Full explanation of pension reform to be promoted from 2026 ~ 2028 - from the removal of the 1.06 million yen barrier to the extension of the iDeCo enrollment age

はじめに

FPTRENDYでは先日、「知らないと損する『106万円の壁』廃止──メリット・デメリットと今後の選択肢」という記事で、短時間労働者を中心に注目を集めている「年収106万円の壁」の撤廃について詳しく解説しました。今回の記事では、その106万円の話題を踏まえつつ、それ以外に今回の年金制度改革関連法案で盛り込まれている、より幅広い見直しポイントにスポットを当てます。

日本は少子高齢化が急速に進む一方で、働き手の多様化や高齢者の就労意欲の高まりにも対応していく必要があります。そこで、今回の改革では以下のような6つの主要分野で制度の枠組みが見直されます。

  1. 個人事業所の厚生年金適用拡大
    従来は法人のみが対象だった仕組みを、一定規模の個人事業所にも広げ、事業主の負担を国がサポートする手厚い導入策を講じます。
  2. 標準報酬月額の上限引き上げ
    収入の多い加入者からの保険料を段階的に増やし、将来の年金財源を強化するため、現行65万円の上限を75万円まで引き上げます。
  3. 在職老齢年金の減額基準引き上げ
    65歳以上で働き続ける人が一定収入を得ても年金を減らされにくくするため、減額開始ラインを現行より大きく引き上げます。
  4. 遺族厚生年金の男女差解消
    配偶者を亡くしたときに受け取る遺族年金の受給期間を、性別にかかわらず同等に整備し、共働き世帯の増加に対応します。
  5. 子への加算見直し
    18歳以下の子どもを育てる世帯への年金加算額を一律で引き上げ、扶養配偶者加給年金とのバランスも見直します。
  6. iDeCo加入年齢の延長
    個人型確定拠出年金(iDeCo)の加入可能年齢を65歳未満から70歳未満に引き上げ、長寿時代の自助努力を後押しします。

これらの改革は、短時間労働者から高齢者、子育て世帯にいたるまで、多様な働き手の暮らしと働き方を支える狙いがあります。本稿では各項目ごとに「なぜ見直す必要があるのか」「具体的に何が変わるのか」「読者自身や事業主にどんな影響があるのか」を丁寧に解説し、制度改正の全体像をつかむ手助けをします。改革の波はまさに今まさに押し寄せています。この記事を読んで、あなた自身の働き方や将来設計を見直すヒントにしてください。


1. 個人事業所の厚生年金適用拡大

背景
これまで厚生年金の適用対象は、従業員が5人以上いる法人事業所に限られていました。個人事業主が営む小規模な店舗や工房では、働く従業員に厚生年金を適用できず、個人事業主自身も国民年金のみの加入にとどまっていたため、将来の年金給付水準に不安を抱えるケースが散見されました。今後はこうした格差を解消し、事業規模の大小にかかわらず働く人全員の年金保障を底上げすることが狙いです。

改正ポイント

  • 新規開設事業所の義務化(2029年10月~)
    2029年10月以降に新たに開設される個人事業所は、業種を問わずすべて厚生年金への加入が義務づけられます。飲食店や美容院、オンラインショップ運営など、これまで対象外だった多様な業種が一律に適用対象となります。
  • 既存事業所の移行措置
    すでに営業中の個人事業所については、当面は従業員と事業主ともに「任意加入」の扱いとします。加入を強制せず、まずは自発的な申し出によって制度を利用できる仕組みにすることで、事業主と従業員に準備期間を与え、円滑な移行を後押しします。
  • 短時間労働者の保険料支援
    個人事業所で働くパートタイマーやアルバイトなど短時間労働者にかかる厚生年金保険料については、導入から3年間、事業主負担分を国が全額負担します。これにより事業主の金銭的負担を抑えつつ、新制度への移行をスムーズに進めることが可能です。

働き手・事業主への影響

  • 働き手側
    小規模店舗でも厚生年金に加入できるようになるため、将来の年金額が増える期待があります。特に非正規雇用の従業員にとっては、これまで手薄だった老後の保障が大きく改善されます。
  • 事業主側
    初期導入期の3年間は保険料負担の心配が不要になる一方、4年目以降は自己負担が発生します。売上や人件費を見据えた長期的な資金計画の見直しが求められます。また、任意加入期間中に社員や自身の加入を検討し、どのタイミングで加入申請を行うかを判断する必要があります。

個人事業所への厚生年金適用拡大は、働き手・事業主双方の将来設計に大きな影響を与える一方、十分な準備と理解があれば、新しい保障制度として大きなメリットを享受できる改革です。


2. 標準報酬月額の上限引き上げ

背景
少子高齢化が進む中、現役世代からの保険料収入を確保し、将来の年金給付水準を維持・安定化させることが急務となっています。特に収入の高い加入者ほど多くの保険料を負担してもらうことで、年金財政の財源を強化し、世代間の負担を公平化する狙いがあります。

改正ポイント

  • 上限引き上げの対象
    現在、厚生年金の保険料算定基礎となる「標準報酬月額」の上限は65万円ですが、2027年9月以降から段階的に75万円へと引き上げられます。
  • 引き上げスケジュール
    2027年9月:上限を70万円に引き上げ
    2029年9月:最終的に75万円へ改定
  • 保険料の増額目安
    上限額が増えることで、給与が高額な層の場合、月々の保険料負担は最大で約9,000円程度増加すると見込まれています。

影響分析

  • 高所得者の負担増
    年収ベースで約780万円以上の層は、保険料上限の引き上げに伴い、現行以上の拠出が必要になります。具体的には、月収75万円相当まで保険料が課されるため、標準報酬65万円時点と比較して自己負担・事業主負担ともに上乗せ分が発生します。
  • 企業の負担感
    従業員の保険料は本人と企業が折半で負担するため、企業側にも同額のコスト増が及びます。大手企業や高収入社員を多く抱える業種では、賃金・人件費の見直しや福利厚生費としての再検討が求められる可能性があります。
  • 年金給付への波及
    追加的に集まる保険料収入は、将来の年金給付増加や給付水準の保全に充てられる見込みです。高所得者からの拠出増が年金制度全体の財源を支えることで、長期的には受給者全体の給付安定につながる効果が期待されます。
  • 中長期の制度バランス
    負担増と給付改善のバランスをいかに維持するかが今後の焦点です。政府・年金機構は、保険料率や給付水準の見直しを定期的に行い、財政健全化と世代間の公平性確保を同時に図る必要があります。

3. 在職老齢年金の減額基準引き上げ

背景
65歳以上でも働き続けたい高齢者が増えるなか、一定の収入を得ることで年金が一律に減額される仕組みは、就労意欲をそぐ要因となってきました。現行制度では、65歳以上の被用者年金受給者が年間で一定額を超える給与所得や公的年金等を得ると、超過分に応じて年金支給が停止・減額されます。この「在職老齢年金」の調整基準を見直し、働き手としての高齢者を支援する必要があります。

改正ポイント

  • 減額・支給停止が始まる調整基準額を、現行の年間約52万円程度から、年間62万円相当に引き上げる方向で検討。
  • 2026年4月の制度改正と同時に実施を目指す見込み。
  • 対象者は65歳以上で厚生年金と在職老齢年金を併給している現役就労者全般。

影響分析

  • シニア世代の就労環境改善
    引き上げ後は、年金を減らされずにより多くの給与収入を得られる余地が広がるため、高齢者の就労意欲が向上しやすくなります。特に定年退職後もパートや再雇用で働く人にとっては、60万円近い給与までは年金に影響がないことで、収入の安定感が大きく増します。
  • 制度運用の注意点
    支給停止ラインが変更されることで、企業人事や年金事務所の運用・案内が一時的に混乱する恐れがあります。加入者自身も「いつどのくらい働くと年金が減るのか」を改めて確認する必要があり、制度変更後の周知・説明を徹底することが重要です。
  • 財政面のバランス
    調整基準を引き上げることで一部年金支給が維持され、保険料財源として充てられる額は減少します。将来の年金財政に与える影響を見極めつつ、給付と支える現役世代の負担のバランスを保つため、今後も定期的な見直しが求められます。

4. 遺族厚生年金の男女差解消

背景
共働き世帯が増加する中で、配偶者を亡くした際の支給条件に男女差がある現行制度は不均衡とされてきました。現在、女性の場合は夫の死亡時に30歳未満でも5年間の受給権が認められますが、男性の場合は妻の死亡時に55歳未満ではそもそも受給資格がありません。この性別による格差を是正し、すべての遺族に公平な支援を提供することが求められています。

改正ポイント

  • 受給期間の統一
    2028年4月から20年かけて段階的に移行し、最終的に配偶者を亡くした男女とも原則5年間の受給期間とします。これにより、年齢や性別にかかわらず同じ期間、遺族厚生年金を受け取れるようになります。
  • 延長措置の明文化
    受給者の収入が一定水準以下など、経済的配慮が必要な場合は、原則の5年を超えて最長65歳まで継続して受給できる仕組みを法律上に明記します。これにより、受給者の生活安定性をより確実に支援します。

影響分析

  • 男女の受給機会均等化
    性別による受給資格の差が解消されることで、男性遺族にも女性と同等のセーフティネットが提供されます。これにより、共働き世帯のリスク分散が強化され、遺族となった後の生活保障が向上します。
  • 長期的移行スケジュールの意義
    20年という長期的な移行期間を設けることで、制度変更による事務手続きや個人の生活設計への影響を緩和します。移行期にある世代は、段階的に新要件へ適応しながら将来設計を調整する時間を確保できます。
  • 運用上の留意点
    長い移行期間中は旧制度と新制度が併存し、どのタイミングでどの条件が適用されるか分かりにくくなるリスクがあります。行政や企業、人事担当者による丁寧な周知と案内が欠かせません。

遺族厚生年金の男女差解消は、家族構成の変化やジェンダー平等の潮流を反映した改正です。公平な支援を実現する一方で、移行期間と運用面での丁寧な対応が今後のカギとなります。


5. 子への加算の見直し

年金受給者が扶養する子どもへの加算制度は、これまで「第1子・第2子は年額234,800円」「第3子以降は年額78,300円」と、子どもの数によって加算額に大きな差がありました。子育て世帯、とりわけ3人以上のお子さんを抱える家庭では、この違いが家計に大きく響き、支援の不公平感が指摘されてきました。

そこで、2028年4月からは次のように見直しが行われます。

  • 加算額の一律化・引き上げ
    子ども1人につき年額281,700円を支給。第1子も第3子も同額になるため、人数にかかわらず均等な支援が受けられます。
  • 配偶者加給年金の調整
    65歳未満の扶養配偶者がいる老齢厚生年金受給者向けに支給される「配偶者加給年金」は、年額408,100円から367,200円に引き下げます。子ども向け加算の拡充と合わせて、世帯全体のバランスを図ります。

この見直しにより…

  • 第3子以降を育てる家庭
    加算額が一気に増えることで、教育費や保育料など、子ども関連費用のピーク時にも安定した収入見込みが立てやすくなります。
  • 複数子育て世帯全体
    すべての子どもに同額が支給されるため、「何人育てても同じ支援」の安心感が生まれ、家計設計の透明性が向上します。
  • 扶養配偶者がいる世帯
    配偶者分の年金はやや減るものの、子ども向け加算増額分でカバーされる世帯も多いでしょう。ただし、配偶者加給の減少分と子ども加算の増加分を合わせた家計シミュレーションが不可欠です。

今後は、この加算一律化が子育て世帯の生活安定にどれほど貢献するか、また配偶者分の調整との相乗効果や行き過ぎた負担増がないかを実際の受給者データをもとに見極めることが重要です。制度変更のタイミングでしっかり準備し、新旧の加算額を比較して受給手続きを進めましょう。


6. iDeCo加入年齢の延長

背景
人生100年時代を迎え、定年後も長く働き続ける人が増える一方、老後資産を築く期間が限られているとの指摘があります。個人型確定拠出年金(iDeCo)は掛金に対する税制優遇が大きく、自助努力による資産形成手段として注目されてきました。しかし現行の加入上限年齢が「65歳未満」に設定されているため、定年後に再雇用や新たな就業形態で働く高齢者は、その優遇を活かしにくい問題がありました。

改正ポイント

  • 法律公布から3年以内に、iDeCoの加入年齢上限を「70歳未満」へ引き上げ。
  • これにより、65歳を超えて勤務を続ける人も、最長で69歳まで掛金の拠出と税制優遇の恩恵を受けられるようになります。

影響分析

  • 税制優遇の拡充
    拠出額全額が所得控除対象となるiDeCoのメリットを、長期間享受できるため、老後までの資産増加ポテンシャルが高まります。特に60代後半に入ってからも働き続ける人は、退職金や年金の受給開始と並行して追加の積立が可能となり、税負担の軽減効果が大きくなります。
  • 高齢期の資産形成機会増大
    定年延長や再雇用制度の普及を背景に、70歳近くまで働くケースも増えており、加入年齢の延長は現実的な対応です。働きながら積み増した資産は、75歳以降の公的給付期間を補填する役割を果たし、安心して長寿社会を迎える支えになります。
  • 運用・給付の見直しへの展開
    加入期間の延長に伴い、運用商品の品ぞろえや給付開始時の手続きなど、iDeCo全体の仕組みの再検討が必要です。金融機関や制度管理者は、高齢加入者向けの運用オプションや説明サポートの強化を図ることが求められます。

まとめと読者へのメッセージ

今回ご紹介した年金制度改革は、「106万円の壁」の撤廃にとどまらず、個人事業所への適用拡大、標準報酬月額の上限引き上げ、在職老齢年金の減額基準引き上げ、遺族厚生年金の男女差是正、子どもへの加算見直し、iDeCo加入年齢の延長と、多岐にわたる改正が一気に進行中です。これらはそれぞれ異なる受給者層に向けた措置であり、働き方やライフステージに応じて適用時期や影響が変わります。

各制度変更のタイミングや要件をしっかりと把握し、ご自身の就労計画や家計・資産形成プランを今一度見直すきっかけにしてください。特に、保険料負担の増減や給付額の変化は、長期的な家計に大きな影響を及ぼします。改正の詳細な施行期日や運用ガイドラインは随時公表されますので、最新情報のウォッチをお忘れなく。

年金制度は非常に複雑です。具体的な加入手続きや給付計算、個別のケースに関する疑問については、ファイナンシャル・プランナー(FP)などの専門家にご相談いただくことを強くおすすめします。専門家のアドバイスを受けながら、安心して将来設計を進めていきましょう。

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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