自動車保険料の値上げ相次ぐ 修理費高騰と家計負担

去年大きく上がったばかりの自動車保険料が、2026年も再び引き上げられる。NHKなどの報道によると、東京海上ホールディングス(8766)傘下の東京海上日動火災保険は2026年10月に平均6.5%、SOMPOホールディングス(8630)傘下の損害保険ジャパンは2026年7月に平均1.8%の値上げを予定している。

注目すべきなのは、単なる保険会社ごとの料金改定ではなく、車を直すための費用そのものが上がっている点だ。部品価格、人件費、修理の高度化、自賠責保険の改定、さらに石油関連製品の価格上昇リスクまで重なり、車の維持費全体が上がりやすい局面を示している。

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何が予想以上に重いのか

東京海上日動火災保険は、自動車保険の保険料を2026年10月に平均6.5%引き上げる方針だ。比較可能な2012年度以降では、2025年10月に実施した平均8.5%の引き上げに次ぐ大きさとされる。

損害保険ジャパンも、2026年7月に自動車保険料を平均1.8%引き上げる予定だ。大手損害保険会社で値上げの動きが相次いでいることから、今回の改定は一社だけの問題ではなく、自動車保険を取り巻く費用構造の変化として見る必要がある。

さらに、自動車やバイクの所有者に加入が義務づけられている自賠責保険も、2026年11月1日以降に保険期間が始まる契約から、平均6.2%引き上げられる予定だ。任意保険だけでなく強制保険も上がるため、車を保有する人にとっては、保険にかかる負担全体が増えやすい。ただし実際の負担は、契約条件、車種、地域、補償内容によって変わる。

なぜ修理費が保険料に響くのか

保険料が上がる主な理由は、自動車の修理費が膨らんでいることだ。東京海上日動火災保険は、部品価格や人件費の上昇により修理費が増え、保険金の支払いが増えていることを要因としている。

近年の車は、安全性能が高まる一方で、センサー、カメラ、電子制御部品などを多く搭載するようになった。軽い接触事故でも、バンパーやミラーの交換だけでは終わらず、センサーの調整や電子部品の交換が必要になる場合がある。事故を防ぐ技術が進むほど、事故が起きたときの修理は複雑になりやすい。

ここに、部品代、塗料代、物流費、整備士の人件費の上昇が重なる。事故の件数が大きく増えていなくても、1件あたりの修理単価が上がれば、保険会社が支払う保険金は増える。その結果、保険料の見直しにつながる。

自賠責まで上がると何が変わるのか

自動車保険には、大きく分けて任意保険と自賠責保険がある。東京海上日動火災保険や損害保険ジャパンの値上げで中心になるのは、一般に自動車保険と呼ばれる任意保険だ。対人・対物賠償、車両保険、弁護士費用特約など、契約内容によって補償の範囲が変わる。

一方、自賠責保険は、すべての自動車やバイクに加入が義務づけられている強制保険だ。主に交通事故の被害者を救済するための保険で、人身事故の損害を一定範囲で補償する。

自賠責保険については、損害保険料率算出機構が2026年4月30日に金融庁長官へ基準料率変更を届け出た。平均6.2%の引き上げは、過去契約から発生した滞留資金が保険金支払いで減少していることに加え、物価・賃金の上昇に伴う事務処理費用や保険金支払い関連費用の増加などを踏まえたものだ。

つまり、自賠責の値上げは「事故が増えたから」という単純な話ではない。保険制度を維持するための収支、物価、賃金、事務コストが重なり、強制保険の側でも料率を見直す必要が出ている。

中東情勢はなぜ保険料にも関係するのか

今回の値上げで見落としにくいのが、イラン情勢の悪化に伴う石油関連製品の価格上昇リスクだ。自動車部品や塗料には、石油由来の素材が多く使われている。

原油価格や石油化学製品の価格が上がれば、ガソリン代だけでなく、修理に使う部品や塗料の価格にも影響する可能性がある。そうなると、事故が起きたときの修理費がさらに上がり、保険金支払いの増加につながりうる。

ただし、中東情勢がただちに保険料へ反映されると決まっているわけではない。焦点は、原材料価格の上昇がどの程度まで部品や塗料、修理費に波及し、それが保険会社の支払いにどの程度表れるかだ。

家計はどこを見直せばよいのか

「平均6.5%引き上げ」と聞いても、すべての契約者が一律に6.5%上がるわけではない。実際の保険料は、年齢、等級、車種、走行距離、補償内容、車両保険の有無、特約の内容などによって変わる。

保険料が上がるからといって、必要な補償まで削る判断は慎重に考えたい。特に対人・対物賠償のように、大きな事故に備える補償は、単純な節約の対象にしにくい。

見直すなら、まずは重複している特約がないか、車両保険の有無や免責金額が現在の車の使い方に合っているか、走行距離や使用目的が契約内容とずれていないかを確認するのが現実的だ。通勤で使わなくなった車、走行距離が減った車、古くなって車両保険の必要性が変わった車では、見直しの余地がある場合もある。

値上げで見えるのは「車を持つコスト」の変化

今回のニュースは、単に「保険料が上がる」という話だけではない。車の安全性能が高まり、修理が高度化し、部品や人件費が上がり、国際情勢まで原材料価格に影響する。その積み重なりが、自動車保険料という身近な費用に表れている。

車は購入時の価格だけでなく、燃料代、税金、車検、修理、保険を含めて維持するものだ。保険料の値上げは、その維持費全体が上がりやすい局面にあることを示すサインでもある。

大切なのは、値上げそのものに反応して補償を削ることではなく、何に備えるための保険なのかを見直すことだ。車を持つコストが上がる局面ほど、保険は安さだけでなく、必要な補償を過不足なく選べているかが問われる。

(本稿は各種公開情報をもとに作成した。一部数値は記事掲載時点の情報である)

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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