住宅ローンの「5年ルール」「125%ルール」は本当に有利か?仕組みとリスクを正しく理解する

2024年3月、日本銀行はマイナス金利政策を解除した。それ以降、住宅ローンの変動金利を巡る環境は、低金利一辺倒ではなくなった。「毎月の返済額がいきなり増えるのでは?」と不安を抱えている人も少なくないだろう。

そんな不安をやわらげるものとして、よく語られるのが「5年ルール」と「125%ルール」だ。これらが適用されていれば、金利が多少上がっても毎月の支払い額はすぐには変わらない。

ただし、「あるから有利」「ないから不利」と単純に決まるものではない。この2つのルールは、家計の急変を避けたいか、将来への負担の繰り延べを避けたいか、どちらを優先するかで評価が変わってくる。まずは仕組みとリスクを正確に理解した上で、自分のローンと向き合ってほしい。


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「金利の見直し」と「返済額の見直し」は別のしくみ

変動金利型住宅ローンを選んでいると、「金利が上がった」というニュースを目にするたびに、毎月の返済額がすぐ変わるのではと気になる人も多いだろう。しかし、「金利の見直し」と「毎月返済額の見直し」は、別のしくみだ。

多くの金融機関では、適用金利は年2回のタイミングで見直される。ただし、その基準日は金融機関ごとに異なる。4月・10月に見直す金融機関もあれば、5月・11月に設定しているところもある。

一方、後述する5年ルールを採用している商品では、毎月の返済額が実際に変わるのは5年に1度の見直し時だ。つまり、「金利が上がった=すぐ毎月返済額が上がる」とは限らない。

このしくみのメリットは、家計への急な影響を抑えられることだ。ただしその分、金利変動を「実感しにくい」という面もある。契約している商品の見直しルールは、銀行から届く通知や商品概要説明書で確認しておくと確実だ。


「5年ルール」「125%ルール」とは何か

変動金利・元利均等返済型住宅ローンの多くで、毎月返済額の急変を抑える2つのしくみが採用されてきた。

5年ルールとは、金利が見直されても、毎月の返済額を5年間は変えないという考え方だ。金利が上昇してもすぐに家計への影響が出ないよう、いわば「緩衝材」の役割を果たす。

125%ルールは、5年ごとの返済額見直しのタイミングで、新しい返済額が前回の1.25倍(125%)を超えないよう上限を設けるしくみだ。

ただし、これらは法律で一律に定められた制度ではなく、各金融機関の商品設計によって運用されている。すべての変動金利型住宅ローンに共通するわけではない。また、この2つのルールが適用されるのは、「変動金利型×元利均等返済」の場合が基本となる。


元利均等返済とは?

住宅ローンの返済方式には、大きく2種類ある。

  • 元利均等返済:毎月の返済額(元金+利息)が一定になるよう設計されている方式。家計管理はしやすいが、返済当初は利息の割合が高く、元金の減りは緩やかになりやすい。
  • 元金均等返済:毎月一定額の元金を返していく方式。元金の減りは早いが、当初の返済額が重くなりやすい。

5年ルール・125%ルールの話は、通常「元利均等返済」を前提にしている。元金均等返済では、これらのルールの対象外になるのが一般的だ。


「安心」の代わりに生まれるリスク

5年ルールがあれば、金利が上がっても毎月の支払いは変わらない。これは確かに一定の安心感をもたらす。しかし、この「据え置き」には見えないコストがある。

毎月の返済額は、「元金を返す部分」と「利息を払う部分」に分かれている。金利が上がると、利息として払う部分が増え、元金を返す部分が相対的に減っていく。言い換えれば、借金の残りが思ったほど減っていかない状態になる。

毎月の支払い額は変わらないため、この内訳の変化には気づきにくい。金融機関から届く通知(適用金利のお知らせや返済予定表など)を定期的に確認し、元金残高が想定どおりのペースで減っているかどうかを把握しておくことが大切だ。

金利の上昇幅が大きいと、毎月の返済額の中で利息さえ払い切れないケースも起こりうる。これが未払利息だ。払えなかった利息は消えるのではなく、金融機関によって取扱いは異なるが、最終回返済額に加算される場合がある。


「125%ルール」は返済額の増加に上限をかけるしくみ

「125%ルール」という言葉から、「総返済額が125%以内に収まる」「金利の上昇が125%以内に抑えられる」と誤解されることがある。しかし、どちらも正確ではない。

125%ルールは、5年ごとの返済額見直し時に「新しい返済額が前回の1.25倍を超えない」よう上限をかけるしくみだ。毎月の返済額が急激に跳ね上がることを防ぐのが目的であり、負担が消えるわけでも、総返済額が限定されるわけでもない。

金利の上昇幅が大きい場合、返済額を125%の上限内に抑えた結果として、その月の利息分を払いきれないことがある。この差分が未払利息として積み上がり、最終回返済額に加算されるケースもある。125%ルールは「負担の急増を和らげる」しくみだが、負担そのものをなくすしくみではない。

つまり、5年ルール・125%ルールは「金利上昇のリスクを消す仕組み」ではなく、「返済額の急変を後ろに先送りする仕組み」と理解した方が正確だ。


「ルールなし」も一概に不利ではない

一部の金融機関では、5年ルール・125%ルールを採用しない商品もある。そのような商品では、金利が上がれば毎月の返済額もすぐに増える。

「それは不利では?」と感じるかもしれないが、そうとも限らない。返済額がすぐ変わる分、「金利が上がった」という事実が家計にすぐ届く。これは、早めに節約や繰り上げ返済などの対策を考えるきっかけにもなる。また、元金返済の遅れが積み上がりにくく、将来の返済額への繰り延べが起きにくい面もある。

「ルールあり=安心・有利、ルールなし=不便・不利」ではなく、目先の安定を取るか、将来へのしわ寄せを避けるか、というリスクの出方の違いと考えるのが適切だ。どちらが合っているかは、家計の耐久力や返済計画によって異なる。


金利上昇への対応策

では、実際に金利が上昇した局面で、どのような対策がありうるか。

繰り上げ返済

元金を減らすことで、金利上昇時の利息負担を軽減できる。残債が多い時期ほど、繰り上げ返済の効果は大きい。ただし、万が一の備えとして、おおむね6カ月分程度の生活費は手元に残しておくことが望ましい。

借り換え

他の金融機関のローンに乗り換えることで、金利や条件を改善できる場合がある。「残高1,000万円以上・残存期間10年以上・金利差1%以上」がよく目安として挙げられるが、これは一般論にすぎない。近年は諸費用や団信条件、金利差が小さい場合でも効果が出るケースもあるため、個別に試算して総合的に判断することが大切だ。


Summary

金利上昇への対応に「一律の正解」はない。残っているローンの年数、家計の状況、今後のライフプランによって、最適な判断は人それぞれだ。「5年ルールがあるから大丈夫」「ないから不利」という思い込みを一度外し、まず自分のローンの中身を確認するところから始めてほしい。


自分の住宅ローンで確認したいこと

  • 適用金利の見直しタイミング:年2回の見直しはいつか(4月・10月型か、5月・11月型かなど、契約先の金融機関に確認する)
  • 返済額の見直しタイミング:5年ルールの有無と、次の見直し時期はいつか
  • 現在の元金残高:直近の返済予定表や通知で、元金がどのくらい残っているかを確認する
  • 未払利息の有無:金融機関の通知・明細に「未払利息」の記載がないかを確認する
  • 繰り上げ返済・借り換えの条件:手数料の有無や、借り換えの際の諸費用を事前に調べておく

(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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