世界の石油の約20%が通過すると言われる「ホルムズ海峡」が、いまや事実上の封鎖状態にある。アメリカとイスラエルによる対イラン軍事作戦が引き金となったこの危機に対し、トランプ大統領は中国やNATOに船舶護衛への参加を強く求め、外交的な圧力を強めている。
世界の石油の咽喉部が閉じられた
ホルムズ海峡とは、ペルシャ湾とアラビア海を結ぶ幅約50キロほどの狭い海峡だ。この細い水道を通じて、中東産の原油が日本・中国・韓国・欧州などへ日々輸送されている。「世界の石油動脈」とも呼ばれるゆえんだ。
アメリカとイスラエルがイランへの軍事作戦を開始したことで、イランはこの海峡を事実上封鎖。現在も双方による攻撃が続いており、3月16日にはUAE(アラブ首長国連邦)のドバイ国際空港近くの燃料タンクが無人機攻撃を受けたほか、イスラエル軍はテヘランへの大規模攻撃を発表している。
トランプ、7か国に「援軍」を要請
トランプ大統領は3月15日、記者団に「ホルムズ海峡の安全確保のためにおよそ7か国に連絡を取った」と明かし、「いくつか前向きな反応があった。一方、関与を控えたいという意向を示したところもあった」と述べた。
具体的な国名は挙げなかったが、トランプ氏は前日のSNS投稿で、日本・中国・韓国・フランス・イギリスを名指しして艦船を派遣することへの期待を表明していた。
アメリカの有力紙ウォール・ストリート・ジャーナルは15日、当局者の話として「今週中にも複数国が護衛連合の結成に合意したと発表する見通し」と報じている。ただしこれはあくまで「見通し」の段階であり、正式発表には至っていない。
中国への二重の圧力——石油依存と訪問延期カード
特に注目されるのが、中国への働きかけだ。トランプ氏はイギリスのフィナンシャル・タイムズのインタビューで「中国も支援すべきだと思う。中国は石油の90%をこの海峡から得ているからだ」と述べた(この数値はトランプ氏が用いた表現であり、統計的な定義については留保が必要だが、中国が中東産原油に高い依存度を持つこと自体は広く認められている)。
さらにトランプ氏は、今月末に予定している中国訪問を延期する可能性を示唆し、「決断を早めるよう」中国に圧力をかけている。経済・外交両面での関係を重視する中国にとって、訪問延期カードは無視しにくいシグナルだ。
NATOの将来を揺さぶる警告
NATOに対しても、トランプ氏は強硬な姿勢を見せた。「もし反応がない、あるいは否定的な反応であれば、NATOの将来にとって非常に悪いことになる」と述べており、NATO全体に対する重大な警告ともとれる言葉で同盟を揺さぶっている。
イギリスについては、3月15日夜にスターマー首相とトランプ氏が電話会談を行い、ホルムズ海峡での自由な航行再開の重要性について協議したことが英政府から発表された。
停戦交渉は「まだ準備できていない」
一方でトランプ氏は、イランとの停戦協議については現段階で否定的な見方を示している。「彼らはどうしても交渉したいと必死になっているが、まだ準備ができていない」と語り、「イランの指導部の大部分が殺害されており、一体誰と交渉するのかすら分からない」とも述べた。現時点では軍事的圧力を継続する姿勢が読み取れる。
中国の複雑なジレンマ
中国は世界最大の原油輸入国であり、イランを含む中東地域からの原油輸入に高い依存度がある。実際、中国は今月9日、2022年3月以来最大となる小売燃料価格の上限引き上げに踏み切っており、ホルムズ海峡封鎖による供給不安が国内にも影響し始めていることがうかがえる。
中国は軍事行動の即時停止を求め、政権転換にも否定的な姿勢を示している。王毅外相はイランやイスラエルなど中東各国の外相と電話会談を重ね、中東担当特使をサウジアラビアなどに派遣して緊張緩和を模索している。
しかし注目すべきは、アメリカへの批判が比較的抑制されている点だ。王毅氏は「内政不干渉を堅持すべきで、政権転換を図ることは支持を得られない」と述べるにとどまり、アメリカを名指しして批判することはなかった。トランプ訪中を月末に控え、米中関係の安定を優先する配慮が働いている可能性がある。
日本はどう動くか
日本については、木原官房長官が3月16日の会見で「アメリカ側からわが国に対して具体的な派遣要請があるわけではないが、関係国とよく意思疎通しながら必要な対応を検討していく」と述べるにとどめた。自衛隊の派遣については「何ら決まっていない」としている。
日本も中東産原油への依存度が高く、ホルムズ海峡の封鎖は日本経済にも直接影響する。アメリカからの要請がいつ正式化されるか、そして日本がどう応じるかは引き続き注目される。
Summary
ホルムズ海峡の封鎖という前例のない事態を前に、トランプ政権は同盟国・友好国への圧力を強め、多国間護衛連合の組成を急いでいる。中国は経済的な損害を被りながらも米中関係への配慮から対米批判を抑えており、独自の外交路線で動いている。停戦交渉はまだ先が見えず、事態はなお流動的だ。
(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

