「春になれば野菜は安くなる」。そんな感覚があると、2026年4月の野菜相場はやや意外に映るかもしれない。農林水産省が2026年3月31日に公表した4月の野菜価格見通しでは、じゃがいもとたまねぎは平年を上回って推移する見込みだ。一方、キャベツやレタスなどの葉物は平年を下回る見通しで、同じ春の野菜でも値動きがはっきり分かれている。
この二極化を生んでいるのは、足元の天気だけではない。背景には、2025年夏の北海道で起きた高温と少雨の影響が残っている。
平年比の見方を先に押さえる
農水省の見通しでいう「平年比」は、前年同月比ではなく直近5か年平均との比較だ。対象は東京都中央卸売市場に出荷される野菜の卸売価格で、スーパーの店頭価格とは値幅もタイムラグも異なる。ただ、卸売段階の動きは店頭価格の方向感を読む手がかりにはなる。
実際、農水省の食品価格動向調査では、2026年2月2日の週のたまねぎ全国平均小売価格は534円/kgで、平年比158%だった。卸売見通しの高止まりは、すでに家計の実感と離れていない。
じゃがいもとたまねぎが高い理由
農水省の4月見通しによると、じゃがいもの主産地は鹿児島県が64%、北海道が31%、たまねぎは北海道が61%、佐賀県が22%だ。ここから見えてくるのは、旧産地と新産地の両方で供給が伸びにくい構図である。
まず北海道産だ。農水省は、ばれいしょとたまねぎについて、2025年夏の高温と干ばつの影響で出荷数量が減少していると説明している。気象庁も2025年夏について、日本の平均気温が統計開始以降で最も高く、北日本太平洋側や東日本太平洋側では降水量がかなり少なかったとまとめている。前年夏の気象条件が、春先まで残る貯蔵系野菜の供給に影を落としている形だ。
4月は産地の切り替わり期でもある。じゃがいもは鹿児島県産、たまねぎは佐賀県産の比重が高まるが、こちらも順風ではない。農水省は、鹿児島県産のばれいしょについて冬季の降雪の影響で生育が遅れているとし、佐賀県産のたまねぎも冬季の低温と乾燥の影響で生育が遅れているとしている。北海道産の減少分を、新産地がすぐには補いきれない。
つまり、春なのに値段が下がりにくいのは、今まさに天候不順が起きているからというより、昨夏から続く供給の弱さが春の相場まで持ち越されているためと読める。
高値は4月だけの話ではない
じゃがいもとたまねぎの高値見通しは、4月に突然始まったわけではない。農水省の月次見通しを追うと、両品目は2026年1月、2月、3月、4月と4か月連続で平年を上回る見通しになっている。短期の乱高下というより、季節をまたいだ高止まりとして受け止めるほうが実態に近い。
葉物が安くなるのはなぜか
一方で、キャベツ、レタス、ねぎ、はくさいは4月に平年を下回る見通しだ。農水省は、関東地域の主産地で2月下旬以降に降雨があり、気温も上昇したことで生育が回復したと説明している。
キャベツは神奈川県、愛知県、千葉県、レタスは茨城県が主産地だ。これらの品目は、貯蔵在庫を長く持ち越すというより、その時点の生育と出荷状況が価格に反映されやすい。春先の天候回復がそのまま値下がり方向に働いたといえる。
同じ野菜でも、貯蔵系のじゃがいも・たまねぎと、葉物野菜では価格が動く仕組みが違う。2026年4月の相場は、その違いが見えやすい局面になっている。
先行きの焦点
農水省の4月見通しは、主産地や卸売会社への聞き取りをもとにした予測だ。現時点で確実にいえるのは、4月についてはじゃがいもとたまねぎが高止まりし、葉物は比較的買いやすい価格帯が見込まれるということだ。
今後の焦点は、鹿児島県産と佐賀県産の出荷がどの程度伸びるかにある。新産地の出回りが想定より早く進めば相場が落ち着く余地はあるが、現時点ではその時期を断定できる材料はまだ薄い。
(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

