公的年金の給付とは?老齢・障害・遺族年金の種類と受け取り方をやさしく整理

公的年金と聞くと、老後に受け取る給付を思い浮かべる人が多い。しかし実際の公的年金は、老後の生活保障だけでなく、病気やけがで働きにくくなったときの支えや、家族が亡くなったあとの生活保障まで含んだ仕組みになっている。会社員と自営業では関わる制度が異なり、複数の給付が重なると調整が入る場合もある。

この記事では、公的年金の給付全体を大きく整理しながら、老齢給付、障害給付、遺族給付の違いと見方を確認する。細かな受給要件や計算方法は制度ごとに異なるため、まずは全体像をつかむための見取り図として読んでほしい。

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公的年金の給付は大きく3種類ある

公的年金の給付は、大きく次の3種類に分けられる。

  • 老齢給付:高齢期に受け取る年金
  • 障害給付:病気やけがで生活や就労に支障が生じたときの年金
  • 遺族給付:被保険者や受給者が亡くなったあと、残された家族に支給される年金

「年金は老後のもの」という印象は強いが、障害給付や遺族給付も同じ公的年金制度の中にある。現役世代にとっても無関係ではない制度だ。

給付ごとに支給が始まる場面が違う

3種類の給付は、それぞれ支給が始まる場面が異なる。老齢給付は一定の年齢に達したとき、障害給付は障害状態が一定の基準に達したとき、遺族給付は被保険者などが亡くなったときに発生する。まずは「どの場面の給付か」で分けて考えると、制度全体の構造を理解しやすい。

老後にもらう年金

老齢給付には、国民年金を土台とした老齢基礎年金と、厚生年金加入者に上乗せされる老齢厚生年金がある。同じ老後の年金でも、制度の性格と対象者は異なる。

老齢基礎年金は公的年金の土台

老齢基礎年金は、国民年金の仕組みを土台とする給付だ。自営業者、フリーランス、会社員、公務員、専業主婦(夫)を含め、国民年金の被保険者であった人が対象になる。原則として65歳から受け取れ、保険料納付済期間と免除期間などを合算した受給資格期間が10年以上あることが条件だ。

老齢厚生年金は会社員や公務員の上乗せ部分

老齢厚生年金は、厚生年金に加入したことがある人に支給される。会社員や公務員は、老齢基礎年金に加えて老齢厚生年金を受け取る形になる。金額は加入期間と給与、賞与に応じて変わるため、同じ年代でも受給額に差が出る。

自営業か会社員かで受け取れる年金の幅は変わる

自営業者やフリーランスでは老齢基礎年金が中心になりやすい。一方、厚生年金に加入していた会社員や公務員は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の両方が視野に入る。老後資金の差が出やすい背景には、この制度設計の違いがある。

受け取り方には繰上げ、繰下げ、在職老齢年金もある

老齢給付には、受給開始時期を前後に動かす仕組みもある。65歳より前に受け取り始める繰上げ受給は年金額が減額され、65歳より後に受け取り始める繰下げ受給は年金額が増額される。また、働きながら老齢厚生年金を受け取る場合は、賃金と年金額に応じて支給が調整される在職老齢年金もある。

病気やけがで生活を支える年金

障害給付は、病気やけがが原因で一定の障害状態になったときに支給される年金だ。事故だけが対象ではなく、病気による障害も幅広く含まれる。

障害年金は病気でも対象になる

障害年金は、がん、うつ病、糖尿病による人工透析、心疾患などでも対象になりうる。身体障害者手帳がなければ受けられないと思われがちだが、手帳の等級と障害年金の等級は別の基準で判定されるため、手帳がなくても受給の可能性はある。

障害基礎年金と障害厚生年金の違い

障害給付にも、基礎部分と上乗せ部分がある。

  • 障害基礎年金:初診日が国民年金加入中、20歳前、または日本国内に住む60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間にある場合に対象となりうる
  • 障害厚生年金:初診日に厚生年金に加入していた場合に対象となる

ここで重要なのは、障害基礎年金は1級と2級、障害厚生年金は1級から3級まであることだ。会社員などが障害状態になった場合、1級か2級なら障害基礎年金と障害厚生年金の両方が対象になりうるが、3級は障害厚生年金だけになる。

初診日と保険料納付要件が大きな分かれ目になる

障害年金では、初診日が非常に重要だ。どの制度にいたときの病気やけがかによって、対象となる給付が変わる。加えて、原則として保険料納付要件も問われる。ただし、20歳前に初診日がある場合などは扱いが異なるため、制度の入口で迷いやすい。

障害給付は現役世代にも直結する

老齢給付と違い、障害給付は高齢期まで待たずに関わる可能性がある。若い世代でも、病気やけがによって生活や就労が大きく制限されれば対象になりうる。公的年金は老後だけの制度ではないと分かる典型が、この障害給付だ。

家族に支給される年金

遺族給付は、公的年金の被保険者や受給者が亡くなったときに、残された家族の生活を支えるための給付だ。亡くなった人の年金をそのまま受け継ぐ仕組みではなく、遺族に対して新たに支給が始まる制度として設計されている。

遺族年金は相続とは別の制度

被保険者が亡くなっても、その人が将来受け取るはずだった老齢年金の権利が、そのまま遺族に移るわけではない。遺族給付は相続とは別の制度であり、受給できるかどうかは遺族側の要件で決まる。

遺族基礎年金と遺族厚生年金の違い

遺族給付にも基礎部分と上乗せ部分がある。

  • 遺族基礎年金:一定の要件を満たす「子のある配偶者」または「子」に支給される
  • 遺族厚生年金:厚生年金加入者などが亡くなったとき、一定の遺族に支給される

遺族基礎年金は「子がいること」が大きな条件になるため、子のいない配偶者は対象外になる場合がある。一方、遺族厚生年金は配偶者や子などが対象となり、遺族基礎年金より広い。

遺族厚生年金は亡くなった人の厚生年金記録をもとに計算される

遺族厚生年金の年金額は、原則として死亡した方の老齢厚生年金の報酬比例部分の4分の3を基礎に計算される。遺族給付は相続ではないが、遺族厚生年金の金額は亡くなった人の厚生年金の記録と無関係ではない。

寡婦年金や死亡一時金という制度もある

国民年金の第1号被保険者を中心に、遺族基礎年金とは別に寡婦年金and 死亡一時金が関わる場合もある。いずれも受給要件が細かく決まっているため、該当しそうな場合は個別に確認したい。

遺族給付は家族構成と加入歴で内容が変わる

遺族給付は、亡くなった人の加入歴、遺族の続柄、子の有無、年齢などによって受け取れる内容が大きく変わる。同じ「遺族年金」でも、誰でも同じ額を受け取れる制度ではない。

複数の年金や給付が重なったときの併給調整

複数の給付の受給要件が同時に満たされることは珍しくない。たとえば、障害年金を受け取りながら老齢年金の受給年齢に達する場合や、配偶者の死亡によって遺族年金の受給権が生じた一方で、自分の老齢年金も受け取る場合などだ。

公的年金は原則として調整の仕組みがある

公的年金には、複数の給付が重なったときにそのまま全額を上乗せして受け取るのではなく、組み合わせごとに調整する考え方がある。ただし、これを単純に「1人1年金」と覚えると実務の姿を見誤りやすい。老齢基礎年金と老齢厚生年金のように、制度上セットで受け取る組み合わせもあるからだ。

65歳以後の遺族厚生年金は自分の老齢厚生年金との調整が入る

65歳以後に遺族厚生年金と自分の老齢厚生年金の両方の受給権がある場合は、単純にどちらか一方だけになるわけではない。自分の老齢厚生年金は全額支給され、そのうえで遺族厚生年金について所定の比較計算が行われる仕組みになっている。ここは誤解が多い部分なので、個別に確認する価値が高い。

年金以外の給付とも調整が生じることがある

公的年金は、他の社会保険制度の給付と重なる場合がある。たとえば、老齢年金と雇用保険の失業等給付、障害年金と健康保険の傷病手当金、障害給付や遺族給付と労災保険の給付などでは、制度ごとに調整の仕組みが設けられている。

自分に関係する年金を確認するときの見方

公的年金は複数の給付が絡み合っているが、順番に見れば整理しやすい。

まずは老後、障害、死亡のどの場面かを見る

  • 老後の生活資金を考えたいなら 老齢給付
  • 病気やけがで働けなくなったときが不安なら 障害給付
  • 家族が亡くなったあとの生活保障が気になるなら 遺族給付

次に国民年金だけか、厚生年金にも加入していたかを見る

同じ老齢給付でも、国民年金のみの加入者と厚生年金加入者では受け取れる給付の幅が異なる。障害給付も遺族給付も同じで、厚生年金の加入歴があるかどうかが大きな分かれ目になる。

複数の給付が重なりそうなら早めに確認する

障害状態にありながら老齢年金の受給年齢に近づいている場合や、遺族年金と自分の老齢年金が重なりそうな場合は、早めに併給調整まで含めて確認したい。思い込みで判断すると、制度の取りこぼしや誤解につながりやすい。

各制度を詳しく知りたい人へ

この記事では、公的年金の給付全体の構造を整理した。さらに詳しく知りたい場合は、次の論点ごとに確認すると理解しやすい。

老後の年金を詳しく知りたい人
– 老齢基礎年金とは
– 老齢厚生年金とは
– 繰上げ受給と繰下げ受給の仕組み
– 在職老齢年金とは

病気やけがで受け取る年金を詳しく知りたい人
– 障害基礎年金と障害厚生年金の違い
– 初診日と保険料納付要件の見方
– 障害等級1級、2級、3級の違い

家族が亡くなったときの年金を詳しく知りたい人
– 遺族基礎年金と遺族厚生年金の違い
– 寡婦年金と死亡一時金とは
– 中高齢寡婦加算と経過的寡婦加算とは

複数の給付が重なる場合を知りたい人
– 公的年金の併給調整とは

制度の細部は例外も多いため、実際の請求や見込み額の確認では日本年金機構や年金事務所の案内もあわせて確認したい。

(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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