住宅ローン固定金利が大手5行で上昇、変動金利据え置きの意味

住宅ローン金利の上昇が、家計にじわりと近づいている。

2026年5月適用分の住宅ローンで、大手銀行が10年固定型の金利をそろって引き上げた。上がったのは固定金利であり、利用者の多い変動金利は大手5行とも据え置きとなった。ここに、今回のニュースを見るうえでの大きな分かれ目がある。

固定金利は長期金利の影響を受けやすい。一方、変動金利は短期金利や日銀の政策金利との関係が深い。つまり今回の動きは、単に「住宅ローン金利が上がった」という話ではない。長期金利の上昇が住宅ローンの固定型に反映され、変動型はまだ大きく動いていない局面を示している。

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何が上がったのか

大手銀行は、2026年5月に適用する住宅ローンの10年固定型金利を引き上げた。

10年固定型の最優遇金利は、みずほ銀行が2.95%、三菱UFJ銀行が3.15%、三井住友銀行が3.25%、りそな銀行が3.435%、三井住友信託銀行が3.645%となる。大手各行で、10年固定型の金利が3%前後から3%台半ばに並んだ形だ。

これから固定金利で住宅ローンを組む人にとっては、同じ借入額でも毎月の返済額や総返済額が増えやすくなる。特に10年固定型は、借入後の一定期間の返済計画に影響するため、金利上昇の重みが家計に見えやすい。

一方で、変動金利は大手5行とも据え置かれた。固定金利の引き上げと変動金利の据え置きが同時に起きているため、ニュースの読み方には注意が必要だ。

なぜ固定金利だけが先に動いたのか

固定金利が上がった背景には、長期金利の上昇がある。

住宅ローンの固定金利は、銀行が一定期間の金利をあらかじめ決める商品である。10年固定なら、10年間の金利を先に決める。そのため銀行は、将来にわたって資金を貸し出すコストを見ながら金利を設定する。

このとき参考にされやすいのが、10年物国債利回りなどの長期金利だ。長期金利が上がると、銀行にとって長い期間の資金調達コストや貸出の前提が変わる。結果として、住宅ローンの固定金利も上がりやすくなる。

最近の長期金利は、原油価格の上昇や物価高への警戒、日銀の金融政策をめぐる見方などを背景に、高い水準で推移している。市場では、物価上昇が続けば日銀の追加利上げが意識されやすくなる。こうした長期金利の上昇傾向が、5月適用分の固定金利に反映された形だ。

変動金利が据え置かれた理由

固定金利が上がっても、変動金利が同じタイミングで動くとは限らない。

変動金利は、主に短期金利や日銀の政策金利の影響を受ける。銀行ごとに基準金利や優遇幅の設定は異なるが、固定金利よりも短期の金融政策に近い動きをしやすい。

今回、変動金利が据え置かれたのは、固定金利と変動金利で参照される金利の性質が違うためだ。固定金利は長期金利、変動金利は短期金利や政策金利の影響を受けやすい。この構造を押さえると、今回のニュースはかなり読みやすくなる。

ただし、変動金利が据え置かれたことは、今後も安心という意味ではない。日銀が追加利上げを進める局面になれば、変動金利にも上昇圧力がかかる可能性がある。固定金利の上昇は、住宅ローンを取り巻く金利環境の変化を確認する材料になる。

これから借りる人は何を見るべきか

住宅ローンをこれから借りる人にとって、固定金利の上昇は返済計画に直結する。

金利が上がると、借入額が同じでも返済負担は重くなる。とくに住宅ローンは返済期間が長いため、わずかな金利差でも総返済額に大きな差が出ることがある。

一方で、固定金利には将来の金利上昇リスクを一定期間抑えられる利点がある。変動金利は当初の金利が低く見えやすいが、将来の上昇リスクは利用者が負うことになる。

重要なのは、いま一番低い金利だけで判断しないことだ。固定型を選ぶのか、変動型を選ぶのかは、返済余力、借入期間、家計の安定度、金利上昇にどこまで耐えられるかによって変わる。

銀行ごとの金利差も無視できない

今回の発表では、10年固定型の最優遇金利に銀行ごとの差も出ている。

みずほ銀行は2.95%、三菱UFJ銀行は3.15%、三井住友銀行は3.25%、りそな銀行は3.435%、三井住友信託銀行は3.645%だ。同じ10年固定型でも、銀行によって水準は異なる。

実際に住宅ローンを組む場合は、金利だけでなく、保証料、事務手数料、団体信用生命保険の内容、繰り上げ返済の条件なども見る必要がある。表面上の金利が低くても、諸費用を含めた負担では別の銀行が有利になることもある。

また、報道や銀行サイトで示される金利は「最優遇金利」であることが多い。すべての利用者に同じ条件が適用されるとは限らない。年収、勤務先、借入額、物件、自己資金、審査結果などによって、実際の適用金利は変わる。

上場企業として見る場合の注意点

今回名前が出ている銀行の多くは、上場している金融グループに属している。

三菱UFJ銀行は三菱UFJフィナンシャル・グループ(8306)、三井住友銀行は三井住友フィナンシャルグループ(8316)、みずほ銀行はみずほフィナンシャルグループ(8411)、りそな銀行はりそなホールディングス(8308)、三井住友信託銀行は三井住友トラストグループ(8309)の傘下である。

ただし、住宅ローン金利の引き上げを、そのまま銀行株の材料として単純に読むことはできない。金利上昇は銀行の収益環境に影響しうる一方、住宅ローン需要や借り換え需要にも影響する。国債市場、日銀の政策、景気、物価、個人の住宅購入意欲など、複数の要因が重なるためだ。

見るべきなのは金利の「方向」だ

今回のニュースは、固定金利が上がったという事実だけで終わらない。

固定金利の上昇は、長期金利の上昇が住宅ローンに波及していることを示す。一方、変動金利は今回は据え置かれたが、日銀の政策次第では今後の上昇圧力が強まる可能性がある。

住宅ローンは、家計にとって長い期間つき合う大きな負担である。固定金利が上がったというニュースは、これから借りる人だけでなく、すでに借りている人にとっても、金利環境の変化を確認するきっかけになる。

いま起きているのは、銀行ごとの単なる金利改定にとどまらない。長期金利、物価、日銀の政策、住宅購入の負担感といった複数の要因が、住宅ローン金利に反映されやすい局面になっている。住宅ローンを考えるなら、目先の金利だけでなく、自分の返済余力と将来の金利上昇リスクをあわせて見る必要がある。

(本稿は各種公開情報をもとに作成した。一部数値は記事掲載時点の情報である)

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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