米国向け郵便は再開したが送り方は元通りではない

日本郵便は2026年4月14日、いったん停止していた米国向け郵便物の引き受けを再開した。ただし、今回の再開は単純な「元通り」ではない。米国側の通関ルールが変わり、日本郵便がその新ルールに対応できる体制を整えたことで、ようやく再開にこぎつけたというのが実態だ。

利用者にとって重要なのは、荷物の内容や価格によって、これまで不要だった事前手続きが必要になったことだ。特に、関税を事前に支払うかどうか、どの郵便局から差し出せるかは、内容品の条件で扱いが分かれる。

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なぜ引き受け停止が起きていたのか

発端は、米国の少額輸入免税制度「de minimis(デミニミス)」の見直しだった。これは一定金額以下の輸入品について、関税や通関手続きを簡略化する仕組みで、米国では1938年に制度化され、2016年に基準額が800ドルへ引き上げられた。

しかし近年は越境ECの拡大で小口貨物が急増した。米国税関・国境警備局(CBP)の統計では、2024会計年度の de minimis 貨物は13.6億件に達している。1日平均に直すと約380万件で、少額貨物をどう管理するかが米国側の大きな政策課題になっていた。

こうした流れの中で、米国政府は2025年7月30日、国際郵便物で米国が輸入する消費用物品の免税措置を同年8月29日から停止する大統領令を公表した。これを受け、日本郵便は同年8月27日から、内容品価格が100USドルを超える個人間の贈答品や販売品を含む米国宛て郵便物の引き受けを一時停止していた。

その後、CBPは「米国宛ての国際郵便物は、米国内に到着する前に、CBPが認証した認証事業者(Qualified Party)を通じて関税などを支払う必要がある」とするルールを示した。日本郵便の今回の再開は、この新ルールへの対応が整ったことを意味する。

再開後に何が変わるのか

再開後の実務で最も重要なのは、すべての荷物が同じ扱いではない点だ。日本郵便の案内に沿って整理すると、差し出し条件は次の3区分に分かれる。

100USドル以下で従来どおり送れるもの

書状、はがき、印刷物、EMSの書類、そして100USドル以下の個人間贈答品は、これまでどおり免税扱いだ。関税の事前支払い登録は不要で、国際郵便を扱う通常の郵便局から差し出せる。

事前支払いとDDP表示が必要になるもの

100USドル以下でも、個人間贈答品や書類以外の物品は扱いが変わる。加えて、100USドルを超え800USドル以下の郵便物は、内容品の種別を問わず、指定郵便局から差し出さなければならない。この場合は、CBPが認証した事業者のアプリを使って関税などを事前に支払い、宛名ラベルに「DDP」と表示する必要がある。

DDPは、関税や輸入時の費用を差出人側で事前に負担したことを示す表記だ。受取人が現地で追加請求を受けにくくなる一方で、差出人側の手間は明らかに増える。

800USドルを超える郵便物は例外がある

800USドルを超える郵便物も指定郵便局で差し出す必要があるが、この区分では関税の事前支払いもDDP表示も不要だ。ここは誤解しやすい点で、単純に「高額品ほど事前対応が増える」というルールではない。

利用者が実際にやること

日本郵便が案内している事前支払い方法は、Zonos社の「Zonos Prepay」アプリを使う形だ。現時点で、日本郵便が推奨する認定事業者はZonos社のみで、アプリ利用時には同社所定の利用料金もかかる。しかも、差し出しは全国どこの郵便局でもよいわけではなく、対象条件に当たる荷物は指定郵便局に持ち込まなければならない。

つまり今回の再開は、「送れなかったものが送れるようになった」一方で、「送り方は以前より複雑になった」という変化でもある。

背景にあるのは米国側の通関厳格化だ

今回の制度変更は、日本郵便だけの問題ではない。背景にあるのは、米国が少額貨物の急増を受けて、税関執行や国境管理を強めていることだ。de minimis は本来、小口貨物を円滑に通すための制度だったが、取扱件数が膨張したことで、旧来の運用では対応しきれなくなったとみられる。

その意味で、日本郵便の再開は「元に戻った」出来事ではなく、「新しい通関体制に合わせて再開した」出来事と捉えるべきだ。海外向け発送の現場では、今後も利用者の手間やコストがじわじわ増える可能性がある。

今後の注目点

今後の注目点は3つある。1つ目は、個人発送や越境ECの差出人にとって、事前支払いと指定郵便局対応の負担がどこまで定着するか。2つ目は、利用料金や通関対応の追加で、発送コストがどこまで上がるか。3つ目は、米国の通関ルールが今後さらに広がるのか、それとも今回の枠組みで落ち着くのかという点だ。

なお、日本郵便の親会社は日本郵政(6178)で、東証プライム市場に上場している。日本郵便株式会社自体は非上場だ。

(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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