ガソリンスタンドが消えると、地域で何が起きるのか

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「給油が不便になる」では済まない話

ガソリンスタンド(給油所)が減っている。この事実を聞いて、「車に乗らないから関係ない」「近所にはまだある」と感じる人も多いかもしれない。

しかし、ガソリンスタンドの廃業が相次ぐ地域では、給油の不便さだけでは説明できない問題が起きている。農業ができなくなる。冬に灯油が届かない。災害時に重機が動かせない——そういった話だ。

数字を見れば、事態の深刻さが伝わる。


30年で半減以上、業者数もピークの4割弱に

資源エネルギー庁の統計によれば、給油所数のピークは1994年度末の60,421カ所だった。それが2024年度末(2025年3月31日時点)には27,009カ所まで減少している。ピーク時から55%以上の減少だ。

さらに、ガソリンなどを扱う揮発油販売業者の数も大きく落ち込んでいる。1989年度末には32,835社あったが、2024年度末には12,113事業者と、ピーク時から約63%減少している。言い換えれば、ピーク時の約37%にまで縮小した計算だ。

この30年余りで、日本各地に当たり前のようにあったスタンドの多くが姿を消したことになる。


なぜ減り続けるのか

背景には、複数の要因が重なっている。

まず、ガソリン需要の構造的な縮小だ。1997年に世界初の量産型ハイブリッド車が発売されて以降、自動車の燃費性能は年々向上してきた。同じ距離を走るのに必要なガソリンの量が減れば、スタンドに立ち寄る頻度も減る。これが経営の収益基盤を徐々に細らせてきた。

加えて、設備面と人材面の二重苦がある。地下に埋設されたガソリンタンクや給油機は、定期的な点検・改修が法令で求められる。設備の老朽化が進めば、大きなコストをかけて更新するか、廃業するかの選択を迫られる。そこに経営者の高齢化と後継者不足が重なり、「修繕するより閉めた方が現実的」という判断が増えている。

その根本には、経営の採算の厳しさもある。ガソリンスタンドは利益率が薄い業種だ。地方では販売量が少なく、固定費を賄いにくい。安全規制への対応や有資格者の確保にもコストがかかる。こうした要因が重なり、次世代への引き継ぎをためらわせている。


ガソリンスタンドは「車の給油所」だけではない

ここが、この問題を理解するうえで最も重要な点だ。

資源エネルギー庁の資料では、石油製品は自家用車の燃料にとどまらない幅広い用途で地域を支えていることが整理されている。具体的には次のようなものだ。

生活面: 高齢者を含む住民の通院・買い物・通勤を支える移動手段の燃料。そして、寒冷地では冬の灯油配送がなければ暖房が止まる。

産業面: 農機、軽トラック、建設機械は農業・林業・建設業の現場で欠かせない。これらはガソリンや軽油で動く。スタンドがなければ、地域の産業基盤そのものが揺らぐ。

防災面: 除雪車、消防車、そして災害復旧にあたる重機——これらもすべて燃料が必要だ。災害が起きた際、近くにスタンドがなければ復旧作業の出足が大幅に遅れる可能性がある。

つまり、スタンドの廃業は「給油が不便になる」という話ではなく、地域の生活・産業・防災を支えるインフラが失われることを意味する。


「SS過疎地」とは何か

こうした状況を象徴するのが「SS過疎地」という概念だ。資源エネルギー庁では、市町村内の給油所が3カ所以下の地域をSS過疎地として把握している。

スタンドが近くにない地域では、最寄りの給油所まで遠距離を走らなければならないケースも出てきている。こうした地域が特に地方部を中心に増えつつあることは、エネルギー庁の資料でも確認できる。ただし、どれほど広がっているかは地域によって大きく異なるため、全国一律に「珍しくなくなった」と断言することは難しい。


国と自治体の対応

この問題に対して、国と地方自治体はそれぞれ手を打ちつつある。

政府(資源エネルギー庁)は、老朽化した設備の改修を後押しする補助金の創設や、業務効率化のための規制緩和を進めている。離島や過疎地を対象とした支援事業も継続して実施されている。

地方自治体では、ガソリンスタンドの減少に相談窓口を設けて対応する動きや、公設スタンドの設置、または公設民営方式(自治体が施設を整備し民間が運営する形)の導入を検討・実施する例が出ている。完全に市場任せでは維持できない地域で、「地域インフラとして残す」という発想が広がりつつある。


個人・地域レベルでできること

国や自治体の対策が進む一方で、地域住民や個人レベルでも考えられる備えがある。

一つは、自家用車の燃料消費を抑えるエコドライブの実践だ。発進時に穏やかにアクセルを踏む、無駄なアイドリングをしないといった習慣が、給油の頻度を減らすことにつながる。

もう一つの選択肢として挙げられることがあるのが、小型EV(電気自動車)の導入だ。ただし、これは万能な解決策ではない。一部の超小型EV・ミニカー規格の車両では、1回の充電で50km前後の走行が可能なものや、100万円前後の価格帯の車種が存在する。しかしこれはあくまで一部の車種の例であり、EV全般に当てはまる数字ではない。実際に地域の移動手段として活用できるかどうかは、充電環境の有無、乗車人数、農作業や送迎といった用途との相性、冬場の性能など、さまざまな条件によって変わる。「地域や用途によっては選択肢になり得る」という理解が適切だ。


Summary

ガソリンスタンドの減少は、30年間で静かに進んできた問題だ。

  • 給油所数はピーク比55%以上の減、揮発油販売業者数はピーク時の約37%まで縮小
  • 背景には燃費向上による需要減、設備老朽化、採算悪化、後継者不足が重なる
  • 問題の本質は「給油の不便」ではなく、移動・農業・防災・灯油配送を含む地域インフラの弱体化
  • 国・自治体は補助金・公設民営など対策を講じているが、地域差が大きく万能な解決策はない
  • EVは有力な選択肢の一つだが、用途・充電環境・地域条件によって有効かどうかは異なる

ガソリンスタンドの減少は、地方の不便の話ではなく、その地域を維持できるかどうかという問題でもある。「近所にまだスタンドがある」うちから、この問題を自分ごととして考えておく意味はそこにある。

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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