キッチンラップから浴室まで──ナフサ高騰が暮らしに広がる

台所で使うラップや保存袋、住宅の浴室設備まで、イラン情勢を受けたナフサ高騰の影響が広がり始めている。旭化成(3407)の工藤幸四郎社長は4月15日の記者会見で、ナフサの価格が「2倍近く」になっていると述べ、日用品でも価格転嫁が不可欠だとの認識を示した。

影響は石油化学メーカーの採算だけにとどまらない。食品保存袋や手袋、ゴミ袋、洗剤、住宅設備など、日常生活に近い商品の値上げや供給調整が相次いでいる。原油や中東のニュースが、家計や住まいにどう跳ね返るのかが見えやすくなってきた。

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値上げはどこまで広がっているのか

旭化成は、ポリエチレンなどの石油化学製品に加え、食品包装用のラップフィルムや食品保存袋、クッキングシートも手がける。工藤社長は「価格転嫁をしていく作業が不可欠だ。そうしないと事業そのものが成り立たなくなる」と述べ、日用品での値上げが避けにくいとの考えを示した。強い危機感をにじませた発言といえる。

クレハ(4023)は、食品保存向けのフリーザーバッグや調理パックを6月1日納品分から値上げする。値上げ幅は25%から35%以上としており、会社は「自助努力の範囲を大きく超え、安定的な供給体制を維持・継続するため価格改定を行うことにした」と説明している。

ここで見えてくるのは、原料高がすでに「そのうち広がるかもしれない話」ではなく、具体的な価格改定として表れ始めていることだ。

値上げで済まないケースもある

価格を上げれば商品を届けられるかといえば、そうとも限らない。アスクル(2678)では一部商品の調達に遅れが出ており、医療現場などで使われる手袋やゴミ袋が品薄になったり、一時的に欠品したりしている。商品によっては購入数量の制限も始まっている。

つまり、起きているのは「高くなる」だけではない。「欲しい時に手に入りにくい」という変化も、すでに一部商品で現れている。

ライオン(4912)は、今夏に発売予定だった衣料品向け新洗剤の販売開始を延期する。石油製品のナフサ由来の界面活性剤などが使われているが、中東情勢の先行きが不透明になっていることから延期を決めたとしている。一方で、現在製造・販売している商品の原料調達には問題がないとしており、既存商品の安定供給に努める方針だ。

住宅設備では何が起きているのか

ナフサの影響は、台所まわりの消耗品だけではない。住宅設備でも受注制限や値上げが表面化している。

クリナップ(7955)は4月15日から、システムバスの新規注文の受け付けを停止した。石油由来原料の供給が滞っているためで、再開時期も未定としている。LIXIL(5938)も4月13日からユニットバスの受注数を制限しており、注文を受けても納期が未定となる場合があると案内している。13日以前に受注した分は予定どおり供給するとしている。

積水化学工業(4204)は、雨どいやバルコニー向け建材について、塩化ビニルやポリエチレン原料の供給が少なくなっていることを受け、関連製品を20%から30%程度値上げする。

住宅設備では、価格改定だけでなく納期の見通しが立ちにくくなる点も重い。リフォームや新築を進める側にとっては、費用と同時にスケジュールの不透明さにも向き合う必要が出てくる。

一時的な混乱で終わるのか

現時点で、すべての商品が一斉に不足しているわけではない。ライオンは既存商品の原料調達に問題がないとしており、LIXILも既受注分は予定どおり供給すると説明している。影響の出方には、企業や商品ごとの差がある。

ただ、同じ時期に複数の企業で、値上げ、数量制限、発売延期、受注停止が出ている点は見逃せない。どれも表れ方は違うが、原料高と供給不安が幅広い商品に波及し始めていることは共通している。

先行きについては断定しにくい。中東情勢が落ち着けば影響が限定的にとどまる余地はある一方、企業側が「再開時期未定」「延期」といった表現を使っている現状では、早期に収束すると言い切る材料も乏しい。

暮らしの側で何を見ておくべきか

消費者の立場でまず気をつけたいのは、保存袋やゴミ袋、調理用品、手袋のように代替しにくい日用品の価格改定や在庫状況だ。普段は目立たない商品でも、影響が出始めると家計や現場の運用にじわじわ効いてくる。

住宅のリフォームや新築を予定している場合は、住宅設備の価格だけでなく納期や受注状況も確認したい。ユニットバスやシステムバスのような大型商品では、値上げより先に「いつ届くのか」が問題になる場面があるためだ。

原油や中東のニュースは遠い話に見えやすい。しかし今回表れているのは、日用品の値札、商品の在庫、住宅設備の納期という、暮らしに直結する変化である。国際情勢を大きな話として眺めるだけでなく、どの商品で先に動きが出るのかを見ることが、家計への影響を早めに読み取る手がかりになる。

(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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