地価5年連続上昇——「バブルではない」実需主導の上昇と、広がる住まいの二極化

2026年1月1日時点の「地価公示」が国土交通省から発表された。全用途の全国平均は前年比プラス2.8%と、5年連続の上昇になった。

「地価が上がった」というニュースを聞いて、「また不動産バブル?」と感じた人もいるかもしれない。しかし専門家の分析も交えてデータを読み解くと、今回の上昇は投機的な熱狂によるものとは性格が異なる。その背景と、私たちの住まいへの影響を整理したい。


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今年の地価、数字のポイント

まず今回の地価公示の数字を整理しよう。

住宅地は全国平均でプラス2.1%、商業地はプラス4.3%と、いずれも5年連続の上昇だ。全国を引っ張っているのは東京圏と大阪圏で、東京圏の商業地はプラス9.3%、住宅地もプラス4.5%とプラス幅が拡大した。大阪圏の商業地もプラス7.3%と強い伸びだ。

一方、名古屋圏はプラス幅がやや縮小し、北海道の札幌・宮城の仙台・広島・福岡の「地方四市」も上昇は続くものの伸び率が鈍化している。下落地点は19%にとどまった。


なぜ東京圏・大阪圏が全体をけん引しているのか

東京圏の地価上昇率が拡大している背景には、東京への人口流入の継続がある。都心や都心アクセスの良い地域に需要が集中し、その結果として周辺エリアにも需要が波及し、東京圏全体の地価を底上げしている構図だ。都心一点が突出しているというより、都心需要が周辺部にも波及している点が特徴だ。

大阪圏でも、旺盛なマンション需要に加え、観光地の地価上昇が目立つ。インバウンドの回復が商業地・宿泊施設用地の需要を押し上げている。

商業地で最も上昇率が高かったのは「北海道千歳市千代田町」でプラス44.1%、2位も同じ千歳市内でプラス38.5%だ。先端半導体の国産化を目指す「Rapidus」の工場建設が進む地域で、工場用地だけでなく関連企業のオフィス、従業員の住宅、ホテル、飲食店など幅広い需要が連鎖的に生まれている。工業地でも、熊本県大津町でプラス26.0%を記録しており、隣接する菊陽町への台湾半導体大手TSMCの進出が影響している。

住宅地の上昇率上位には、「長野県白馬村北城」(プラス33.0%)、「北海道富良野市北の峰町」(プラス30.0%)など、インバウンドや国内外の観光・別荘需要が強いリゾートエリアが並んだ。


名古屋や地方四市の伸び鈍化は「弱さ」を意味しない

名古屋圏の住宅地はプラス1.9%とプラス幅が0.4ポイント縮小、地方四市の住宅地もプラス3.5%と伸びが鈍化した。これを「地方の地価が弱くなっている」と読むのは必ずしも正確ではない。

不動産の調査研究機関「日本不動産研究所」の吉野薫シニア不動産エコノミストによれば、先行して足早な地価上昇を経験した地域が、需給バランスに応じた適正水準に落ち着いてきている面が大きい。これは下落局面を示すシグナルではなく、「急騰ではなく持続可能な形での上昇」への移行として解釈すべきという見方だ。

出典:NHK記事


「バブル」かどうか——専門家の見立て

地価上昇が続くと、「またバブルでは?」という声が出やすい。2000年代後半に一部で見られたいわゆる「ミニバブル」は、期待感が先行して都心部を中心に地価が押し上がる色合いが強かった。

日本不動産研究所の吉野氏の分析では、今回はその当時と地価の上昇の分布がかなり異なると指摘する。現在は、都心の一等地だけが上がっているのではなく、郊外でも子育て環境や住環境が良いエリアで上昇が見られるなど、地域ごとの需要・供給の実態がきめ細かく地価に反映されている。単に値上がり益を期待して購入するバブル的な動きではなく、職場への近さや生活の利便性を重視する「職住近接」ニーズが実際の地価に表れているとみるのが適切だという。

先行きについては、経済の基調が崩れなければ、都心だけでなく地方でも緩やかな上昇基調が続く可能性が高い。ただし、野放図に加速するというより「穏当に上昇が進んでいく」というのが専門家の見立てだ。


1億円超のマンション、それでも売れている理由

地価上昇を受けて、都内では1億円を超える新築マンションの販売が相次いでいる。それでも売れ行きは好調だという。

都内で開発・販売を手がける住宅メーカーによると、東京23区内の新築マンションは1億円超の価格帯が中心になっている。東急目黒線の不動前駅から徒歩3分の品川区の物件(7500万円台〜3億4000万円台)は、販売開始から1年余りで8割が成約済み。JR西荻窪駅から徒歩10分の杉並区の物件(5000万円台〜1億5000万円台)も、同様に8割以上が成約済みだという。

購入層の中心は30代から40代の共働き世帯で、都心の職場への近さを重視している。さらに、資産性を重視して将来の売却を前提に購入するケースも多いという。

もちろん、1億円超のマンションが全員に選択肢としてあるわけではない。これは高所得の共働き世帯や資産性を重視する購入者が引っ張っている話であり、市場全体の状況とは区別して理解する必要がある。


「新築が高すぎる」——中古リノベという選択肢

一方、新築に手が届かない層が選択肢として増やしているのが、中古マンションのリノベーションだ。

大阪市内に住む37歳の男性は、4歳から9歳の3人の娘を持ち、新居を探す中で大阪市内の新築戸建て・マンションはいずれも予算オーバーとなり断念。最終的に、梅田から5kmほどのエリアにある築50年の中古マンション(70平方メートル、最寄り駅まで徒歩3分)を購入し、内装や設備を全面リノベーションした。リノベ費用を含めても、同エリアの新築に比べて1500万円ほど安く抑えられたという。

この男性を仲介・施工した大阪の会社では、今年度の中古リノベの取り扱いが30件に上り、増加傾向にある。「新築のようにきれいな家が作れる一方で費用は抑えられる」ことが選ばれている理由だ。


賃貸市場にも波及——家賃も過去最高水準

住宅を購入しない人を直撃しているのが、賃貸物件の家賃上昇だ。

不動産情報サイト「アットホーム」の集計によれば、東京23区の2026年1月の平均家賃は、ファミリータイプで25万6544円と5カ月連続で過去最高を更新し、単身向けマンションは10万7658円と20カ月連続で過去最高を更新している。全国に展開する不動産仲介会社「アパマンショップ」でも、都内の単身向け物件は3000円〜1万円程度、家賃が上昇しているという。

家賃上昇の背景は、土地価格、建築費、修繕費といったコストの上昇だ。賃料が上がりにくかった時代が長く続いた後、オーナー側も段階的に価格改定を進めている段階にある。


「定期借家契約」が増えている——何に気をつけるべきか

家賃上昇と並んで注目されるのが、「定期借家契約」の物件が増えているという動きだ。

一般的な「普通借家契約」では、契約期間が満了しても入居者が希望すれば同じ条件で更新できる。貸主が家賃を変更するには、原則として借主との合意が必要だ。

一方「定期借家契約」は、契約期間が終了するとその契約は終了し、引き続き住む場合は新たに契約を結び直す必要がある。その際、貸主は家賃を改定できる。家賃上昇局面では、貸主側にとって賃料改定を行いやすい仕組みといえる。

アットホームによれば、東京23区の賃貸マンションのうち定期借家契約の割合は、10年前の単身向け2.1%・ファミリー向け8.1%から、2026年1月時点では単身向け8.3%・ファミリー向け16.3%まで拡大している。

東京都消費生活総合センターには、家賃の値上げをめぐる相談が2025年4月〜2026年1月の10カ月間で841件に達し、前年同期(394件)の2倍以上に増加している。「管理会社が変わったことを理由に値上げを通知された」「値上げに応じなければ退去と言われた」などの相談が寄せられているという。

同センターは、家賃の値上げは貸主と借主双方の合意が必要であり、値上げ通知に対して「ただちに応じる必要はなく、これまで通りの家賃を支払えば住み続けられる」と案内している。値上げ通知を受けた場合は、まず冷静に相談窓口へ問い合わせることが勧められる。


まとめ——「全国で上昇」の中に広がる格差

今回の地価公示が映し出しているのは、「全国的に地価が上がっている」という事実と、その裏側にある「どこが上がり、誰が買えて、誰が買えないか」という格差の広がりだ。

東京圏・大阪圏の都心部や半導体投資が集まる地域、インバウンドに人気の観光地では地価の上昇が続き、1億円超のマンションが売れる市場が形成されている。一方で、そこに参入できない層は中古リノベという選択肢を探し、賃貸に留まれば家賃上昇と定期借家契約の拡大に対応を迫られている。

専門家の見立てでは、今後は都市圏・地方圏を問わず、ライフスタイルや利便性に合う地域と物件に需要が集まる一方、そうでない地域との格差がより鮮明になっていく見通しだ。

(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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