鶏肉はなぜ高い?物価高で進む需要シフトと輸入コスト

節約のために鶏肉を選ぶ動きが広がる一方で、その鶏肉も安いとは言いにくくなっている。農林水産省の「食品価格動向調査(食肉・鶏卵)」によると、2026年3月9日〜11日に調査した全国平均の鶏もも肉小売価格は100グラム151円だった。前月の153円、1月の152円からみると足元で急騰しているわけではないが、平年比では11%高い。

牛肉や豚肉が高止まりするなかで、相対的に手頃な鶏肉へ需要が寄りやすい構図は続いている。ただ、鶏肉の値動きは需要シフトだけでは説明しきれない。国内の卸売価格、輸入コスト、円安、飼料価格の高止まりが重なり、家計の「最後の逃げ場」になりにくくなっている。

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小売価格は急騰ではなく「高止まり」の局面

今回の151円という数字は、3月単月の平均ではなく、3月9日〜11日の調査結果だ。このため「3月に急に跳ね上がった」とみるより、平年を上回る水準が続いているとみるほうが実態に近い。

実際、同じ農水省の調査では、2026年1月は152円、2月は153円だった。月ごとの振れは小さいが、5カ年平均との比較ではなお高い。家計にとっては、鶏肉が値下がりして助かる局面にはまだ入っていない。

卸売ではむね肉の上昇が目立つ

小売より先に動きが見えやすいのが卸売価格だ。農畜産業振興機構(ALIC)の東京市場データでは、2026年2月の国産鶏肉卸売価格は、もも肉が1キログラム844円、むね肉が535円だった。前年同月比では、もも肉が9%高、むね肉が29%高で、特にむね肉の上昇が目立つ。

むね肉はもも肉より安く、家計防衛の局面では選ばれやすい部位でもある。値ごろ感を求める需要が鶏肉のなかでもさらに安い部位へ集まると、価格差があるぶん、むね肉の上昇率が大きくなりやすい。

需要シフトは確かに起きている

農水省の「食肉鶏卵をめぐる情勢」では、令和6年度の鶏肉需要は「節約志向の高まり等により堅調」と整理されている。物価高が続くなかで、牛肉や豚肉より価格を抑えやすい鶏肉へ需要が向かいやすいという見立てだ。

日本の1人あたり食肉消費量をみても、令和6年度は鶏肉が14.9キログラムと最も多く、豚肉13.2キログラム、牛肉5.9キログラムを上回る。鶏肉はすでに日常的な主役であり、節約局面ではその受け皿としての役割がさらに強まる。

ただし、ここで重要なのは「需要が増えたから値上がりした」と単線的に捉えないことだ。鶏肉高は、需要増のほかに供給側のコスト要因が重なって起きている。

輸入コストと円安も価格を支える

日本の鶏肉供給は国内生産だけで完結していない。USDA(米農務省)の在日レポートによると、2025年1〜8月の日本の鶏肉輸入は、タイが約32.4万トン、ブラジルが約26.4万トン、中国が約12.6万トンだった。ブラジルだけに極端に依存しているというより、複数の供給国に支えられている構図だ。

一方で、USDAは2026年の日本市場について、円安や高い飼料価格、バイオセキュリティ対応の負担が国内生産の拡大を抑え、輸入コストの上昇も小売価格に影響しているとみている。輸入品が国内需給を補っていても、円安が続けばその調達コストは下がりにくい。

鶏肉は「比較的安い肉」であっても、飼料やエネルギー、輸送費の影響を受ける。牛肉や豚肉より選びやすいからといって、価格上昇圧力から切り離されるわけではない。

世界の鶏肉高だけでは説明できない

国連食糧農業機関(FAO)によると、2026年3月の食料価格指数は上昇したが、肉類価格指数では豚肉と牛肉が上昇し、鶏肉価格はやや下がった。世界全体で鶏肉相場が一斉に上がり、その波がそのまま日本へ来ているという構図ではない。

日本で鶏肉が高く感じられるのは、国内での需要シフトに加え、円安やコスト高が重なっているためだ。国際市況だけではなく、日本の家計と調達構造の変化が価格に表れているとみるべきだろう。

鶏肉は「安い肉」ではなく「比較的選びやすい肉」へ

今後をみても、鶏肉だけが大きく値下がりする材料はまだ多くない。節約志向が続けば需要は下支えされやすく、円安や飼料価格の高止まりもすぐには解消しにくい。

家計にとっての鶏肉は、かつてのような「安いから安心できる肉」ではなくなりつつある。むしろ、牛肉や豚肉よりは選びやすいが、価格の上振れからは逃れにくい食品になっている。物価高の局面では、その変化を前提に献立や買い方を考える必要が出てきている。

(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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