東京23区の中古マンション価格が、2026年5月に70平方メートル換算の平均で1億2849万円に達した。不動産調査会社の東京カンテイが公表したデータによるもので、広さの違う物件を70平方メートルあたりに直して比べた平均価格だ。
これは「東京23区の中古マンションがすべて1億円を超えた」という意味ではない。高額物件の影響を受ける平均値であり、実際の購入価格はエリア、駅距離、築年数、管理状態、成約価格との違いで大きく変わる。
それでも、この数字が重いのは、住宅価格だけが上がっている話ではないからだ。賃貸の募集家賃も上昇し、住宅ローンを取り巻く金利環境にも変化が出ている。都市部では、買う、借りる、築古を選ぶ、長期ローンを組むという選択のどれにも、別の負担がついて回る局面になっている。
1億2849万円は「平均価格」であり、購入判断の答えではない
東京カンテイの資料では、2026年5月の東京23区中古マンション70平方メートル換算価格は1億2849万円だった。前月比でも上昇し、東京23区では上昇基調が続いている。
ただし、平均価格だけで市場全体を判断すると誤解しやすい。都心の高額物件が平均を押し上げる一方で、個別の物件では値下げや販売期間の長期化が起きることもある。東京カンテイの資料でも、都心部では価格調整をうかがわせる動きが示されている。
住宅ニュースで確認したいのは、見出しの価格だけではない。売り出し価格なのか、成約価格なのか。70平方メートル換算なのか、実際の物件価格なのか。自分が検討するエリアや築年数では、どの価格帯で取引が成立しているのか。ここを分けないと、平均値に引っ張られた判断になりやすい。
家賃も上がるが、「買えば解決」とは言い切れない
不動産情報サービスのアットホームは、2026年5月の募集家賃動向で、東京23区のシングル向けマンション家賃が24カ月連続で2015年1月以降の最高値を更新したとしている。ここでいう募集家賃は入居者を募集する際の家賃であり、実際の契約家賃や既存入居者の家賃が同じ幅で上がったという意味ではない。
それでも、賃貸に住み続ける負担が重くなれば、「買ったほうがよいのでは」と考える人は増える。問題は、購入後の支出が住宅ローン返済だけでは終わらないことだ。
マンションを買えば、管理費、修繕積立金、固定資産税、保険、設備交換、リフォーム費用が加わる。修繕積立金は共用部分の修繕に備えて毎月積み立てる費用で、築年数が進むほど増額や一時金の論点が出やすい。
賃貸には、更新時の家賃上昇や住み替え費用、希望エリアで物件を見つけにくくなる負担がある。購入には、金利、修繕、資産価値、売却時期の負担がある。家賃上昇だけを理由に購入を急ぐと、別の固定費を見落とすことになる。
金利環境が変わると、借入額より返済余力が重くなる
住宅ローンは、物件価格だけでなく金利によって家計への重さが変わる。海外報道では、日銀の金融政策をめぐる変化も伝えられているが、日銀の公式資料で確認できる範囲を超えて、政策金利の水準や住宅ローンへの影響を断定するのは避けたい。
確かなのは、低金利を前提に大きな借入額を組みやすかった環境から、返済余力をより細かく確認する局面に移っていることだ。変動金利型ローンでは、金融機関ごとの金利見直し時期や返済額変更のルールが家計に関わる。固定金利は当初負担が重く見えやすい一方、将来の金利上昇を避ける役割がある。
「借りられる金額」と「生活を崩さず返せる金額」は違う。教育費、医療費、親の介護、転職や収入減に備える余力まで含めると、月々の返済額だけでなく、返済総額と家計の耐久力が判断材料になる。
月々の返済を抑えるローンは、最後にどう返すかまで確認したい
住宅価格が上がるなか、月々の返済負担を抑える住宅ローン商品も出ている。住信SBIネット銀行は2026年6月1日から、期日一括返済併用型住宅ローンの取り扱いを始めた。公式発表では、東京23区、横浜市・川崎市、大阪市の担保評価額1億円以上の新築・中古マンションなどが対象で、前年年収1000万円以上などの条件が示されている。
期日一括返済併用型住宅ローンは、通常の毎月返済に加え、元金の一部を将来の期日にまとめて返す仕組みを組み合わせたものだ。月々の返済を抑える選択肢として位置づけられる一方、返済負担そのものが消えるわけではない。
記事として注意したいのは、公式発表で確認できる商品条件と、家計側のリスクを分けて読むことだ。最終期日にまとまった資金をどう用意するのか。売却、貯蓄、退職金、借り換えなどを想定する場合、その前提が崩れたときにどうなるのか。物件価格が下がる、希望時期に売れない、収入が変わるといった場面も確認材料になる。
返済期間を長くするローンも、月々の支払いを軽く見せる効果がある。ただ、利息を払う期間は長くなり、総返済額や完済時年齢の問題が残る。ローンの比較では、当初返済額だけでなく、最後に何を原資に返すのかまで見ておきたい。
築古リノベは選択肢になるが、室内の見た目だけでは判断できない
新築や築浅マンションが高くなると、築年数の古い中古マンションを買い、内装や設備をリノベーションする選択肢が現実味を持つ。希望エリアで広さを確保しやすく、取得価格を抑えられる場合もある。
ただし、築古マンションの負担は室内だけでは決まらない。専有部分をきれいにしても、建物全体の耐震性、配管、エレベーター、外壁、屋上防水、長期修繕計画、管理組合の運営状況は別に確認する項目だ。
修繕積立金が低い物件は毎月の支払いが軽く見えるが、将来の増額や一時金につながることがある。リノベーション費用を住宅ローンに含めるのか、別のローンにするのかでも返済額は変わる。
築古リノベは、高騰する住宅市場で有力な選択肢になりうる。ただ、安く買えるかどうかだけでなく、建物全体を維持する費用をどれだけ引き受けるのかを見ないと、総住居費は読みにくい。
急ぐ前に、都心部の価格調整も確認材料になる
東京23区全体の平均価格は上がっているが、市場を一方向で見るのは危うい。都心部では、前月比の下落や売りづらさを示す動きも確認されている。
不動産価格は、平均値、売り出し価格、成約価格で見え方が変わる。売主が高い価格を出していても、実際には値下げ交渉が入ることがある。販売期間が長引けば、表面上の価格と買い手の実感に差が出る。
家賃上昇が続くと、「今買わないとさらに高くなる」という心理が強まりやすい。だが、少なくとも家計面では、住宅は日々の生活基盤でもある。急いで購入を決める前に、自分の候補エリアで成約価格、管理状態、修繕費、ローン条件がどうなっているかを並べて確認したい。
価格だけでなく、総住居費と返済の出口が判断材料になる
都市部では、住宅価格、募集家賃、ローン金利、管理費、修繕費を同時に見る必要が強まっている。購入か賃貸かという二択ではなく、どの負担を、どの時期に、どれだけ引き受けるかという問題になっている。
購入を考えるなら、月々の返済額だけでなく、金利が上がった場合、修繕積立金が増えた場合、収入が減った場合の余力を確認したい。賃貸を続けるなら、更新時の家賃や住み替え費用が固定費にどう響くかが焦点になる。築古リノベを選ぶなら、物件価格よりも管理状態と長期修繕計画が土台になる。
今回の住宅費上昇は、東京23区だけの高額マンションニュースに見えて、実際には都市部で暮らす家計の固定費の話だ。次に確認したいのは、見出しの価格がさらに上がるかどうかだけではない。自分の生活圏で、家賃、ローン、修繕、税金、将来売却を含めた総住居費がどこまで耐えられる水準なのか。そこを分けて見られるかが、金利環境が変わる時代の住まい選びを左右する。
出典・参考
主な参照資料
- 東京カンテイ「三大都市圏・主要都市別/中古マンション70平方メートル価格月別推移」 https://www.kantei.ne.jp/report/70m2/9044/
- アットホーム「全国主要都市の賃貸マンション・アパート募集家賃動向」 https://www.athome.co.jp/corporate/news/data/market/chintai-yachin-202605/
- 住信SBIネット銀行「期日一括返済併用型住宅ローン」取扱開始に関する公式発表 https://www.netbk.co.jp/contents/company/press/2026/0601_005778.html
- AP Newsによる日本の金融政策に関する報道 https://apnews.com/article/7646f3c0e0d30ef6c75925b5eecc9014

