAAPベースの純利益やEPSとは異なる場合があります。

