日本の原油輸入急減をどう読むか 石油統計速報ベースの落ち込みと代替調達の焦点

2026年4月の日本の原油輸入をめぐり、資源エネルギー庁が5月29日に発表したとされる石油統計速報ベースで、輸入量が大きく落ち込んだ。NHK報道によると、4月の原油輸入量は407万キロリットルで、前年同月比65%減。1989年以降で最少になったとされる。

ただ、このニュースは「日本で急に原油需要が消えた」という話ではない。中東情勢を受けて通常の調達や輸送に影響が出るなか、4月は国家備蓄で国内需要を支え、5月以降の代替調達へつなぐ局面だったと読むことができる。

日本の読者に関係するのは、ガソリン価格だけではない。原油の調達が詰まれば、物流費、企業の製造コスト、石油化学製品、住宅関連資材、農業や建設の現場にも波及し得る。4月の数字は、遠い中東情勢が日本の生活費や産業活動に届く経路を示している。

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4月の急減は、備蓄から代替調達へ移る途中の数字だ

NHK報道ベースでは、4月の原油輸入量は407万キロリットル。中東からの輸入は356万キロリットルで前年同月比68%減、サウジアラビアからは182万キロリットル、UAEからは164万キロリットルとされる。いずれも石油統計速報ベースの数字として扱うのが適切だ。

資源エネルギー庁の担当者説明として報じられている内容では、4月は代替調達の調整中で、石油の国家備蓄放出によって需要を賄っていたという。国家備蓄は、輸入途絶や供給混乱の際に国内供給を支えるための制度であり、民間備蓄や産油国共同備蓄とは区別して考える必要がある。

つまり、4月の輸入減は国内消費の急減というより、調達と輸送の谷を備蓄で補っていた局面として理解できる。備蓄は短期的な混乱を吸収する仕組みだが、使えば残量は減る。だからこそ、5月以降にどの程度まで代替調達が進むかが次の確認材料になる。

中東依存とホルムズ海峡リスクは、同じ話ではない

今回の統計で目立つのは、中東からの輸入の落ち込みだ。日本は原油の多くを海外に頼り、そのなかでも中東の比重が大きい。平時には安定した大口調達先であっても、地域情勢や海上輸送に揺れが出ると、国内の燃料・素材供給に影響が及ぶリスクがある。

ただし、「中東依存」と「ホルムズ海峡を通る依存」は同じではない。中東産原油でも輸送ルートは一様ではなく、政府が焦点にしているのは、ホルムズ海峡を通過しない原油をどこまで確保できるかという点だ。

首相官邸の中東情勢に関する関係閣僚会議では、ホルムズ海峡を通過しない代替調達について、5月分は約6割、6月分は約7割以上のめどが立ったと説明されている。これは原油輸入全体の回復率ではなく、あくまでホルムズ海峡を通過しない代替調達に関する説明だ。

代替調達は、購入先を変えるだけでは完結しない。調達先、船舶手配、輸送距離、保険料、国内製油所で扱いやすい原油かどうかなど、複数の条件が重なる。こうした点は、今後のコストや供給安定性を考えるうえでの論点になる。

ガソリン価格だけでは見えない、ナフサと石油由来製品への影響

原油輸入のニュースは、ガソリンや軽油、灯油の価格と結びつけて読まれやすい。だが今回の素材で見落としにくいのは、ナフサ輸入量も110万キロリットル、前年同月比43%減と報じられている点だ。これも石油統計速報ベースの数字として慎重に扱いたい。

ナフサは、プラスチック、合成繊維、包装材、化学品などの原料になる。燃料価格だけを追っていると、原油調達の混乱が素材や製品供給に広がる経路を見落としやすい。

首相官邸の会議では、石油由来製品として、シンナー、塗料、住宅設備、潤滑油、アドブルーなどの流通対策にも言及がある。これは、すでに広範な供給不安が起きているという意味ではなく、政府側の問題意識が燃料油だけに限られていないことを示している。

アドブルーはディーゼル車の排ガス浄化に使われ、物流や建設機械と関係が深い。潤滑油や塗料、住宅設備も、日常では意識されにくいが、企業活動やインフラ維持に関わる。原油輸入の急減は、家計のガソリン代だけでなく、企業コストや製品供給を通じて物価に影響する可能性がある。

407万キロリットルと448万キロリットルは、統計名を分けて読む

今回の数字を読むうえでは、統計の種類を分けることも重要になる。NHK報道が伝えた石油統計速報ベースの原油輸入量は407万キロリットル。一方、JETROが財務省貿易統計をもとに整理した原油および粗油の輸入量は448万キロリットルで、前年同月比63.7%減とされている。

この差は、直ちに矛盾と受け止めるより、統計の定義や計上方法の違いが影響している可能性があるものとして整理したい。石油統計速報と財務省貿易統計では、対象品目や集計の考え方、計上時点が異なる場合があるためだ。

米国からの輸入についても注意がいる。石油統計速報ベースの報道では31万キロリットル、前年同月比32%減とされる一方、JETROの財務省貿易統計ベースでは米国からの輸入が増加した形で整理されている。統計名を添えずに「増えた」「減った」と書くと、読者は同じ数字の話だと誤解しやすい。

確認した範囲の報道では、4月に日本の原油調達が大きく落ち込んだという大きな方向性は共通している。違いが出るのは、どの統計で、どの品目を、どの時点で捉えているかという部分だ。

5月以降の注目点は、輸入量の回復だけではない

資源エネルギー庁側は、5月には代替調達が進み、輸入量は回復傾向になるとの見方を示している。報道では、5月の輸入量が前年の4倍程度へ増える見通しともされている。ただし、これは見通しであり、実績は後続統計で確認する段階にある。

確認材料は、輸入量が戻るかどうかだけではない。どの国から、どのルートで、どの程度のコストで調達できたのか。国家備蓄の追加放出を抑えられたのか。ナフサや石油製品の在庫、価格、流通に目詰まりが出ていないか。こうした点を合わせて見なければ、国内経済への影響は判断しにくい。

市場面では、原油価格に加え、為替、輸入単価、タンカー輸送、保険料、在庫の動きが材料になる。生活面では、ガソリンや灯油の価格だけでなく、物流費や石油由来製品の供給がどの程度安定するかが関係してくる。

4月の「過去最少」とされる数字は、大きな見出しになりやすい。だが論点は、単月の落ち込みだけで終わらない。日本の原油調達が特定地域や特定ルートにどの程度依存しているのか、混乱時に備蓄と代替調達でどこまで吸収できるのか、そして燃料以外の石油由来製品にどのような影響が出るのか。次のニュースでは、5月以降の輸入実績、代替調達の内訳、備蓄放出の判断、ナフサを含む国内供給の動きが焦点になる。

出典・参考

主な参照資料

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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