ボルボ・カーが約3000人の人員削減を決定 ~関税とEV販売不振が直撃~

ボルボが従業員約7%にあたる3000人削減を発表

スウェーデンを本拠地とする高級車メーカー、ボルボ・カーは2025年5月26日、世界全体の従業員数の約7%に相当する約3000人の人員削減を正式に発表しました。これはボルボの従業員全体にとって非常に大きな影響を及ぼす決断であり、企業が直面している厳しい経営環境を象徴しています。

今回の削減は、主に事務職を中心に行われ、特にスウェーデンの本社オフィスで働く1200人が対象となります。さらに、コンサルタントとして雇用されている約1000人の社員や、その他の地域に所在する従業員も含めて計3000人規模の削減を予定しています。この削減規模は、ボルボの従業員総数から見てかなりの割合を占め、業績悪化に対する緊急の対応策として位置づけられています。

削減の具体的な対象は、オフィスでの管理部門や支援業務を担う事務職が中心であり、生産現場のエンジニアや工場労働者は直接的な対象外と見られています。これは、業務効率化やコスト削減の観点から、間接部門の見直しに重点を置いた戦略と理解できます。

地域別では、スウェーデン本社のほか、欧州や北米などの主要市場にあるオフィスも削減対象に含まれており、世界規模での組織再編が進められる見込みです。人員削減は2025年秋までに段階的に実施される予定で、組織体制の再構築を伴う大規模なリストラとなります。

この発表は、ボルボが直面する経済的なプレッシャーの深刻さを示しており、今後の経営改善に向けた重要な一歩と位置付けられています。企業の持続的成長と競争力維持のため、抜本的な改革が急務であることが鮮明になりました。

トランプ政権の関税政策が与える影響

ボルボ・カーが直面している最大の経営課題の一つが、アメリカのトランプ政権による関税政策です。特に自動車産業に対して課せられた輸入関税は、ボルボの経営に深刻なコスト増をもたらします。トランプ政権は米国の製造業や雇用を守る名目で、外国からの自動車および部品輸入に対して高率の関税導入の動きがあります。この措置は、海外生産比率の高いボルボにとって直接的な経済的打撃となります。

具体的には、ボルボの多くの車両や部品が欧州やアジアの工場で生産されており、それらを米国市場に輸出する際に高額な関税が課せられます。この結果、車両の価格競争力が低下し、販売面でのマイナス影響に加えて、関税分のコスト負担が企業の利益を圧迫しています。また、輸入関税により物流や調達戦略の見直しが必要となり、サプライチェーン全体に複雑さと追加コストが発生しています。

さらに、関税政策の不透明さや突然の変更リスクもボルボの経営判断を難しくしています。関税率や対象品目が頻繁に変動することで、長期的な生産計画や投資判断に影響を及ぼし、企業の収益予測が困難になっているのです。この不確実性は、企業のリスク管理コストを高め、事業戦略の柔軟性を損なう要因となっています。

これらの関税負担は今後のボルボの業績に大きな影響を与えることが懸念されており、経営陣はその不透明さを踏まえ、年間の業績予想の公表を見送るという異例の対応をとっています。なお、2025年1〜3月期の営業利益減少は主にEV販売不振など他の要因によるもので、関税の影響はこの時点ではまだ限定的と考えられます。

このように、トランプ政権の関税政策はボルボのコスト構造を悪化させ、販売面と利益面の双方に大きな逆風を吹き込む様相を呈しています。関税問題への対応が今後の経営改善の重要な鍵となっており、ボルボは組織改革やコスト削減を急ぐ必要に迫られている状況です。

EV販売不振が業績に及ぼす打撃

ボルボ・カーは電気自動車(EV)市場への積極的なシフトを進める中で、業界内でも特に高いEV比率を誇るメーカーの一つです。近年、環境規制の強化や消費者の意識変化を受けて、ボルボは全体の販売に占めるEVの割合を急速に拡大してきました。しかし、2025年に入り、このEV販売が期待ほど伸びず、業績に大きな悪影響を及ぼしている点が大きな課題となっています。

ボルボは従来のガソリン車から電動車への転換を戦略の柱とし、環境対応車の拡充に力を入れてきました。EVの開発や製造には莫大な投資が必要であり、それに見合う販売拡大が不可欠です。しかし、世界的な経済不安や消費者の購買意欲の減退、また競合他社の激しいEV市場参入により、ボルボのEV販売は予想を下回る結果となっています。

特に、ボルボのEVは高級車市場をターゲットとしているため、価格が高めに設定されていることも販売拡大の障壁となっています。加えて、充電インフラの整備状況や電池供給の制約など、外部環境の制約も重なり、需要喚起が思うように進んでいません。この結果、EVの販売不振は収益面での打撃となり、全体の営業利益を押し下げています。

2025年1〜3月期の決算では、EV販売の不振が大幅な営業利益減少の主要因の一つとされており、前年同期比で約60%の利益減少に寄与しています。ボルボはこの状況を踏まえ、投資の見直しやコスト削減策を進めていますが、EV市場の回復なしには持続的な成長は困難とみられています。

このように、ボルボのEV比率の高さは環境対応の先進性を示す一方で、市場環境の変化に対する脆弱性も露呈しています。今後は、販売戦略の再構築や製品ラインナップの多様化、さらには価格競争力の強化など、多面的な対応が求められる状況です。

2025年の業績見通しとリストラ計画の詳細

ボルボ・カーは2025年1〜3月期の決算において、前年同期比で営業利益が約60%減少する厳しい状況を報告しました。この大幅な利益縮小は、主に電気自動車(EV)販売の伸び悩みが原因となっています。営業利益は19億クローナにとどまり、過去数年の成長トレンドから大きく後退しました。

こうした業績悪化の影響で、ボルボは2025年の通期業績見通しを発表することを見送りました。従来は年度の早い段階で業績予想を公表して投資家や市場に透明性を提供してきましたが、現在は関税政策の不確実性や市場環境の変動が激しく、正確な見通しを立てることが困難と判断しています。この措置は、企業の経営環境の厳しさを如実に示しています。

加えて、ボルボはコスト圧縮のためのリストラ計画を積極的に進めています。4月下旬には、約2700億円(180億クローナ)規模のコスト削減を目標に掲げ、人員削減や投資抑制を柱とした計画を公表しました。今回発表された約3000人の人員削減は、このコスト削減策の中核をなすものであり、これにより最大15億クローナの追加的なリストラ費用が発生する見込みです。

リストラは事務職を中心に行われ、特にスウェーデン本社での人員削減が大きな割合を占めています。また、投資面でも一部プロジェクトの見直しや規模縮小が検討されており、短期的な資金繰り改善と収益体質の強化を目指しています。経営陣はこれらの施策が「強固で回復力のある企業体質を築くための重要な一歩」と位置づけており、厳しい経営環境に対応するための必須の対応策としています。

ただし、リストラによるコスト削減効果が業績回復にどの程度貢献するかは、依然として不透明であり、今後の市場動向や関税政策の推移、EV市場の回復が重要なカギとなる見込みです。

CEOサミュエルソン氏のコメントと今後の展望

ボルボ・カーの最高経営責任者(CEO)ホーカン・サミュエルソン氏は、今回の約3000人に及ぶ大規模な人員削減について、「非常に困難な決断だった」と率直な心情を述べています。同氏は、このリストラが短期的には痛みを伴うものの、ボルボの中長期的な競争力強化と企業の持続的成長を実現するために不可欠なステップであると強調しました。

サミュエルソン氏は声明で、「現在の厳しい経済環境や不透明な関税政策、そしてEV市場の変動を乗り越え、より強固で回復力のあるボルボを築くことが最優先課題だ」と述べています。彼の見解では、組織のスリム化と効率化を図ることで、コスト構造を改善し、変化の激しい市場に柔軟かつ迅速に対応できる体制を整えることが重要だとしています。

また、今回の人員削減は単なるコスト削減策に留まらず、ボルボの将来戦略の中核をなす改革の一環として位置づけられています。サミュエルソン氏は、電動化やデジタル化の推進をはじめとした技術革新と製品開発への投資は継続すると明言しており、企業価値の向上と市場シェア拡大を目指す姿勢を鮮明にしました。

加えて、彼は従業員やステークホルダーに対して、企業がこの困難な局面を乗り越え、将来にわたって持続可能な成長を実現するための「重要な転換点」であるとのメッセージを発信しています。リストラは決して終着点ではなく、新たな成長のための再出発として受け止められているのです。

今後の展望としては、トランプ政権の関税政策の動向や世界的なEV需要の回復がボルボの業績回復に大きな影響を与えると見られており、経営陣はこれらの外部環境に柔軟に対応しつつ、社内の改革と革新を加速させていく方針です。サミュエルソン氏のリーダーシップの下で、ボルボは市場競争の激化に立ち向かい、新たな成長軌道を模索していく構えです。

自動車業界におけるボルボの位置づけと競合他社との比較

ボルボ・カーはスウェーデン発祥の高級車メーカーとして、世界の自動車業界において独自のポジションを築いています。特に安全技術と環境対応車の開発で高い評価を受けており、持続可能なモビリティの推進に積極的に取り組んでいることが特徴です。こうした企業姿勢は、多くの競合他社と比較した際のボルボの大きな強みとなっています。

販売面では、ボルボは欧州市場を中心に安定した基盤を持つ一方、北米や中国といった主要市場での存在感も高めてきました。しかし、トヨタ、メルセデス・ベンツ、BMWといった大手高級車ブランドと比較すると、販売規模ではやや小さいものの、ニッチな高付加価値車市場で確固たる地位を確立しています。

EVシフトに関しては、ボルボは業界の中でも先駆的な存在です。2020年代初頭から全車種の電動化を加速し、特に2025年には新車販売の半数以上をEVとする目標を掲げています。これはメルセデス・ベンツやBMWなどの大手ブランドに比べてもかなり積極的な姿勢であり、環境規制が厳しい欧州市場での優位性を狙う戦略です。

一方で、競合他社もEV開発に巨額の投資を続けており、テスラのような専業EVメーカーが市場を席巻する中で競争は激化しています。ボルボの強みは、伝統的な高級車の快適性と安全性を維持しつつ、環境性能を両立させる技術開発力にありますが、価格帯が高めであることや、充電インフラの整備遅れなどの課題も抱えています。

また、ボルボは競合に比べて組織規模が小さく、資金力や生産能力で劣る面もあります。これがEV市場における販売不振の一因ともなっており、規模の経済を活かした効率的な生産やサプライチェーン構築が今後の課題です。

総じて、ボルボは「安全性と環境配慮を重視する高級車ブランド」として明確なブランドイメージを持ちつつ、EVシフトを積極的に推進することで競争力を強化しようとしています。競合他社との比較では規模面で劣るものの、差別化された技術とブランド力で特定顧客層からの支持を維持し、今後の市場変化に柔軟に対応することが求められています。

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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