トランプ氏が日本に艦船派遣期待 ホルムズ海峡で問われる「負担分担」と日本の対応

「影響を受けている中国、フランス、日本、韓国、イギリス、その他の国々がこの海域に艦船を派遣することを望む」──。

3月14日、トランプ大統領はSNSにこう投稿した。ホルムズ海峡の安全確保は米国だけが担う問題ではなく、この海峡を通じて原油を輸入している国々も行動すべきだと宣言した形だ。

翌15日朝、政府・外務省・防衛省の関係者がそれぞれNHKの取材に応じ、「慎重に検討する」「自己判断が基本だ」「まだ情報が足りない」と口々に述べた。政府は対応を急がず、慎重に見極める構えだ。


table of contents

なぜ今、ホルムズ海峡なのか

ホルムズ海峡とは、ペルシャ湾とアラビア海を結ぶ狭い海峡だ。サウジアラビア、UAE、イラク、カタール、イランなど湾岸諸国の石油・天然ガスは、ほぼこの海峡を通って世界へ運ばれる。IEA(国際エネルギー機関)によれば、2025年には1日あたり約1,500万バレル、世界の原油貿易の約34%がここを通過し、その多くがアジア向けだった。

この航路が今、危機にある。

3月13日、米軍はイラン最大の原油積み出し拠点であるカーグ島の軍事施設を攻撃した。ロイターによると、カーグ島はイランの原油輸出の約9割を処理してきた要衝だ。米中央軍は「90を超える軍事標的を精密攻撃した。石油施設への被害は出ていない」と説明しているが、この地域での緊張は高まり続けている。

翌14日には、UAEのフジャイラ港が無人機攻撃を受けたと伝えられた。フジャイラはホルムズ海峡の入り口付近に位置する原油輸出の拠点だ。さらにイランは「エネルギー関連施設が攻撃された場合、中東にある米国関連のエネルギー・経済施設を報復攻撃する」と警告し、UAE国内への住民退避まで呼びかけた。

紛争は一国間の問題を超えて、世界のエネルギー供給インフラそのものを戦場に引き込みつつある。


「チームとして取り組め」というトランプの論理

トランプ大統領がなぜ今、各国に艦船派遣を求めたのか。その論理は一定の合理性を持つ。

「これはもともとチームとして取り組むべきことだ」──この投稿が示しているのは、米国が単独でホルムズを守り続けることへの不満だ。外務省の外交青書によると、日本は原油輸入の約9割を中東に依存している。その原油の多くはホルムズ海峡を経由して日本へ届く。つまり、日本は米国が守っている航路に乗っている「受益者」という見方だ。

「受益者が応分の負担をすべき」という論理は、トランプ政権がNATOに対しても一貫して主張してきた考え方だ。今回のホルムズ要求も、その延長線上にある。

実際、トランプ大統領はNBCのインタビューで「イランは合意したがっているが、まだ十分に条件が整っていない。私は合意したくない」とも述べており、軍事的圧力を続ける意思を明確にしている。この局面で「同盟国よ、一緒に来い」という要求は、軍事・外交・エネルギー安保が三位一体になった圧力だといえる。


なぜ日本はすぐに応じられないのか

日本政府の慎重姿勢には、口先だけではない実質的な理由がある。

まず法的な問題がある。自衛隊が海外の海域で活動するには、その根拠となる法律が必要だ。現在、自衛隊は中東の海域でいわゆる「独自の情報収集活動」を行っているが、これは多国籍の有志連合への参加とは別の枠組みだ。ホルムズ海峡での艦船護衛に参加するとなれば、任務の性格によっては追加の法的整理が必要になる可能性がある。

次に、国際法上の評価の問題がある。今回の米・イスラエルによる軍事作戦について、日本政府はその位置づけを明確にしていない。どの任務なのか、誰を守るのか、武器使用基準はどうなるのかといった論点を整理しなければならない。

防衛省関係者は「アメリカなどの攻撃を国際法上どう評価するかなど、政府として難しい判断を迫られる可能性がある」と明かした。これは官僚的な言い回しだが、核心をついている。


3月18日の首脳会談が試金石に

高市総理大臣は3月18日から4日間の日程で渡米し、トランプ大統領との首脳会談に臨む予定だ。

政府関係者は「アメリカは原油の価格高騰対策に必死であり、日米首脳会談で直接、対応を求められる可能性がある。日本は法律の範囲内でしか対応できないので、慎重に検討する必要がある」と述べた。外務省関係者は「日本の対応は日本が決めることだ。トランプ大統領から言われたからといってすぐに艦船を派遣するわけではない」と強調した。

首脳会談はすでに、関税問題や経済安全保障など複数の難題を抱えている。そこにホルムズ問題が加わった形だ。日本側にとっては、応じれば国内外の反応を管理する難しさがあり、応じなければ日米関係への影響が懸念される。

イランのアラグチ外相は皮肉交じりに「アメリカは中国にまで助けを求めている」と批判し、湾岸諸国に対しては「米軍を追い出せ」と呼びかけた。この発言が示すように、ホルムズ情勢はすでに二国間の問題を超えており、どの国が何のために動くのかという問いが、地域全体の方程式を動かす局面に入っている。


この問題が家計にもつながる理由

「艦船派遣」「ホルムズ海峡」と聞くと、安全保障の専門的な話に聞こえる。しかし、この問題は家計とも直結している。

日本は石油・ガスのほぼすべてを輸入に頼る。その多くが中東からホルムズ海峡を通じて届く。海峡の安全が脅かされれば輸送コストが上がり、原油価格の上昇が電気代・ガソリン代・食品価格へと波及する流れは、すでに始まっている。

3月18日の日米首脳会談でこのテーマがどう扱われるかは、エネルギー価格の行方とも無縁ではない。日本政府がどう応答するかを、単なる外交ニュースとして流すのではなく、生活コストと結びついた問題として注視する必要がある。


(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

Please share it if you like!

Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

table of contents