ローム巡り再編加速 東芝と事業統合協議、デンソーは資本提案

日本のパワー半導体業界で、大きな再編の動きが重なって表面化した。半導体大手のロームと東芝が、パワー半導体事業の統合に向けた交渉に入ったことが3月13日に報じられた。さらに同じロームに対して、トヨタグループの大手自動車部品メーカー、デンソーが株式取得を含む資本提案をしているとも伝わる。2つの動きは性格が異なるが、どちらもロームを軸に「日本のパワー半導体供給網をどう組み直すか」という問いに収束していく。


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パワー半導体とは何か

パワー半導体とは、電気の流れを制御・変換するための半導体部品だ。スマートフォンに使われる演算用の半導体とは異なり、電気自動車(EV)のモーターを動かす、工場の機械を制御する、家電製品の電力を管理するといった「電力そのものを扱う」場面で使われる。

EVの普及やデータセンターの急拡大にともない、世界的に需要が拡大している。一方で、製造には高度な技術と設備が必要で、現在はドイツのインフィニオン、米国のオン・セミコンダクターなど欧米の主要メーカーが世界市場で存在感を持つ。日本企業もロームや三菱電機、東芝などが参戦しているが、国際競争は激しい状況が続いてきた。


ロームと東芝の「事業統合」交渉

ロームと東芝が交渉しているのは、パワー半導体の事業そのものの統合だ。関係者によると、両社が出資する新会社に事業を移すなど複数の案が検討されているという。

ロームは3月13日付の開示で、この報道について「自社発表ではない」としたうえで、2024年7月から東芝・JIPとの間で資本提携も視野に入れた半導体事業の提携強化を協議しており、パワー半導体事業の統合も選択肢に含めて検討を続けていると説明した。すでに互いの強みを生かして生産を分担する協業も発表しており、今回の交渉はその延長線上にある動きだ。

ロームはこの報道について「本件を含むさまざまな選択肢について協議を継続している」とコメントしており、統合の実現・時期・形態は現時点で不明だ。


東芝はどういう立場か

東芝については、現在の状況を知っておく必要がある。かつて日本を代表する総合電機メーカーだった東芝は、会計不祥事や事業の混乱が続いた末、2023年12月20日に株式市場から上場廃止となり、国内投資ファンドのJIP(日本産業パートナーズ)が中心となった非上場企業として再スタートを切っている。

JIP傘下で東芝は事業の再建と成長を目指しているが、パワー半導体分野では単独で海外勢と戦い続けるよりも、外部との連携を通じて競争力を確保しようとしているとみられる。ロームとの統合話は、そうした東芝の再編戦略とも重なる。


デンソーからの「資本提案」——東芝統合交渉との違い

ロームに対してはもう一つ、別の動きもある。トヨタグループの中核的な自動車部品メーカーであるデンソーが、ローム株の取得を含む資本関係の強化に向けた提案をしていることが明らかになっている。デンソーは3月9日付のコメントで、報道を「自社発表ではない」としつつも、「ローム株式の取得を含むさまざまな戦略的選択肢を協議している」と表明した。

ここで整理が必要なのは、東芝との話とデンソーの提案が性格の異なる2つの動きであるという点だ。

  • 東芝との統合交渉:パワー半導体という特定の事業領域を切り出し、両社で共同運営・統合しようとする「事業再編」の話
  • デンソーの資本提案:ロームの株式を取得し、経営への関与を深めようとする「資本再編」の話

前者は事業の組み合わせ、後者はロームそのものの所有権・経営権に関わる。読者には混在しやすいが、論点は別だ。

これらが同時進行していることは、ロームが複数の戦略的選択肢を並行して検討していることを示す。どちらの話が優先されるのか、あるいは両立しうるのかは、現時点では不明だ。


なぜ今、再編が加速しているのか

今回の動きは突然の急展開ではない。ロームは東芝・JIPとの提携強化協議を2024年7月から進める一方、デンソーとも2024年9月から戦略提携の検討を開始し、2025年5月には連携対象をアナログICなどへ広げる基本合意も結んでいた。今回の報道は、この積み上がってきた複数の協議が、より具体的な再編の形へと踏み込む局面を示すものといえる。

背景にあるのは、パワー半導体を巡る国際競争の激化だ。EV化の加速とAI関連のデータセンター投資の拡大が重なり、世界のパワー半導体需要は今後も増え続けると見込まれている。その市場において競争力を維持・強化するには、日本勢が規模と技術力を結集することが求められているという認識が業界内に広がっている。


今後の注目点

現時点でロームは「さまざまな選択肢について協議を継続している」としか明らかにしておらず、東芝との統合の実現可否も、デンソー提案の行方も、いずれも未確定だ。

ロームがどの道を選ぶかは、日本のパワー半導体サプライチェーンの形に直結する。

  • 東芝との事業統合を進めるのか
  • デンソーとの資本関係を強めるのか
  • その両方を並行させる形に落ち着くのか

今後の交渉がどう進むかによって、日本の半導体産業の地図が変わる可能性がある。


(本稿は各種公開情報をもとに作成しました。一部数値は記事掲載時点の情報です)

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Person who wrote this article

CFP®/Level 1 Financial Planning Technician
Certified by the Japan Securities Analysts Association
・Primary Private Banker
・Asset Formation Consultant
Certified by the Financial and Financial Situation Study Group
・NISA Trading Advisor

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