サントリーが第一三共ヘルスケアを2465億円見込みで段階取得 総合セルフケアへの布石

サントリーホールディングスは2026年4月15日、第一三共(東証プライム・4568)から第一三共ヘルスケアの全株式を段階的に取得すると発表した。取得価額は3回合計で2465億円を見込むが、株式譲渡契約の価格調整条項により最終額は変動する可能性がある。ロキソニンやルルを展開する同社を迎え入れることで、サントリーは健康食品や飲料に加えてOTC医薬品、スキンケアまでを含む総合セルフケア事業の強化を狙う。

table of contents

何が決まったのか

サントリーの発表によると、株式取得は3段階で進む予定だ。2026年6月1日に議決権の30%、2027年6月1日に40%、2029年6月1日に残る30%を取得し、最終的に100%子会社化する計画である。第2段階の完了後には連結子会社となり、第3段階の完了後に完全子会社となる。

もっとも、日程は競争法などの手続き次第で変わる可能性がある。今回の2465億円という数字も3回合計の見込み額で、最終取得価額は価格調整の内容によって上下しうる。

第一三共ヘルスケアはどんな会社か

第一三共ヘルスケアは「ロキソニンS」「ルル」「ミノン」「クリーンデンタル」などで知られる。OTC医薬品が主力だが、事業領域はそれだけではない。サントリーの開示では、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器、食品、飲料水などを手がける会社と整理されている。

2025年3月期の業績は売上高760億4900万円、営業利益129億2200万円だった。ブランド力の高いOTC医薬品に加え、機能性スキンケアやオーラルケアまで持つ点が、この案件の重要な前提になっている。

サントリーが狙う「予防から不調時の対処まで」

サントリーグループは酒類、清涼飲料、健康食品を幅広く展開してきた。健康領域では、サントリーウエルネスの「セサミンEX」「ロコモア」、サントリー食品インターナショナルの特定保健用食品「特茶」「胡麻麦茶」などがある。

今回の買収でサントリーが前面に出しているのが、「予防から不調時の対処まで」をカバーする事業づくりだ。健康食品や機能性表示食品が日常の予防や維持に近い商品群だとすれば、OTC医薬品は体調を崩したときの対処に近い。サントリーは第一三共ヘルスケアのブランド力、商品開発力、マーケティング力を組み合わせることで、消費者ニーズに寄り添った総合セルフケア事業を新たな成長ドライバーに育てたい考えを示している。

第一三共は創薬を主軸とする姿勢を改めて示した

売り手の第一三共は、研究開発、製造、販売を手がける製薬大手で、がん領域を含む創薬事業が中核にある。今回の譲渡によって、OTC医薬品やスキンケアを担う子会社はサントリー側に移る一方、第一三共本体は創薬を主軸とする企業像をより明確にする形になる。

M&Aでは、黒字事業の売却がそのまま事業の弱さを意味するわけではない。今回も、第一三共ヘルスケアの業績は安定しており、サントリーにとっては成長投資、第一三共にとっては事業ポートフォリオの再編として受け止めやすい案件といえる。

OTC医薬品とセルフメディケーションの文脈

OTC医薬品は、医師の処方箋がなくても薬局やドラッグストアで買える一般用医薬品を指す。かぜ薬、鎮痛薬、胃腸薬、目薬などが代表例で、軽い不調に自分で対処するセルフメディケーションの中心にある。

セルフメディケーション税制では、対象となるOTC医薬品の購入額が年間1万2,000円を超えると、通常の医療費控除との選択適用で所得控除を受けられる。高齢化や医療費の増加が続くなか、OTC市場は政策面からも注目されやすい分野である。

飲料大手の健康シフトは続く

健康領域を成長軸に据える動きはサントリーだけではない。キリンホールディングス(東証プライム・2503)も2026年2月、Health Science事業の拡大を長期ビジョンに掲げ、APAC向け統括会社の設立を発表した。酒や清涼飲料だけでなく、健康関連事業の比重を高める流れは国内大手で共通しつつある。

その意味で今回の案件は、サントリー単独の大型買収にとどまらない。飲料大手が「健康」にどこまで踏み込むのかを映す案件としても注目される。

2029年まで続く長期案件になる

サントリーは2027年6月1日予定の第2段階完了後に第一三共ヘルスケアを連結子会社化し、2029年6月1日予定の第3段階完了後に完全子会社化する。食品や飲料、健康食品に強みを持つ企業が、ブランド力のあるOTC医薬品やスキンケアまで取り込むことで、事業ポートフォリオの輪郭は大きく変わる。

今後の焦点は、サントリーが既存の健康食品・飲料事業と、第一三共ヘルスケアのOTC医薬品・スキンケア事業をどう結びつけるかにある。取得スケジュールは2029年まで続くため、この案件は単発の買収発表ではなく、国内飲料大手の事業領域がどこまで広がるかを見ていく材料になりそうだ。

(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

Please share it if you like!

Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

table of contents