ゴールドマン・サックス好決算でも株価下落──FICC失速が重しになった理由

2026年4月13日、米大手投資銀行ゴールドマン・サックスは2026年1〜3月期決算を発表した。純利益、1株利益とも市場予想を上回る内容だったが、株価は同日の米市場で1.9%下落した。表面上は好決算でも売られた背景には、決算の中身に対する市場の視線と、その日の相場環境があった。


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数字自体は強い、牽引役はInvestment banking feesとEquities収入

同社の決算資料によると、2026年1〜3月期の純営業収益は172.3億ドル、純利益は56.3億ドル、希薄化後EPSは17.55ドル、年率換算ROEは19.8%だった。EPSはLSEG集計の市場予想16.49ドルを上回っており、全体としては堅調な決算といえる。

収益を押し上げたのは、主に2つの項目だ。まず投資銀行業務の手数料収入にあたる Investment banking fees は前年同期比48%増の28.4億ドルだった。M&A助言や株式・債券の引受業務が回復したことが大きい。もう1つは Equities収入 で、前年同期比27%増の53.26億ドルと過去最高を記録した。株式市場の値動きが大きい局面では、売買やヘッジ取引が増えやすく、同部門には追い風になりやすい。

つまり、決算全体を見れば「本業は強い」という評価は十分に成り立つ。実際、利益水準だけを見れば市場予想をきちんと上回っていた。


重しになったのはFICC収入の失速

一方で、株価の反応を鈍らせたのは FICC収入 だった。FICCは Fixed Income, Currencies and Commodities の略で、債券、為替、コモディティー関連の取引を含む。金利、クレジット、住宅ローン関連などの動きが業績に反映されやすく、大手投資銀行では非常に重要な収益源だ。

今回のFICC収入は40.11億ドルで、前年同期比10%減となった。会社側は、金利関連商品、住宅ローン関連、クレジット商品の弱さが重しになったと説明している。株式関連が好調だった半面、債券・金利関連が想定ほど伸びなかったことで、決算の印象は一段弱くなった。

市場が注目したのもこの点だった。Reutersは、利益は予想を上回ったものの、FICCの弱さが株価の重しになったと整理している。好決算だったかどうかよりも、投資家が事前に期待していた収益構成に届いたかどうかが、株価反応を左右した形だ。


個別要因と市場環境を分けてみる

今回の値下がりを理解するうえでは、個別要因と市場全体の地合いを分けて考える必要がある。

まず個別要因としては、FICC収入の弱さが大きい。投資家は総利益だけでなく、どの事業がどれだけ稼いだかを細かく見る。全体の数字が良くても、重要部門の1つが期待を下回れば、株価には失望が出やすい。今回も、Investment banking fees と Equities収入の強さだけでは、FICCの弱さを打ち消しきれなかったとみられる。

一方で、同日の市場環境も神経質だった。中東情勢の緊張や原油高を背景に、インフレ懸念と景気減速への警戒がくすぶっており、米市場全体がリスクを取りにくい空気にあった。個別にはFICC失速が重しになり、市場全体ではリスクオフの地合いが重なった。この2つが同時に作用したと考えると、好決算でも株価が下がった流れは理解しやすい。


経営陣は強気を維持したが、先行指標は一様ではない

株価が下落した一方で、経営陣のトーンは比較的前向きだった。デビッド・ソロモンCEOは決算発表で、市場環境は不安定になっているものの、顧客は引き続き同社に依存しており、事業のポジショニングには自信があると説明した。Reutersによれば、M&Aの案件パイプラインについても「非常に強い」との見方を示している。

もっとも、将来を完全に楽観できる材料だけが並んだわけではない。公式プレゼン資料では、Investment banking fees backlog が前四半期比でやや減少した ことも示された。足元の案件需要そのものは底堅くても、地政学リスクや市場変動が長引けば、IPOや大型案件の実行時期は後ろ倒しになりやすい。

会社側は基盤の強さを強調しているが、市場はその強さが今後も同じペースで収益化されるかを慎重に見ている。その温度差が、今回の株価反応にも表れている。


今後の焦点は3つ

今後の焦点は3つある。第一に、FICC収入が次の四半期に持ち直すかどうかだ。金利やクレジット市場の環境が改善すれば、今回の弱さが一時的だった可能性も出てくる。

第二に、IPOや大型案件の再開ペースだ。投資銀行手数料はすでに回復基調にあるが、市場の不安定さが続けば、案件の執行が遅れる余地は残る。パイプラインの強さが実収益につながるかは、今後の市場環境に左右される。

第三に、株式市場の高ボラティリティがどこまで追い風であり続けるかだ。値動きの大きさはEquities収入にはプラスに働きやすいが、投資家のリスク許容度がさらに低下すれば、市場全体の取引意欲を冷やす可能性もある。

ゴールドマン・サックスの今回の決算は、利益の強さと収益構成への不満が同居した内容だった。市場では、好決算そのものよりも、FICCの失速と相場全体の警戒感が意識された。今回の株価下落は、「数字が良い」だけでは評価されない局面に入っていることを示したといえそうだ。

本稿は各種公開情報をもとに作成しました。数値は2026年4月13日時点の公表資料に基づきます。

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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