原油は少なくとも年内確保へ それでも残るホルムズ依存という日本の急所

政府は、イラン情勢を受けてホルムズ海峡を原油タンカーが事実上通れない状況が続くなかでも、日本全体として必要な石油の量は確保できるとの姿勢を崩していない。高市首相は2026年4月4日に自身のXで、石油備蓄と代替調達により「日本全体として必要となる量」は確保されていると強調した。FNNの4月5日報道によれば、その射程は少なくとも2026年内に必要な量という説明だ。

量の確保という点では、確かに日本は直ちに行き詰まる状況にはない。ただし、それは日本のエネルギー安全保障が強いという意味ではない。むしろ今回の危機は、備蓄と迂回ルートで当面をしのげても、原油調達の構造そのものは依然としてホルムズ海峡に強く縛られているという現実をあらためて浮き彫りにしている。


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政府が確保しているのは「当面の量」だ

政府の説明はここ数週間でかなり明確になっている。経済産業省は3月16日、民間備蓄義務量を70日分から55日分へ15日分引き下げるとともに、国家備蓄石油を当面1か月分放出する方針を決めた。さらに3月24日には、国家備蓄原油約850万klを3月26日以降に11基地から順次放出すると正式に公表している。

4月3日の赤沢亮正経済産業相の会見でも、原油やナフサを含む石油製品について、備蓄放出と代替調達により「日本全体として必要となる量」を確保していると説明された。首相の4月4日の発信も、この政府方針を改めて確認したものとみてよい。

ただ、ここで押さえておくべきなのは、政府が繰り返しているのはあくまで「必要量は確保している」という表現だということだ。もともとの草稿にあったような「2027年の年明けまで確保」という言い回しよりも、現時点では「少なくとも年内」と理解するほうが正確である。


備蓄の厚みはあるが、無限ではない

日本の石油備蓄は、国家備蓄、民間備蓄、産油国共同備蓄の三本立てだ。資源エネルギー庁の速報によると、2026年3月16日時点の備蓄日数は国家146日分、民間89日分、産油国共同6日分の合計241日分だった。首相が4月4日に言及した「約8か月分の石油備蓄」は、この水準とおおむね整合する。

この備蓄は、危機時に供給をつなぐためのクッションとしては非常に大きい。実際、政府は3月16日に民間備蓄義務量を一時的に引き下げ、3月24日には国家備蓄原油約850万klの放出も決めた。短期的な供給不安を抑え込むうえで、こうした措置は大きな意味を持つ。

しかし、備蓄はあくまで橋渡しの手段であって、構造問題の解決策ではない。放出が続けば残量は減る。危機が長引けば、どこかで「次にどう調達するか」という問題に戻ってくる。


なぜホルムズ海峡が止まると日本は揺れるのか

ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ世界有数のエネルギー輸送の要衝だ。IEAによると、最も狭い部分の幅は54kmしかなく、2025年には原油と石油製品あわせて日量約2000万バレルがこの海峡を通過した。世界の海上石油貿易のおよそ4分の1が、ここに集中している計算になる。

日本がこの海上の要衝の影響を受けやすいのは、中東依存度の高さのためだ。資源エネルギー庁によれば、2023年度の日本の原油輸入に占める中東依存度は94.7%だった。原油の大半を中東に頼る以上、ホルムズ海峡の機能不全はそのまま日本のエネルギー安全保障の問題になる。

今回の局面で政府が慌ただしく備蓄放出と代替調達を進めているのは、まさにこの依存構造があるからだ。


迂回ルートはあっても、依存構造までは変えられない

政府は現在、米国、中央アジア、中南米などからの代替調達を進めている。高市首相も4月4日の発信で、ホルムズ海峡を通らない調達先としてこうした地域を挙げた。短期的な穴埋めとしては重要な対応だ。

ただし、ここで見落としてはならないのは、ホルムズ海峡を通らないルートがあっても、それだけで日本の脆弱性が解消するわけではないという点だ。IEAによれば、サウジアラビアの紅海側パイプラインやUAEからフジャイラ港に出すルートなど、ホルムズ海峡を回避できる代替能力は日量350万〜550万バレル程度にとどまる。ホルムズ海峡全体を通る日量約2000万バレルと比べれば、完全な代替にはほど遠い。

しかも、迂回できたとしても、それは積み出し港を変える話に近い。中東産原油そのものへの依存が大きく下がるわけではない。今回の危機が示したのは、日本に必要なのが単なる「ルートの付け替え」だけではなく、調達地域そのものの分散だということだ。


問題は総量だけでなく、国内の目詰まりとコストにもある

もう一つ重要なのは、政府自身が4月3日の時点で、足元では「供給の偏りや流通の目詰まり」が生じていると認めていることだ。全国ベースで量が足りていても、必要な場所に必要な油種や製品が届かなければ、現場では不足に近い事態が起きる。

これは、エネルギー問題が単なる総量計算では済まないことを意味する。輸送距離が延びれば、タンカーの手配、海上保険、物流費などの負担は重くなりやすい。原油価格の上昇が続けば、ガソリン、電力、物流、化学品など幅広い分野にコスト高として波及する。量が足りることと、価格が安定することは別の話である。


問われているのは危機対応より、その先の設計図だ

備蓄放出と代替調達によって、日本は当面の供給をつなぐことができる。その点では、政府対応は一定の効果を上げていると言っていい。

だが、本当の論点はその先にある。危機のたびに備蓄を放出し、迂回ルートを探すだけでは、日本のエネルギー安全保障は根本的には強くならない。必要なのは、輸入先の分散、国内サプライチェーンの詰まりを早く検知して動かす仕組み、そして価格高騰への耐性を高める平時からの設計だ。

ホルムズ海峡の封鎖が照らし出したのは、石油が「足りるかどうか」だけではない。日本が、なお一つの海峡にここまで大きく運命を左右される構造を残していることこそ、今回あらためて直視すべき急所である。


本稿は経済産業省、資源エネルギー庁、IEAなどの公表資料と2026年4月5日時点の報道をもとに作成しました。

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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