COTOE橋本に見る「壊さない商業施設開発」 大和ハウスの既存ストック戦略

神奈川県相模原市緑区で、2026年5月29日に商業施設「COTOE橋本」が開業した。大和ハウス工業(東証プライム、1925)が、築20年の大型商業施設を改築・再生した近隣商圏型ショッピングセンターだ。

このニュースの読みどころは、新しい商業施設ができたことだけではない。建築費の上昇や人手不足が意識されるなかで、既存建物を壊して建て替えるのではなく、使える部分を生かして再生する選択肢が重みを増している点にある。

商業施設は、単なる不動産ではなく、地域の買い物、雇用、交通動線に関わる生活の拠点でもある。閉店後の大型建物をどう活用するかは、企業の開発戦略であると同時に、地域経済の空白をどう埋めるかという話でもある。

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なぜ新しい商業施設で古い建物を使うのか

大和ハウスの発表によると、COTOE橋本は4階建てで、延床面積は41,697平方メートル、店舗面積は15,607平方メートル。駐車台数は800台、総店舗数は32店で、ヤオコー、コジマ×ビックカメラ、ニトリなどが核テナントとして入る。

地域媒体などでは旧ホームセンター跡の再生と報じられているが、旧施設名や閉店時期は公式発表だけでは確認しにくい。最終的に重要なのは、個別の旧施設名よりも、既存の大型建物を商業施設として再利用するモデルが示されたことだ。

新築の場合、解体、基礎工事、構造体、設備、内装、外構まで広い範囲で費用と人手がかかる。既存建物を活用できれば、条件次第で建築費や工期を抑え、廃棄物や環境負荷の低減にもつながる。ただし、古い建物を使えば必ず安いわけではない。耐震性能、設備更新、用途変更に伴う法規制、動線設計などの制約が残るため、建物の状態と事業計画の相性が問われる。

建築費高騰が既存ストック活用を後押しする

商業施設リノベーションが注目される背景には、建築費の上昇がある。建設物価調査会の建築費指数は、資材価格や労務費などをもとに建物の工事価格の動きを示す指標だ。2026年4月時点で、集合住宅、事務所、工場、木造住宅など代表的建物の工事原価指数は、2015年平均を大きく上回る水準にある。

この指数は商業施設そのものの建築費を示すものではない。それでも、幅広い建物でコスト上昇が続いていることは、商業施設の開発判断にも無関係ではない。工期が延びれば、人件費や資材価格の変動リスクも受けやすくなる。

さらに、石油由来原材料の高騰や設備調達の遅れは、建設コストを押し上げる要因になりうる。TBS CROSS DIG with Bloombergは、大和ハウス側の説明として、建築中案件はおおむね予定通り進められるとの見方とともに、供給網リスクや価格転嫁の論点も紹介している。COTOE橋本への直接影響とまでは言えないが、企業が新築だけでなく改修や用途転換を検討する背景には、こうしたコスト環境がある。

「1兆円」は商業施設リノベ単独ではない

COTOE橋本は、大和ハウスが進める「リブネス」や「BIZ Livness」の流れで見ると位置づけが分かりやすい。リブネスは既存住宅や不動産ストックの流通・再生を扱う事業で、BIZ Livnessは商業施設や事業施設など非住宅分野のストック活用を含む取り組みだ。

ここでいう「1兆円」とは、COTOE橋本の事業費や商業施設リノベーション単独の市場規模ではない。大和ハウスが2030年代に目指す、住宅系の「Livness」と非住宅系の「BIZ Livness」を合わせたリブネス事業全体の売上高目標である。対象には戸建住宅、マンション、商業施設、工場、物流施設、オフィスなどの既存ストック再生・買取再販・改修事業が含まれる。

つまり今回の話は、「商業施設リノベだけで巨大市場が生まれる」という単純な構図ではない。新築開発だけに頼らず、既存資産を収益化する選択肢を増やす企業戦略として読む必要がある。

地域にとっては空き大型店を生活拠点に戻せるかが焦点になる

大型商業施設の再生は、不動産会社だけの問題ではない。郊外型の大型店は、日常の買い物先であり、雇用の場であり、車やバスの流れを生む拠点でもある。閉店後の建物が長く残れば、地域の印象や利便性にも影響する。

COTOE橋本のように、スーパー、家電量販店、家具店などが入る施設として再生されれば、地域住民にとって買い物先の選択肢が増える可能性がある。既存の建物や駐車場を活用できることは、郊外型商圏では大きな利点になりうる。

一方で、施設が地域に定着するかどうかは開業だけでは判断できない。テナント構成が生活動線に合っているか、周辺店舗とどう共存するか、継続的に来場者を集められるかが問われる。建物を再利用することと、商業施設として長く機能することは別の論点だ。

今後の焦点はコスト削減より事業として続くか

リノベーションは、建築費や工期を抑える手段になりうる。ただし、既存施設の再生には新築とは違う難しさがある。建物の劣化状況、法規制対応、設備更新、テナント誘致、運営採算を一つずつ見極めなければならない。

大和ハウスにとっては、COTOE橋本が地域商圏にどれだけ定着するかに加え、BIZ Livnessを含む既存ストック事業をどの程度収益化できるかが注目点になる。新築コストの上昇が意識される局面では、既存建物を活用する選択肢は相対的に選ばれやすくなる可能性がある。ただし、すべての古い商業施設が再生に向くわけではない。

今回のニュースは、一つの新施設開業にとどまらない。企業が既存資産をどう使い、地域が閉店後の大型建物を生活拠点として戻せるかを考える手がかりになる。今後は、COTOE橋本の来場状況、テナントの定着、そして同様の非住宅ストック再生案件がどこまで積み上がるかが確認材料になる。

出典・参考

主な参照資料

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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