均等法40年、女性が「働くこと」は当たり前になったのに賃金と管理職の格差が残る理由

1986年4月1日に施行された男女雇用機会均等法が、2026年4月で40年を迎えた。この40年で、女性が働き続けること自体は珍しいことではなくなった。だが、正規雇用にとどまれるか、賃金がどこまで伸びるか、管理職に届くかという段階になると、壁はなお厚い。なぜ進まないのか。そして2026年4月1日に施行された改正女性活躍推進法は、何を変えようとしているのか。

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均等法が変えたのは「差別を許さない」という職場の前提

均等法ができる前の日本では、採用、配置、昇進の各段階で女性に不利な扱いが当たり前のように残っていた。結婚や出産を機に退職することを前提にした雇用慣行も広く、4年制大学を出た女性が就ける仕事も限られていた。

均等法は、そうした状態に対して、雇用の場で性別を理由に不利益な扱いをしてはならないという原則を持ち込んだ。施行当初は努力義務にとどまる部分もあったが、1997年改正で差別禁止規定は強化された。その後の改正や指針整備を通じて、セクシュアルハラスメント対策、妊娠・出産等を理由とする不利益取扱いの禁止、妊娠・出産等ハラスメント対策なども拡充されてきた。

均等法の意義は大きい。少なくとも、女性は補助的な働き手だという発想を法制度の上で否定し、女性が職業キャリアを自分の意思で選ぶ土台をつくったからだ。

40年で「働き続けること」は当たり前になった

変化は数字にも表れている。厚生労働省の整理では、女性の就業率は各年齢階級で上昇が続き、かつて30代から40代で大きく落ち込んでいた「M字カーブ」は台形に近づいた。第1子出産後も約7割の女性が就業を継続するようになり、結婚や出産を機に職場を去ることが当然視されていた時代とは景色が変わった。

この変化を支えたのは均等法だけではない。1991年制定の育児休業法、その後の育児・介護休業制度の拡充、短時間勤務制度の整備などが重なり、働き続けるための制度的な支えが厚くなった。女性が仕事を持つこと自体を特別扱いしない空気は、この40年で確かに広がった。

壁は「働き続けた先」に残っている

ただ、問題は消えていない。就業率は上がっても、正規雇用として働き続けられるか、賃金が上がるか、管理職に届くかという局面で差が残る。

典型的なのが、出産・育児期に重なる年代で女性の正規雇用比率が低下する構造だ。就業そのものは継続できても、短時間勤務やパートタイムへの移行によって、昇進や賃金上昇のコースから外れやすい。かつての「M字カーブ」が就業継続の問題だったとすれば、いま表面化しているのは「働き続けても条件が伸びにくい」という問題だ。

賃金格差もなお大きい。厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査では、一般労働者の賃金水準を男性100とした場合、女性は75.8だった。差は縮小傾向にあるが、なお4分の1近い開きがある。

この差は、同じ仕事で単純に男女別の賃金表を当てているという話ではない。背景として指摘されるのが、管理職に就く割合の差、正規・非正規の構成比の差、育児期の就業調整、長時間労働を前提にした昇進慣行などだ。個々の制度が少しずつ改善しても、企業の運用や職場文化が変わらなければ差は残りやすい。

国際的に見ても、日本の状況はなお厳しい。OECDの男女賃金格差指標では、日本は21.3%で、OECD平均の11.6%を大きく上回る。世界経済フォーラムの2025年版ジェンダー・ギャップ報告書でも、日本は148か国中118位だった。

管理職比率の低さも象徴的だ。厚生労働省の令和6年度雇用均等基本調査では、企業の課長相当職以上(役員を含む)に占める女性の割合は13.1%にとどまった。女性が働くことは当たり前になっても、意思決定の場に届く割合はまだ低いままだ。

2026年4月の改正女性活躍推進法は何を変えるのか

ここで重要になるのが、均等法と女性活躍推進法の違いだ。均等法が「差別をしてはいけない」という最低限のルールだとすれば、女性活躍推進法は「実際に女性が活躍できているかを企業ごとに見える化し、改善を促す」ための仕組みだ。

女性活躍推進法は2016年に施行された。2022年には、常時雇用する労働者101人以上の企業まで、一般事業主行動計画の策定・届出と情報公表の義務が広がっている。そのうえで、2026年4月1日施行の改正では、101人以上の企業に対して男女間賃金差異と女性管理職比率の公表を必須化した。301人以上の企業では、この2項目に加えてさらに2項目以上、101人以上300人以下の企業ではさらに1項目以上の公表が求められる。

改正のポイントはそれだけではない。女性の健康上の特性への配慮が、女性活躍の推進に当たっての基本原則として明記された。月経、妊娠、更年期など、女性特有の健康課題が就業継続やキャリア形成に影響しうることを、政策の前提として正面から位置付けた形だ。

つまり今回の改正は、女性活躍を「努力目標」のままにせず、企業ごとの実態を外から見える状態に近づける意味を持つ。採用したかどうかではなく、賃金や管理職登用でどこまで差が残っているかを問う段階に入ったともいえる。

問われているのは制度より運用の質だ

40年を振り返ると、日本の職場は確かに変わった。女性が働くこと自体を否定する時代ではない。だが、子育て期に一時的にペースを落とした人がその後に再挑戦しやすい人事制度になっているか、管理職が育児や介護を抱える部下を支えられるか、男性が家庭責任を分担しやすい職場になっているかといった点では、なお変化の余地が大きい。

制度の骨格は整ってきた。次に問われるのは、その制度を現場でどう運用するかだ。2026年4月の改正女性活躍推進法は、企業に数字を出させることで、その運用の質を見えるようにする一歩にすぎない。均等法40年の節目は、日本の職場が本当に変わるかどうかを測る次の段階に入ったことを示している。

(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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