主食用は余っているのになぜ足りないのか 農相が促す多用途米増産の論点

去年は「コメが足りない」との報道が相次いだが、今度は農林水産大臣が主食用以外のコメの生産拡大を促した。今回の論点はコメ全体の量ではなく、用途ごとの需給のずれにある。

4月17日の閣議後会見で鈴木農林水産大臣は、主食用米の価格高騰の影響で、加工用米などで需要見込みに対して作付けが足りていないことが課題になっていると説明し、加工用米、新市場開拓用米、米粉用米などについて「需要見込みに対して25万トン程度の増産が可能な状況だ」と述べた。主食用米が不足しているという話ではなく、主食用以外の需要に対して作付けを振り向けたいというメッセージだ。

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何が足りていないのか

農水省の説明や4月17日のNHK報道によると、2026年1月末時点の調査では、加工用米は需要に対しておよそ4万トン、米粉用米もおよそ4万トン、輸出用などはおよそ2万〜4万トン、作付け見込みが足りない状況とされた。

加工用米はせんべいやみそ、酒、加工食品などの原料になる米だ。米粉用米はパンや麺、菓子などに使うための米で、新市場開拓用米は輸出向けなど新たな販路向けの米を含む。いずれも主食用とは需要先が異なり、同じ「コメ」でも必要とされる先が違う。

一方で、鈴木農相が会見で示した「25万トン程度の増産可能」という数字は、公開された発言だけでは細かな内訳が読み切れない。会見では備蓄米13万トンにも別途触れているが、25万トンとの関係はその場で明示されていない。少なくとも、個別の不足見通しを単純に足し上げた数字ではない点には注意が必要だ。

なぜ主食用は多く、他用途は足りないのか

背景にあるのは、主食用米の価格上昇を受けて主食用の作付けが高い水準で続いたことだ。農水省が3月11日に公表した「水田における作付意向について(令和8年産第1回中間的取組状況(1月末時点))」では、主食用米の作付意向は令和7年産の136.7万haに対し、令和8年産も136.1万haとなっている。

つまり、コメ全体が足りないというより、主食用に比重が寄る一方で、加工用や米粉用、輸出向けに回るはずの作付けが相対的に薄くなっている構図だ。今回の発言は、そのずれを埋めるために主食用以外の生産を促すものと読める。

今回の「増産」は何を意味するのか

ここでいう増産は、単純にコメをもっと作れという意味ではない。主食用米の在庫が増えるなかで、需要に対して不足気味の用途へ作付けを振り向けてほしい、という意味合いが強い。

農水省が繰り返すキーワードも「需要に応じた生産」だ。主食用、業務用、加工用、米粉用、輸出用など、どの需要先にどれだけ供給するのかを見ながら水田の使い方を調整する発想である。今回のニュースは、コメ政策を「足りるか足りないか」の二択で見るのではなく、どの用途にどれだけ配分するかの問題として考える必要があることを示している。

「コメが足りない」という見出しをどう読むべきか

去年の品薄報道だけを見ると、コメ全体が危ういという印象を持ちやすい。しかし今回の農相発言から見えてくるのは、主食用と非主食用で状況が分かれているという現実だ。

主食用米の作付けが高水準で続く一方、加工用や米粉用、輸出向けでは需要見込みに対して作付けが追いついていない。今回の論点は、コメ全体の絶対量よりも、用途別の需給ミスマッチにある。増産という言葉だけで受け取ると見誤りやすいが、実際には主食用から多用途米への振り向けをどう進めるかが焦点になっている。

(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
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・Asset Formation Consultant
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