日米首脳会談の焦点——ホルムズ海峡支援か経済成果か、トランプ氏が日本に求めるもの

日本時間の2026年3月20日未明、ホワイトハウスで高市総理大臣とトランプ大統領が会談する予定だ。もともと対中国戦略や経済協力の確認が主な目的だったはずが、イランへの軍事作戦と中東情勢の緊迫化によって会談の色彩は大きく変わった。「日本はホルムズ海峡の安全確保に協力すべきだ」——トランプ大統領がそう発言する一方で「支援は必要ない」とも述べるなど、その言動は直前まで揺れ続けた。結局、トランプ政権は日本に何を期待しているのか。会談直前の構図を読み解く。


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なぜホルムズ海峡が突然、日米会談の議題に浮上したのか

ホルムズ海峡とは、ペルシャ湾(中東の主要産油国が面している湾)と外洋を結ぶ幅の狭い海路のことだ。世界の海上原油輸送の約2割がこの海峡を通過しており、ここが閉鎖されると原油価格は一気に上昇し、資源を輸入に頼る国々に大きな影響が及ぶ。

現在、アメリカはイランへの軍事作戦を継続しており、その影響でホルムズ海峡は通航に大きな支障が生じている。機雷(海中に仕掛ける爆発物)の敷設報道もあり、多くのタンカーが通過できない状況だ。

日本はこの海峡への依存度が特に高い。原油輸入の大半を中東に依存しており、ホルムズ海峡が長期間ふさがれれば、エネルギー供給や物価に直接の影響が出る。トランプ大統領もこの点を会談前から繰り返し指摘していた。


「支援せよ」から「不要だ」へ——揺れ続けたトランプ氏の発言

会談の数日前、トランプ大統領の発言は目立った変化を見せた。

3月16日には「日本は95%、中国は90%が中東原油に依存している。こうした国々に支援に加わってほしい」と述べ、日本を含む同盟国に艦船の派遣を明示的に求めた。さらに「彼らはわれわれに感謝するだけでなく、われわれを支援すべきだ」とも語った。

ところが翌17日、SNSへの投稿でトランプ大統領は一転して「日本もオーストラリアも韓国も同様だ。われわれは誰の助けも必要としていない!」と書き込んだ。NATOが関与を望まない意向を示したことへの苛立ちが背景にあるとみられる。

ただ、専門家の多くはこの「不要だ」という発言を額面通りに受け取っていない。トランプ政権1期目で安全保障政策を担当したシンクタンク研究員のリサ・カーティス氏は「支援を得ることが難しいと認識し始めているのかもしれないが、大統領は代わりに何らかの”成果”を期待するはずだ」と指摘した。こうした発言の変化を見ても、日本に何らかの具体的な協力や成果を求める姿勢自体は大きく変わっていないとみられる、という見立てだ。


日本が簡単に艦船を出せない理由

トランプ大統領が求めた「艦船の派遣」や「掃海艇(機雷を除去する船)の派遣」は、日本にとって容易な判断ではない。

日本は過去に海賊対処を目的にソマリア沖へ自衛隊を派遣した実績がある。しかし今回の場合、軍事作戦が進行中の海域での護衛や掃海は、性格がまったく異なる。憲法の解釈、安全保障関連法の要件、国会の承認、国内世論——複数のハードルが重なる。

高市総理大臣は会談前の時点で「現時点で護衛任務のための派遣計画はない」と慎重な姿勢を示していた。この制約は、日本側がどれだけ同盟を重視しても、一朝一夕に変えられるものではない。


もう一つの焦点——経済安保と80兆円投資

仮に軍事面での直接協力が難しければ、トランプ政権が期待する「代替の成果」として浮上するのが経済分野だ。

去年の日米合意に基づき、日本はアメリカ国内に5500億ドル(約80兆円)規模の投資を行うことが決まっている。今回の会談では、その進捗を確認するとともに、第2弾の具体的なプロジェクト発表が期待されていた。候補として挙げられているのは、天然ガスや原子力発電所の建設、AI・データセンター、重要鉱物の共同開発などだ。

重要鉱物とは、スマートフォンやEV(電気自動車)、軍事技術に欠かせないレアアースなどの資源を指す。現状では中国がサプライチェーン全体で圧倒的なシェアを握っており、日米両国はこの依存を減らすことを共通課題としている。

元アメリカ商務省副長官のブルース・アンドリュース氏は「今回の合意は日米にとって利益となる追加プロジェクトの機会を生み出す。双方の企業に利益をもたらすことが重要だ」と述べ、AIやエネルギー分野での協力拡大に期待感を示した。


安全保障・経済安保・対中戦略の三つが重なる会談

今回の会談は、ホルムズ海峡をめぐる当面の安全保障協力だけでなく、経済安保や対中戦略まで重なる多層的な場として見ると読みやすい。

当面の焦点はホルムズ海峡をめぐる安全保障協力だ。トランプ大統領が日本側から何を持ち帰ろうとするかが注目される。

それと並行して、対米投資・重要鉱物・エネルギー・先端技術協力という経済安保の束が重要な争点になる。軍事面での協力に限界があるなら、経済面での「目に見える成果」をどこまで積み上げられるかが鍵だ。

さらにその奥には、対中国戦略とインド太平洋の安定という大きな文脈がある。アメリカが中東に戦力を集中するなかで、インド太平洋地域への関与が薄れることを中国が利用し、台湾海峡や南シナ海で挑発的な行動をとるリスクを指摘する専門家もいる。日米同盟の強化がここに直結するという認識が、会談の底流にある。


まとめ——「何かを持ち帰らせたい」という一点で一貫している

トランプ大統領の発言は直前まで揺れたが、専門家の見立てを総合すると、「日本から何らかの形で成果を持ち帰りたい」という意図は一貫しているとみられる。

艦船の派遣が難しければ経済協力で、経済協力でも足りなければ別の形で——そうした交渉の構図が、この会談に通底している。日本側にとっては、制約の多い安全保障と、成果を示しやすい経済分野のバランスをどう取るかが、最大の課題と言えそうだ。

(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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