損害保険とは? 火災保険・地震保険・自動車保険・傷害保険の基本をやさしく整理

火災で家が傷む。地震で建物や家財が壊れる。自動車事故で相手にケガをさせる。こうした出来事は毎日起こるものではないが、いったん起きると家計や事業に大きな負担を残すことがある。

その「もしもの損害」に備えるのが、損害保険である。

保険というと、死亡保険や医療保険のような生命保険を思い浮かべる人も多い。しかし、損害保険は生命保険とは少し考え方が違う。人の死亡や病気そのものに備えるというより、火災、事故、ケガ、賠償責任などによって実際に生じた損害を補う性格が強い。

つまり損害保険は、何かで得をするための保険ではない。思いがけない損害が出たときに、家計や事業への打撃を小さくするための仕組みである。

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生命保険と損害保険は何が違うのか

生命保険と損害保険の大きな違いは、何に備える保険なのかという点にある。

生命保険は、人の死亡、生存、病気、介護などに備える保険である。死亡保険であれば、被保険者が死亡したときに、あらかじめ契約で決めた死亡保険金が支払われる。個人年金保険のように、将来の生活資金に備えるものもある。

一方、損害保険は、火災や事故などによって生じた損害を補償する保険である。代表的なものには、火災保険、自動車保険、傷害保険、賠償責任保険などがある。

ここで押さえておきたいのは、損害保険では「実際に発生した損害を補う」という考え方が基本になることだ。

たとえば、建物が火災で損害を受けた場合、その損害を補うために保険金が支払われる。ただし、実際の損害額を大きく超えて保険金を受け取り、利益を得ることを目的とするものではない。損害保険には、損害を補うという性格があるためである。

この違いを理解しておくと、火災保険や自動車保険の仕組みも見えやすくなる。

損害保険でよく出てくる言葉は何を指すのか

損害保険を理解するには、まず基本用語を整理しておきたい。難しい言葉に見えても、火災保険を例にすると意味はつかみやすい。

契約者

契約者とは、保険会社と保険契約を結ぶ人である。保険料を支払う義務を負い、契約上の権利を持つ人でもある。

たとえば、自宅の火災保険を夫が契約している場合、その夫が契約者になる。

被保険者

被保険者とは、保険事故が発生したときに補償を受ける人、または保険の対象となる人である。

損害保険では、契約者と被保険者が同じ場合もあれば、異なる場合もある。自動車保険や火災保険では、誰が補償を受ける立場なのかを確認しておくことが大切だ。

保険の対象

保険の対象とは、保険をかける対象のことである。

火災保険であれば、建物や家財が保険の対象になる。自動車保険の車両保険であれば、自分の自動車が保険の対象になる。

何に対して保険をかけているのかを確認しないと、事故が起きたときに「対象だと思っていたものが補償されなかった」ということが起こりうる。

保険価額

保険価額とは、保険事故が発生した場合に被るであろう損害の最高見積額をいう。

分かりやすくいえば、保険の対象となる建物や家財などの価値である。火災保険で建物を対象にする場合、その建物の価値が保険価額を考えるうえでの基準になる。

保険金額

保険金額とは、契約時に決める契約金額であり、保険会社が支払う保険金の限度額となる金額である。

たとえば、火災保険で保険金額を2,000万円に設定した場合、原則としてその金額が補償の上限になる。

ただし、保険金額を高く設定すれば、必ずその金額を受け取れるという意味ではない。実際に支払われる保険金は、損害の内容や契約条件によって決まる。

保険金

保険金とは、保険事故が発生したときに、保険会社から被保険者などに支払われる金額である。

保険金額は契約上の上限額、保険金は実際に支払われる金額、と整理すると分かりやすい。

損害保険はどうやって成り立っているのか

損害保険は、多くの人が保険料を出し合い、事故にあった人に保険金を支払う仕組みで成り立っている。

少人数だけでは、誰にいつ大きな損害が発生するか分からず、保険として安定しにくい。しかし、多くの人が加入していれば、事故の発生割合をある程度予測しやすくなる。これが大数の法則の考え方である。

また、保険会社が受け取る保険料の総額と、支払う保険金や運営に必要な費用とのバランスが取れていなければ、保険制度は長く続かない。これが収支相等の原則につながる。

さらに、損害保険では、危険度に応じた保険料を負担するという考え方もある。事故が起きる可能性が高いもの、損害が大きくなりやすいものは、保険料も高くなりやすい。これを給付・反対給付均等の原則という。

そして、損害保険で特に重要なのが、利得禁止の原則である。

損害保険は、実際に生じた損害を補うための保険であり、保険によって利益を得るためのものではない。そのため、原則として実際の損害額を超える保険金を受け取ることはできない。

このように、損害保険は「損害が出たときに、その損害を補う」という考え方を基本にしている。これを実損払い、または実損てん補という。

保険金額は多ければ多いほど安心なのか

損害保険では、保険金額と保険価額の関係が重要になる。

保険金額とは、契約で決める補償の上限額である。保険価額とは、保険の対象となる建物や家財などの価値である。この2つの関係によって、保険の掛け方は大きく3つに分けられる。

超過保険

超過保険とは、保険金額が保険価額よりも大きい保険である。

たとえば、価値が2,000万円の建物に対して、3,000万円の保険金額を設定しているようなケースである。

この場合、保険金額を高く設定しているからといって、実際の損害額を超えて保険金を受け取れるわけではない。損害保険には利得禁止の原則があるため、実際に生じた損害を超える保険金は支払われない。

必要以上に高い保険金額を設定すると、保険料が無駄に高くなる可能性がある。

全部保険

全部保険とは、保険金額と保険価額が同じ保険である。

保険の対象となる建物や家財の価値に見合った金額で保険を掛けている状態であり、損害が発生した場合には、契約の範囲内で実際の損害を補いやすい。

損害保険では、対象となるものの価値に応じて、適正な保険金額を設定することが大切である。

一部保険

一部保険とは、保険金額が保険価額よりも小さい保険である。

たとえば、価値が2,000万円の建物に対して、1,000万円の保険金額しか設定していないようなケースである。

この場合、保険料は抑えられるかもしれないが、事故が起きたときに十分な補償を受けられない可能性がある。契約内容によっては、損害額に対して保険金が比例的に減らされることもある。

保険金額が少なすぎると、いざというときに自己負担が大きくなる。損害保険では、保険料の安さだけでなく、必要な補償額が確保されているかを確認することが重要だ。

損害保険にはどんな種類があるのか

損害保険には多くの種類がある。名前だけを見ると複雑に感じるが、「何を守る保険か」で整理すると分かりやすい。

火災保険は家や家財の損害に備える

火災保険は、火災などによって建物や家財に生じた損害を補償する保険である。

火災保険という名前から、火事だけを対象にする保険と思われがちだが、実際には落雷、風災、水濡れなどが補償対象になる場合もある。住宅を持っている人だけでなく、賃貸住宅に住んでいる人にとっても関係の深い保険である。

ただし、補償範囲は契約内容や商品によって異なる。地震、噴火、津波による損害は、原則として火災保険だけでは補償されない。地震による火災で建物が焼けた場合でも、火災保険だけでは補償されないケースがある。

このため、地震リスクに備えるには、火災保険とは別に地震保険を確認する必要がある。

地震保険は地震・噴火・津波による損害に備える

地震保険は、地震、噴火、津波によって居住用の建物や家財に生じた損害に備える保険である。

日本は地震の多い国であり、住宅や家財に大きな被害が出る可能性がある。火災保険だけでは地震による損害に対応できないため、地震保険の役割は大きい。

地震保険は、単独で加入する保険ではなく、火災保険に付帯する形で加入する。

地震保険は、火災保険と比べると補償額の設定に制限がある。地震による損害は広い地域で同時に発生しやすく、保険制度全体でリスクを支える必要があるためである。

火災保険と地震保険は、住宅のリスクを考えるうえであわせて理解しておきたい保険である。

自動車保険は交通事故による損害に備える

自動車保険には、大きく分けて自賠責保険と任意保険がある。

自賠責保険は、自動車や原動機付自転車を運行する場合に加入が義務づけられる保険である。交通事故の被害者救済を目的とした保険であり、補償の対象は主に対人賠償に限られる。

つまり、自賠責保険では、事故の相手の車や建物などを壊した場合の対物損害は補償されない。また、自分の車の修理代も対象にならない。

そこで、自賠責保険だけでは不足する部分を補うために、任意の自動車保険に加入することが一般的である。

任意保険には、相手を死傷させた場合に備える対人賠償保険、相手の物を壊した場合に備える対物賠償保険、自分や同乗者のケガに備える人身傷害補償保険、自分の車の損害に備える車両保険などがある。

自動車保険は、保険の種類が多く見えるが、基本的には「相手への賠償」「自分や同乗者のケガ」「自分の車の損害」に分けて考えると整理しやすい。

傷害保険は日常生活や旅行中のケガに備える

傷害保険は、日常生活や旅行中などに起きた偶然の事故によるケガに備える保険である。

ここでいうケガとは、一般に「急激かつ偶然な外来の事故」によって身体に傷害を受けた場合を指す。転倒、交通事故、旅行中の事故などが典型的な例である。

傷害保険には、普通傷害保険、家族傷害保険、交通事故傷害保険、国内旅行傷害保険、海外旅行傷害保険などがある。

普通傷害保険は、国内外を問わず日常生活で起こるケガを補償する。家族傷害保険は、1つの契約で家族全員のケガに備える保険である。旅行傷害保険は、旅行中のケガやトラブルに備える保険であり、国内旅行向けと海外旅行向けがある。

傷害保険を考えるときは、どのような場面のケガを対象にするのかを確認することが大切だ。日常生活なのか、交通事故なのか、旅行中なのかによって、適した保険は変わる。

賠償責任保険は他人に損害を与えたときに備える

賠償責任保険は、他人にケガをさせたり、他人の物を壊したりして、法律上の損害賠償責任を負った場合に備える保険である。

身近な例では、自転車で歩行者にぶつかってケガをさせた場合や、子どもが他人の物を壊してしまった場合などがある。こうした日常生活の賠償リスクに備えるものとして、個人賠償責任保険がある。

個人賠償責任保険は、自動車保険や火災保険の特約として付けられることも多い。単独で意識しにくい保険だが、日常生活のリスクを考えるうえで確認しておきたい保険である。

一方、事業者向けの賠償責任保険もある。たとえば、製造・販売した製品の欠陥によって他人に損害を与えた場合に備えるPL保険、施設の管理不備による事故に備える施設所有管理者賠償責任保険、工事や作業中の事故に備える請負業者賠償責任保険などである。

賠償責任保険は、「自分の損害」ではなく、「他人に与えた損害への責任」に備える保険と考えると分かりやすい。

収入や事業活動の停止に備える保険もある

損害保険には、火災保険や自動車保険のように身近なものだけでなく、収入や事業活動に関係する保険もある。

たとえば、所得補償保険は、病気やケガによって働けなくなった場合の収入減少に備える保険である。会社員、自営業者、フリーランスなど、働けなくなることが家計に大きく影響する人に関係する保険である。支払条件や補償内容は商品によって異なるため、加入時には内容を確認する必要がある。

企業向けには、労働災害総合保険、企業費用・利益保険、機械保険、建設工事保険などがある。これらは、従業員の労災、企業活動の停止、機械の故障、建設中の建物の損害などに備える保険である。

個人向けの保険と企業向けの保険では、守る対象が異なる。しかし、どちらも「偶然の事故や損害による経済的な負担を軽くする」という点では共通している。

損害保険は「何を守るか」で整理すると分かりやすい

損害保険は種類が多いため、名前だけを覚えようとすると分かりにくくなる。

大切なのは、それぞれの保険が「何を守るための保険なのか」を整理することである。

家や家財を守る保険には、火災保険や地震保険がある。車の事故に備える保険には、自賠責保険や任意の自動車保険がある。自分や家族のケガに備える保険には、傷害保険がある。他人に損害を与えたときの賠償責任に備える保険には、個人賠償責任保険や事業者向けの賠償責任保険がある。収入や事業活動の停止に備える保険には、所得補償保険や企業費用・利益保険などがある。

このように分類して考えると、損害保険の全体像はつかみやすくなる。

保険を考えるときは、まず自分の生活や仕事にどのようなリスクがあるのかを整理することが大切である。そのうえで、すでに加入している保険でどこまで備えられているのか、不足している部分はないかを確認していく。

損害保険は、すべてを一度に覚える必要はない。まずは、火災保険、地震保険、自動車保険、傷害保険、賠償責任保険という大きな分類をおさえ、自分に関係の深い保険から少しずつ理解していけばよい。

(本稿は各種公開情報をもとに作成した。一部数値は記事掲載時点の情報である)

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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