三菱マテリアルがレアアースの中流工程に照準を合わせた背景

三菱マテリアル(5711)は2026年3月31日、米ReElement Technologiesへの出資と、レアアース・レアメタルのリサイクルで日米連携に関する覚書の締結を公表した。米国で重要鉱物サプライチェーンの強化を進めつつ、将来的には日本での共同事業化も検討するという。

一見すると、日本企業がアメリカの新興企業に資本参加した案件に見える。だが、注目すべきなのは出資先そのものより、三菱マテリアルがレアアース供給網のどの工程に張ったのかだ。同社が狙っているのは、鉱山権益そのものというより、回収、分離、精製、再資源化という中流工程の厚みを増すことだと読める。

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レアアース供給網の弱点は採掘だけではない

レアアースは17元素の総称で、ネオジムやプラセオジム、ジスプロシウム、テルビウムなどは、EVモーターや風力発電設備、防衛装備に使う高性能磁石の材料として重要度が高い。

この分野で繰り返し話題になるのは「どこで採れるか」だが、実際のボトルネックは採掘だけではない。鉱石やスクラップから目的元素を分離・精製し、最終的に磁石材として供給できる形まで持っていく中流工程に能力が偏っている。米地質調査所(USGS)の2026年版によると、2025年の世界のレアアース鉱山生産は中国が27万トン、米国が5万1000トンだった。一方で、米国のレアアース化合物・金属輸入の71%は2021年から2024年平均で中国由来だった。

つまり、採掘量だけを見ても供給網の実力は測れない。鉱山を持っていても、分離・精製や磁石化の能力が足りなければ、産業用の安定供給にはつながりにくい。

その偏りは政策面にも表れている。USGSは2025年4月に中国が一部レアアースの輸出規制を強化し、10月に対象を広げた後、11月に10月分の規制を1年間停止したと整理している。供給不安は埋蔵量の問題というより、中流工程が特定地域に集中していることの影響を強く受ける。

ReElementは何を担う企業なのか

三菱マテリアルが出資するReElement Technologiesは、米インディアナ州を拠点とする重要鉱物の分離・精製プレーヤーだ。中核に据えるのはクロマトグラフィーを用いた分離技術で、会社説明では、磁石スクラップ、電子機器、電池材料、鉱石由来の中間品など複数の原料に対応できるとしている。

同社の技術説明では、従来型の大規模な溶媒抽出設備より小さな設置面積で運用しやすく、エネルギーや化学薬品の使用を抑えられるとしている。処理水25%減、処理エネルギー75%減、CO2排出70%減、排水ゼロといった数字も示しているが、ここはあくまで会社側説明であり、第三者検証済みの性能として断定しないほうが安全だ。

商業化の進捗も、華々しい量産完成よりは拡張の途中段階として見るべきだろう。ReElementはノーブルズビルに商業検証施設を持ち、マリオンでは大型拠点の整備を進めている。2026年1月時点の関連公表では、マリオンを軸に1万トン超規模の精製能力を目指す方針が示されているが、量産能力の確定値として読み切れる段階ではない。

資金面では、2025年11月に米Office of Strategic Capital(OSC)がVulcan ElementsとReElementに総額7億ドルの条件付き融資コミットメントを公表した。内訳はVulcan向け6億2000万ドル、ReElement向け8000万ドルで、国内のネオジム鉄ホウ素磁石供給網を強化する狙いがある。さらに2026年1月にはTransition Equity Partnersによる2億ドルの戦略エクイティ・ファシリティが発表された。政府資金と民間資金の両輪で、量産化に向けた準備を進めている構図だ。

三菱マテリアルの狙いは「採掘」ではなく中流機能の確保

今回の案件を読み解くうえで重要なのは、三菱マテリアルが鉱山権益ではなく、中流工程の担い手に資本参加した点だ。新鉱山の開発は時間も許認可も重く、環境負荷や地政学リスクも大きい。これに対して、スクラップや使用済み部材からレアアースを取り出して再資源化するモデルは、原料確保と精製能力がかみ合えば、比較的短い時間軸で供給網を厚くできる余地がある。

三菱マテリアルは2026年1月、米国三菱マテリアル社に資源循環事業部を新設し、重要鉱物の二次原料製錬事業の開発、サプライチェーン構築、協業やM&Aの推進を掲げていた。今回のReElement案件は、その方針を具体化した一手と位置づけやすい。

国内では、同社はすでにブラックマスからニッケル、コバルト、リチウムを回収・精製する実証で経済産業省の認定供給確保計画を取得している。今回のレアアース案件は、電池材リサイクルの延長というより、重要鉱物全体で資源循環の中流機能を厚くしていく流れの中に置くと分かりやすい。

もっとも、日本での共同事業はまだ構想段階だ。どの原料を回収対象にするのか、どこに設備を置くのか、回収後のオフテイク先をどう組むのかは見えていない。案件の意味は大きいが、すぐに国内量産へ直結する話として読むのは早い。

政策の追い風が民間投資を後押しする

この分野では、企業戦略と政策支援が強く結び付いている。USTRは2026年3月19日、「U.S.-Japan Action Plan on Critical Minerals」を公表し、サプライチェーンの脆弱性是正と中下流産業の競争力維持を打ち出した。重要鉱物をめぐる日米連携は、資源確保だけでなく、精製や加工、再資源化まで含む供給網全体の再設計へと広がっている。

ReElementへの支援も、その流れの中にある。米国側は採掘だけではなく、分離、精製、磁石化といった中流工程を国内回帰させることに重点を置いている。三菱マテリアルの出資も、そうした政策の追い風の中で、日米が循環型の重要鉱物サプライチェーンを組み直す試みの一部と見ることができる。

主戦場は「鉱山」から「中流工程」へ移っている

レアアースをめぐる競争は、単純な鉱山開発競争ではなくなっている。どこで掘るか以上に、誰が分離・精製し、誰が磁石材として安定供給できるかが問われる局面に入った。

その意味で、三菱マテリアルがReElementに出資した意義は、米新興企業への投資という一点ではなく、重要鉱物の供給網で最も詰まりやすい中流工程に、日本企業がどう関与し直すかを示したところにある。採掘よりも精製と再資源化に先回りして布石を打つ。この動きが実際に成果へつながるかは、ReElementの商業化の進み方と、日本側の事業設計がどこまで具体化するかにかかっている。

(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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