NTTドコモが2026年3月31日、3G通信サービス「FOMA」と「iモード」を終了する。4月1日以降、3G専用の機種は音声通話・メール・緊急通報を含めて使えなくなる。なお、見た目が3Gガラケーでなくても、VoLTE(4G回線を使った音声通話)に対応していない古い4G端末も影響を受ける場合があるので注意が必要だ。契約者数は約30万人に上り、ドコモは機種変更や契約切り替えを呼びかけている。
ただ、このニュースの本質は「ガラケーが終わる」という話だけではない。FOMAとiモードの終了は、端末の世代交代を超えた意味を持つ。1999年に始まったiモードを土台に積み上げられてきた日本の携帯インターネット文化——その前提で設計されてきた周辺サービスや生活機能の整理が、今一気に迫っている。
「通信の世代交代」ではなく「インフラの閉幕」
まず背景を整理しておく。3G(第3世代移動通信)とは、2001年にドコモがFOMAとして導入した通信規格だ。「世代」を意味する”Generation”の頭文字をとって3Gと呼ばれる。それ以前の2Gに比べて高速データ通信が可能になり、画像・動画の送受信やワンセグ(携帯向けテレビ放送)が使えるようになった。
重要なのは、FOMAはただの電話回線ではなかったという点だ。1999年2月にスタートしたiモードは、この回線上でメール・コンテンツ課金・位置情報・見守りサービス・法人向け閉域利用など、無数のサービスを束ねた生活インフラだった。2012年には3G契約数が国内人口とほぼ同じ1億2000万件超に達し、日本の「携帯1人1台」時代を作ったのがこの世代だ。
今回終わるのは電波の世代だけではなく、そのインフラの上に乗ってきたサービスの仕組みごと整理対象になる、ということになる。
「端末が止まる」だけでなく「つながりが切れる」
見落としやすいのが、iモード終了に伴う周辺サービスへの影響だ。
ドコモは公式に、FOMA終了に伴うdocomoコンテンツ決済への影響を案内している。FOMA回線を通じたコンテンツ決済は、終了とともに継続利用に影響が出るケースがある。
さらに注目したいのが「イマドコサーチ」——子どもや高齢者の居場所を家族がリアルタイムで確認できる見守りサービスだ。ドコモの公式案内によれば、見守る側のFOMA/iモード回線が対象になっても、見守られる側の回線が対象になっても、それぞれサービスに影響が出る。端末が止まるだけでなく、家族の見守り網そのものが切れるという事態が起きうる。
つまり3G終了は、「本人の携帯が使えなくなる」問題にとどまらない。家族とのつながり、コンテンツ決済、位置情報サービスまで、FOMA/iモードを前提にしてきた生活の仕組みの切り替えが、同時に迫ってくる。
自販機・監視カメラ・駐車場——裏側で動いてきた「見えない3G」
さらに規模が大きいのが、法人・IoT(モノのインターネット)分野への影響だ。IoTとは、機械や設備がネットワークに接続されて自動的に情報をやりとりする仕組みのことを指す。
3Gはこの分野でも長年使われてきた。自動販売機のキャッシュレス決済、コインパーキングの遠隔管理、エレベーターの遠隔監視カメラ、ガス・水道メーターの自動検針——利用者が意識しないところで、3G回線は社会インフラの一部を担ってきた。この産業向け回線は2025年12月時点で約293万件に上る。
スマートフォンへの乗り換えのように店頭でできる話ではなく、現場ごとの個別対応が必要になるケースが多い。設備を抱える企業は計画を立て、施工業者を手配し、全国に分散した機器を順次入れ替える大掛かりな作業が求められる。大手飲料メーカーや駐車場運営会社などは対応を進めてきたが、この「レガシーIoTの総入れ替え」は、端末移行とはまた別の重さを持つ課題だ。
「4Gガラホ」という選択肢——スマホ全面移行ではない現実
残る約30万の個人契約者の中心は高齢層とみられており、NHKの報道でも高齢者の機種変更支援が大きな論点として扱われている。ただし、ここには一般的なイメージとのずれがある。NTTドコモ モバイル社会研究所の調査(2024年)では、70代のスマートフォン所有率はすでに8割を超えている。高齢者がスマホを全く持っていないわけではない。
問題は「持っているか」ではなく「不安なく切り替えられるか」「操作スキルが十分か」にある。同研究所の別調査(2025年)でも、70代後半以上ではアプリの設定や端末操作が難しいと感じる層が多いことが示されている。
そのニーズに応える動きも出ている。FCNTは2025年、6年ぶりの最新モデル「F-41F」を投入した。FCNTは富士通の携帯電話事業を前身とする国内メーカーで、同機はプッシュボタン・折りたたみ型の操作感はそのままに、通信は4G/VoLTEに対応した「ガラホ」だ。ワンタッチ発信機能や迷惑電話録音など、シニア向けの安心機能も備える。
スマートフォン全面移行だけが選択肢ではなく、4G対応の折りたたみ端末も残っている。3G終了後の移行において、この「4Gガラホ」という選択肢は重要な意味を持つ。
KDDI・ソフトバンクに続き、ドコモで完結する「3Gの消滅」
KDDIは2022年3月末、ソフトバンクは2024年4月に3Gサービスを終了していた。大手3社で最後まで3Gを維持してきたドコモの終了により、日本に3Gを提供する携帯会社はゼロになる。2001年に世界に先駆けて始まった日本の3Gサービスが、四半世紀を経て完全に幕を閉じる。
最後の30万人の先に見えるのは、高齢者の端末問題だけでなく、iモード時代の制度と社会インフラの後始末だ。「次の世代に移行する」という話の裏に、一世代分の仕組みを解体する作業が静かに進んでいる。
(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

