台湾積体電路製造(TSMC、TWSE:2330、NYSE ADR:TSM)の2026年1〜3月期決算は、純利益が前年同期比58.3%増の5724.8億台湾ドルとなり、四半期ベースで過去最高を更新した。売上高も35.1%増の1兆1341億台湾ドルに達し、AI関連需要の強さを改めて印象づけた。市場では、AI向け半導体投資がなお高水準で続いていることを示す材料として受け止める向きがある。
何が起きたのか
TSMCが2026年4月16日に公表した四半期資料によると、2026年1〜3月期の売上高は1兆1341億台湾ドル、純利益は5724.8億台湾ドルだった。いずれも四半期ベースで過去最高となった。
会社見通しも強気だ。4〜6月期の売上高は390億〜402億ドルを見込み、2026年通期のドル建て売上高成長率も30%超へ引き上げた。設備投資も年間520億〜560億ドルのレンジの上限寄りになる見通しで、需要の継続を前提に生産能力の拡大を急ぐ姿勢がにじむ。
今回の決算は、単なる増収増益にとどまらない。TSMCは最先端半導体の受託生産で世界の供給網の中核を担っており、その業績はAIサーバーやデータセンター向け投資の勢いを映しやすい。だからこそ、決算の数字そのものだけでなく、先行き見通しの強さが注目を集めた。
なぜAI需要の強さを示す決算なのか
決算資料では、用途別売上高のうちHPC(高性能計算向け)が61%を占めた。HPCはAIサーバー向けGPUやアクセラレータ、データセンター向けの高性能プロセッサを含む区分で、今回の成長をけん引した中心領域とみられる。
製造プロセスの内訳でも、最先端需要の厚みが見える。3ナノ品がウェハ売上高の25%、5ナノが36%、7ナノが13%を占め、7ナノ以下の先端品を合計すると74%に達した。スマートフォン向けの回復だけでは説明しにくく、主役はHPCであり、その中でもAI関連需要の寄与が大きいと読める内容だ。
TSMCの特徴は、半導体を自社ブランドで売る企業ではなく、顧客企業の設計を受けて量産を担う受託生産会社である点にある。Apple、NVIDIA、AMD、Broadcomなどの先端半導体を実際に製造する立場にあるため、TSMCの業績は市場で先端半導体需要の先行指標として見られやすい。
熊本第2工場の3ナノ計画は何を意味するのか
日本関連で注目を集めたのが、熊本県の第2工場で3ナノ半導体を2028年に量産する計画だ。この話は4月16日に初めて出たものではない。2月5日にシーシー・ウェイ会長兼CEOが首相官邸で高市早苗首相と面会した際に計画を表明し、3月31日には台湾経済部が第2工場での3ナノ導入計画を承認している。
そのうえで今回の決算は、この計画がTSMCの強い業績と並んで改めて注目された場面でもあった。第2工場はもともと6〜12ナノ級を想定していた経緯があり、3ナノへの引き上げは日本拠点の役割が一段と高度化することを意味する。量産が実現すれば、日本国内で3ナノ品が生産される初のケースとなる見通しだ。
もっとも、2028年量産は現時点では計画段階にある。投資の実行、装置導入、需要の継続が前提であり、現時点で確定した成果として語るのは早い。ただ、日本が成熟工程中心の拠点にとどまるのではなく、先端製造でも一定の存在感を持つ可能性を示した点は大きい。
今回の決算が示すもの
今回の決算をめぐっては、海外メディアがAI需要の継続と通期見通しの引き上げを重視したのに対し、日本では熊本第2工場の3ナノ計画に大きな関心が集まった。視点は異なるが、どちらもTSMCが単なる一社の決算を超えて、AI投資と産業政策の接点にいることを示している。
TSMCの受注が伸びれば、製造装置、先端パッケージ、素材など周辺企業にも需要が波及しやすい。AI向けデータセンター投資が続くのか、日本が先端半導体の生産基盤をどこまで国内に持てるのか。今回の決算は、その二つの論点を同時に浮かび上がらせた。
半導体はもはやスマートフォンやパソコンの部品にとどまらず、AIインフラの土台になっている。その中核を担うTSMCの業績と投資計画は、企業決算であると同時に、各国の産業戦略を映す情報になっている。
(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

