イラン情勢で肥料高騰 秋以降の食品価格ににじむ遅行リスク

イラン情勢の緊迫化で注目されがちなのは原油や天然ガスだが、食卓にとって見逃せないのは肥料市場だ。4月15日にロイターが伝えたインドの尿素入札では、西岸向けの最安値が1トン935ドル、東岸向けが959ドルとなり、2か月前の前回入札時の508ドル、512ドルから大きく跳ね上がった。

日本で直ちに肥料が足りなくなる局面ではない。ただ、国際価格の上昇が秋以降に販売される肥料へ波及すれば、農家のコストを押し上げ、野菜や加工食品の価格に遅れてにじむ可能性がある。問題は「今すぐ不足するか」ではなく、「数か月遅れの価格転嫁がどこまで広がるか」だ。

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なぜ原油より先に肥料を見るべきか

尿素は窒素肥料の代表格で、植物の葉や茎の生育を支える基礎資材だ。原料には天然ガスが使われるため、中東情勢の悪化はエネルギー市場だけでなく、肥料の生産と輸送にも重くのしかかる。

FAOは4月15日の発信で、ホルムズ海峡を通る主要な農業投入材の輸出が2割から4割超にのぼるとし、船舶の往来が早期に正常化しなければ、年後半から2027年にかけて収量低下と食品インフレを招きかねないと警告した。4月3日に公表した3月の食料価格指数でも、近東情勢の緊迫化によるエネルギー高と肥料供給への圧力が市場の不確実性を高めていると説明している。

肥料市場は、需給が少し崩れただけでも価格が跳ねやすい。FAOが指摘する通り、農家が必要な時期に十分な資材を確保できなければ、作付けを減らすか、施肥量を抑えるかの選択を迫られる。影響はその場で終わらず、収穫時期に入ってから表面化する。

日本への影響は数量より価格だ

農林水産省によると、日本の尿素輸入はマレーシアが約74%を占め、中東依存は相対的に高くない。鈴木俊一農林水産大臣も3月3日の会見で、現状では肥料や飼料に直ちに影響が出るとの報告は受けていないと説明した。4月3日の会見でも、生産者が春作業に使用する肥料については現状として影響はないとの認識を示している。

ただし、安心材料は数量面に限られる。4月3日の会見で大臣は、JA全農が言及した秋作業向け肥料について、本年6月以降に販売する分の価格動向に影響を及ぼす可能性があるとの見方を示した。例年、秋作業に使う肥料の卸売価格は5月末ごろに公表される。ここで国際高騰がどこまで反映されるかが、秋以降の国内コストを占う最初の節目になる。

価格上昇の経路は分かりやすい。肥料が高くなれば、農家は生産コストの上昇に直面する。値上がりを販売価格へ転嫁できなければ収益が圧迫され、施肥量を抑える判断も出やすくなる。日本総合研究所の三輪泰史チーフスペシャリストが指摘するように、こうした動きは秋以降の野菜、とくに冬から春に収穫期を迎える品目の価格へ波及する可能性がある。

ブラジル経由の間接影響も見逃せない

日本への影響は国内農家だけの話では終わらない。3月5日のロイターによると、ブラジルは2025年の尿素需要を100%輸入で賄い、そのうち推計41%、約300万トンがホルムズ海峡を通過していた。ブラジルの2026/27年度作は9月に作付けが始まる見通しで、供給逼迫や高値が長引けば、大豆やトウモロコシの生産コストに跳ね返る可能性がある。

ブラジルは大豆とトウモロコシの世界有数の供給国だ。ここでコスト上昇や施肥抑制が広がれば、世界の油脂、飼料、畜産物価格に波及しやすい。日本にとっては、食用油、鶏肉、豚肉、乳製品などが間接的な影響を受けやすい領域になる。

もちろん、現時点で食品価格の全面高を断定する段階ではない。代替調達や在庫、輸送正常化の速度によって影響の大きさは変わる。ただ、国内供給が今すぐ不安定でなくても、海外の主要生産地で肥料コストが上がれば、数か月後に別のかたちで日本へ返ってくる。

注視すべきは5月末から初夏にかけての価格シグナル

足元で見るべき指標は三つある。ひとつはインドなど大口需要国の尿素調達価格、もうひとつは5月末ごろに見えてくる国内の秋肥価格、そして三つ目がブラジル向け肥料物流の正常化だ。

イラン情勢をエネルギー問題としてだけ捉えると、食品への影響は見えにくい。しかし実際には、肥料という上流コストを通じて、秋以降の食品価格へじわじわ波及する構図がある。いま注視すべきなのは、供給不足の有無よりも、その遅れて届く価格シグナルの強さだ。

(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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