ホルムズ海峡防衛で各国に温度差——英国は協議、ドイツ拒否、日本は慎重

「感謝するだけでなく、支援すべきだ」——トランプ大統領は3月16日、日本や中国、欧州諸国を名指しし、ホルムズ海峡の安全確保に協力するよう強く求めた。だが各国の反応は一様ではなく、英国は協議に前向きな姿勢を示す一方、ドイツは参加を明確に拒否し、日本も現時点では護衛派遣の計画がないと表明した。

焦点は、海峡の重要性そのものではなく、誰がその安全保障コストを負担するのかに移りつつある。ホルムズ海峡をめぐる問いは、「どの国が艦船を出すか」という以上に、アメリカ主導の軍事行動に同盟国がどこまで付き合うのかという、より大きな問いを突きつけている。


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まず「ホルムズ海峡」の重要性を確認する

ホルムズ海峡は、ペルシャ湾とオマーン湾を結ぶ幅約50kmの海峡で、世界の原油・LNGの約2割が通過するとされる海上輸送の要衝だ。ここが不安定になると、原油価格の高騰、海上保険料の急上昇、輸送コストの増大が連鎖する。

現在、イラン・イスラエル・アメリカの軍事衝突を背景に、この海峡での通常の商業航行は大きく損なわれている。トランプ大統領は「ホルムズ海峡を経由するアメリカの原油輸入はわずか1%未満だが、日本は95%、中国は90%、欧州諸国も相当程度を依存している」と主張する。この論理で、「依存する国こそが安全確保を手伝うべきだ」と圧力をかけているわけだ。


各国の対応——4つのパターン

イギリス:「実現可能な計画を協議中」

欧州主要国の中では比較的前向きなのがイギリスだ。スターマー首相は「航行の自由をできるだけ早く回復し、経済的影響を和らげるための実現可能な共同計画を同盟国と取りまとめている」と表明した。機雷探知システムの配備や無人機対策についても協議しているという。

ただし、首相は「より広範な戦争に関わることはない」とも明言しており、軍艦を対イラン戦闘に投入する意向は示していない。英国の姿勢は「軍事的な実務支援は検討する、しかし戦争への巻き込まれは拒否」という中間的なものだ。

ドイツ・EU:「この戦争には参加しない」

ドイツのメルツ首相はより明確だ。「われわれはこの戦争に参加しない。戦争が続くかぎり、ホルムズ海峡の航行の自由を軍事力で確保する作戦には参加しない」と述べ、艦船派遣を拒否する立場を強調した。ドイツは現時点で「成功の見通しがある計画を把握していない」とも語っており、軍事参加の法的根拠(国連・EU・NATOの枠組み)がない中での関与に否定的だ。

EUもほぼ同じ方向にある。EUは現在、「Aspides(アスピデス)」と呼ばれる任務として紅海の商船護衛を行っているが、これをホルムズ海峡まで拡張することについて、EU外相にあたるカラス上級代表は「加盟国に当面変更しようという意向はなかった。これはヨーロッパの戦争ではない」と述べ、否定的な考えを示した。

スペインも不参加の立場を明確にしており、EU内でも国によって温度差はあるものの、現時点では軍事参加に消極的な国が多数だ。

日本:「法的制約」が壁に

日本はエネルギー面での当事者性が高い国の一つだが、高市首相は「現時点でホルムズ海峡への護衛派遣は計画していない」と表明した。法的制約を踏まえつつ、独自に検討する姿勢を示している。

自衛隊の海外派遣には、憲法上の制約に加え、安全保障関連法に基づく国会承認など複数のハードルがある。過去に中東周辺への海上自衛隊派遣の前例はあるが(情報収集活動や海賊対処任務など)、いずれも比較的限定的な性格のものだった。

今回のような軍事衝突が続く中での護衛任務は、それとは性格が異なる。経済的には「行きたい側」だが、制度・法律・世論の面では「行きにくい側」という板挟みの状況だ。

韓国・中国:慎重・不明確

韓国も慎重姿勢と伝えられる。国会承認が必要になる可能性も報じられており、即応の状況ではないとみられる。中国外務省は、艦船派遣について明言していない。


なぜ各国は簡単に「出す」と言えないのか

艦船派遣への消極姿勢には、共通する理由が3つある。

①法的根拠の問題。 ドイツが繰り返し強調したように、国連安保理決議やNATOの集団的対応といった明確な枠組みなしに軍艦を出すことは、各国の国内法や憲法上の制約と衝突しやすい。

②武力衝突に巻き込まれるリスク。 護衛や掃海作戦は一見、限定的に見える。しかし、もし自国の艦船が攻撃を受ければ、武力衝突に巻き込まれるリスクが一気に高まる。「参加した後に何が起きるか」を各国が慎重に見極めている。

③今回の戦争に対する政治的距離感。 欧州の主要国の多くは、アメリカとイスラエルによる対イラン軍事作戦そのものには距離を置いている。その作戦を支援する形での艦船派遣は、政治的に支持しにくい。


トランプはなぜ不満を示すのか

トランプ氏の発言は感情的に見えて、実は明確な論理を持っている。アメリカが各国に軍を駐留させて安全保障を提供している一方で、いざアメリカが求めると各国は「われわれは関与しなくてもいいでしょうか」と言ってくる——こうした「安保のただ乗り」への不満は、トランプ外交の一貫したテーマだ。

ただし、トランプ氏自身も「彼らが積極的でないのに驚かされた」と述べる一方で、「アメリカは誰も必要としない」とも語っている。これは、支援を真剣に必要としているのか、それとも各国の出方を試しているのか、受け取り方が難しい部分だ。


今後の焦点

短期的な注目点は2つだ。

①英国を中心とした「実現可能な共同計画」の中身。 英国が示す「戦闘ではない形での支援」が具体化するかどうか。機雷対策や無人機防衛といった非戦闘的な協力であれば、参加できる国が増える可能性がある。

②日本を含めた各国の法的・政治的判断がどう進むか。 事態が長期化すれば、各国政府が「何もしない」選択肢を取り続けることも難しくなる。その場合、どのような形の「関与」なら可能なのかが問われてくる。

「航行の自由は守りたいが、戦争には参加したくない」——この矛盾を各国がどう解決しようとするのかが、今後の国際政治の大きな焦点になる。


(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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