NTTは過去最高収益でも最終減益見通し ドコモのシェア低下が映す課題

売上は過去最高だったのに、最終利益は減る見通しになった。NTTが発表した2025年度決算と2026年度の業績予想は、一見すると順調な大型通信グループの中に、無視しにくい変化があることを示している。

NTTの2025年度の営業収益は14兆4091億円となり、前年度より5.1%増えた。最終的な利益も1兆370億円と、前年度比で3.7%増えた。一方で、2026年度の最終利益は9800億円と、5.5%の減益を見込む。売上規模は伸びているのに、最後に残る利益は減る。このズレの背景にあるのが、傘下のNTTドコモのシェア低下と収益面の課題だ。

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なぜ「増収なのに減益」が気になるのか

増収とは、売上にあたる営業収益が増えることだ。減益とは、費用や税金などを差し引いたあとの利益が減ることを指す。企業が大きくなっているように見えても、稼ぐ効率や収益の質が弱くなっている可能性がある。

今回のNTTは、グループ全体で見れば事業規模の拡大が続いている。会社資料上も、2026年度は営業収益や営業利益の増加を見込む一方で、当期利益は減益と整理されている。読者や投資家が見るべき点は「売上が伸びたかどうか」だけではなくなる。

重要なのは、どの事業で利益が出ていて、どの事業でコストが増えているのかだ。通信品質の改善、顧客獲得のためのキャンペーン、価格競争への対応には費用がかかる。売上が伸びても、こうした負担が重くなれば、最終的な利益は押し下げられる。

ドコモのシェア低下はなぜNTT全体に響くのか

NTT株式会社は、旧・日本電信電話を前身とする国内最大級の通信グループで、東証プライムに上場している。証券コードは9432だ。NTTドコモはその中核子会社で、携帯電話サービスだけでなく、決済、金融、法人向け通信なども担っている。

携帯電話事業は、契約者から毎月の通信料金収入が入るストック型の事業である。契約者数やシェアが安定していれば、収益も比較的安定しやすい。反対に、シェアが低下すると、通信料金収入の伸び悩みや、顧客を取り戻すための販売促進費用の増加につながりやすい。

総務省データをもとにした携帯電話契約数シェアでは、2025年9月時点でNTTドコモが33.3%と、依然として首位にある。ただ、20年前より20ポイントあまり低下している。KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルに加え、格安SIMを提供するMVNOも存在し、料金や通信品質をめぐる競争は以前より厳しくなっている。

ドコモはなお大きな顧客基盤を持つ。しかし、首位であることと、かつてのような圧倒的な安心感を保てることは同じではない。利用者が乗り換えやすくなった今は、通信品質、料金プラン、ポイント経済圏、金融サービスまで含めた総合力が問われる。

競争は「安い料金」だけでは終わらない

携帯電話会社の競争というと、まず料金の安さが思い浮かぶ。だが、ドコモの課題は価格だけではない。通信品質への不満、他社への顧客流出、販売促進費用の増加などが重なると、収益力は削られやすくなる。

NTTの島田明社長は、ドコモの顧客基盤の強化や通信品質向上に向けた投資を進めてきたため減益になっていると説明し、今後は反転攻勢していきたいとの考えを示した。通信品質の改善は、短期的には投資負担になる。だが、改善が進まなければ、顧客離れを止めにくくなる。

ここで難しいのは、費用を抑えれば利益は守りやすいが、投資を抑えすぎれば競争力が落ちるという点だ。通信事業は設備投資を避けられない。基地局の整備やネットワーク改善を後回しにすれば、利用者の不満は広がりやすい。逆に投資を強めれば、短期の利益は圧迫される。

つまり今回の減益見通しは、単なる一時的な費用増だけではなく、ドコモが競争力を立て直すためにどの程度の時間とコストを必要とするのかという問いにつながる。

NTTは通信会社から何へ向かうのか

NTTにとってドコモの立て直しは、携帯電話だけの問題ではない。ドコモは金融・決済分野も成長領域に位置づけている。dカードやd払いといったサービスに加え、銀行や金融関連の事業を取り込み、通信以外の接点を増やそうとしている。

この動きは、競争が激しい市場では携帯電話会社が「回線を売る会社」だけではいられなくなっていることを示している。通信料金だけに依存せず、決済、金融、法人向けサービス、データ、AI関連インフラなど、複数の収益源を持つことが重要になっている。

ただし、新しい成長領域はすぐに利益を生むとは限らない。金融や決済は顧客基盤を生かしやすい一方、競争相手も多い。法人向けやAI、データセンター関連の投資も、中長期の成長余地はあるが、短期の業績を押し上げるまでには時間がかかる可能性がある。

その意味で、NTTの決算は「安定した通信大手」という印象だけでは読み切れない。既存の通信事業を守りながら、成長領域へどれだけ自然に軸足を移せるかが問われている。

個人投資家はどこを見ればよいのか

NTTは個人投資家にもなじみのある大型株だ。通信という生活インフラを担い、株主還元にも積極的な企業として見られてきた。2026年度も増配を見込んでいることや、自社株買いを発表したことは、株主にとって安心材料になりやすい。

一方で、配当や自社株買いだけを見ていると、事業そのものの変化を見落とす可能性がある。今後の焦点は、ドコモの通信品質改善が顧客流出の抑制につながるか、料金競争の中で1契約あたりの収入を維持できるか、金融・決済や法人向けサービスが携帯通信の利益低下を補えるかにある。

売上が過去最高だから安心、最終利益が減るから危険、という単純な話ではない。大事なのは、何のために費用が増えているのか、その費用が将来の競争力につながるのかを見ることだ。

NTTの今回の決算は、大型安定株にも構造変化があることを思い出させる。通信は生活に欠かせないインフラだが、インフラ企業であっても競争から自由ではない。安定している会社ほど、事業のどこで次の成長を作ろうとしているのかを見る必要がある。

(本稿は各種公開情報をもとに作成した。一部数値は記事掲載時点の情報である)

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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